2020年12月30日水曜日

「紀平梨花」4回転サルコウと裏ステップシークエンス ~2020全日本選手権女子フリー~

紀平梨花選手を応援し始めて、決めたことが1つあった。

ジュニア時代の梨花ちゃんは、成績が安定しない選手だった。3アクセルを決めてぶっちぎりで優勝したかと思えば、1本のジャンプのミスからグダグダになり、国内大会の予選すら通らない時もあった。シニアに進んでからは、少しずつ安定感が出てきたが、ショートプログラムでコケて、フリーで逆転なんていう試合が続いた。

3アクセルからの三連続ジャンプなんて史上初の技を成功させた試合で、規定違反によってジャンプ1本をノーカウントにしちゃったり、3アクセル成功の後、問題なく跳べるはずの3ルッツの回転が抜けてしまったりと、ツッコミどころ満載な演技も多かった。試合外でも、ブレードの位置をイジり過ぎて調整できなくしちゃったこともあった。

それらは、誰からも尊敬される日本のエースと呼ぶには、まだまだなことを表していると思えた。だから僕は、彼女を敢えて「梨花ちゃん」と呼ぶことにした。心技体名実ともに日本のエースになった時に、改めて「紀平梨花選手」と呼ぼうと決めたのだ。

そして、ついに、その日が来た。全日本選手権連覇、さらに日本女子として17年ぶりの4回転ジャンプ成功だ。

フリー演技でのジャンプ構成は、次の通りである。

  ①4S ②3A ③3F+1Eu+3S ④3Lo ⑤2A+3T ⑥3F+3T ⑦2A

冒頭の4サルコウは凄かった。あんなに安定感のあるジャンプをしてくるとは思わなかった。あれだったら、後ろに2トゥループを付けることもできるだろう。4サルコウを2本組み込んだプログラムも不可能では無いと云うことだ。

3アクセルは、まさかの回転不足になってしまったが、その後の3連続ジャンプが良かった。これも、実戦では初披露だ。練習動画で見てから、ずっと楽しみにしていたジャンプだ。これ、下手なジャンパーだと、真ん中のオイラーがヨタヨタになって、如何にも繋いでいるだけってなっちゃうんだけど、梨花ちゃんのは、流れのある連続ジャンプだったと思う。もっとGOEが付いても良いだろう。

気がかりなのは、3ルッツを回避して、2アクセルと差し替えたことだ。昨シーズンに足を痛めた梨花ちゃんは、ずっとルッツを封印してきた。今回は、ショートプログラムで3ルッツを問題なく跳んでいたので安心していたのだが、まだ、足首は悪いようだ。もう2年くらい痛いと云っているので、痛め癖になっていないか心配である。

①4S ②3A+2T ③3F+1Eu+3S ④3A ⑤3Lo ⑥3F+3T ⑦3Lz

多分、これが完成形のジャンプ構成じゃないかと思う。4サルコウ1本と3アクセル2本の演技だ。同じ日に開催されていたロシア選手権では、アンナ・シェルバコワ選手(アーニャ)が、4ルッツと4フリップを跳んで優勝したようだ。基礎点はあっちの方が上かも知れないが、十分に対抗できる構成だと思う。

アーニャと梨花ちゃんでは、合計得点で30点以上の差がついている。だからロシア選手には敵わない、みたいなコメントを見かけるが、これは正しい認識では無い。ロシアの国内大会は難しい技を決めるとボーナスポイントが付加されるというインフレルールがあるし、ジャッジは自分が贔屓する選手の演技構成点を爆盛りしてくる。この辺のことはロシアのファンはちゃんと認識していて、30点以上得点の低い梨花ちゃんを見下げるようなコメントは出てこない。

僕は、昨年、新横浜のリンクでアーニャを見て以来、彼女のファンにもなった。現在、ロシアでは有力選手の足の引っ張り合いが行われていて、代表選手になるだけで、もの凄いエネルギーを使うだろうけど、アーニャには是非とも代表権を勝ち取って欲しい。そして、北京オリンピックで、互いにノーミスで台乗りしてくれたら、こんな嬉しいことはない。

そんなことを考えながら、ネットニュースを見ていたら、とんでもないことが書かれていた。なんと、梨花ちゃんは演技の途中で左右を間違えていたと云うのだ。スッテプシークエンスでは、ジャッジに裏側を見せてしまったらしい。

はぁ?

どう云うことだ。梨花ちゃんの解説で演技をふりかえってみよう。

どうやら、3ループの後のキャメルスピンの時に、出る方向を間違えたらしい。スケートリンクは楕円形だからどっちが前でも良いんだけど、普通はジャッジが座っている方を向いて演技する。テレビカメラもそっち側にあるし・・・。で、気付いてからは、どうやって戻そうかと、そればっかり考えていたそうだ。

云われてみれば、「コレオシークエンス」はグラついていたし、5番目のジャンプ2A+3Tの次の「ステップシークエンス」もリズムに乗り切れていなかったように思う。ただ、この楽曲のピアノソロのアレンジって、リズムに乗りにくいんじゃないかってずっと思ってたんで、イマイチなのは楽曲のせいだと思っていた。で、6番目のジャンプの前で、ようやく戻れたらしい。

それから、演技が終わった後、いつも以上にニコニコしていて、コーチとも笑い合っていたのも気になっていた。4回転が成功したのが、よっぽど嬉しかったのかなんて思っていたんだけど、逆向きに演技しちゃったことを「も~、やだぁ」って感じで、笑っていたのが真相らしい。

しかし、こんなことってあるのだろうか。聞いたことが無い。っていうか、あっても普通は黙っているものだろう。テレビのインタビューとかで喋ったりしない。素晴らしいリカバリーですね、なんてフォローされてたけど、リカバリー力って、こんなことに使うべきものじゃないだろう。

2位になった坂本選手が、サバサバした性格で、ツッコミを入れてくれたのが救いだった。関西の子たちは、ボケ(天然だけど)に対してツッコミを入れるというのが、当たり前のようにできるようだ。これがロシアだったら、1位と2位の選手が同じ番組に和やかに出るなんて有り得ないし、コーチは演技構成点を巡って大騒ぎしているだろう。

それにしても、全日本チャンピオンの演技が、裏返しだったなんて・・・。これは羽生選手の0点スピンを上回るインパクトだ。梨花ちゃんは、やっぱり梨花ちゃんだった。つっこみどころ満載の梨花ちゃんは健在だったのだ。

紀平選手と呼べる日は、もう少し先のようである。

2020年12月27日日曜日

「羽生結弦」フィギュアスケート全日本選手権2020 ~圧巻のSPで無価値とされたCSSp~

 あれは、斬新なツイズルなのか、それとも、シットスピンの出来損ないか。絶対王者で稀代のスピナー「羽生弓弦」選手のスピンが0点、つまり「無価値」とされたのだから、炎上するのも当然であろう。

まずは、用語のおさらいから。

フィギュアスケートは、氷上で反時計回りにクルクル回転する競技である。空中で回転すればジャンプ。止まって回ればスピン。移動しながら回転するとツイズルとなる。

 問題になっている場面は、3アクセルを跳んだ後で、足替えのシットスピンに入る前、動画での3分5秒あたりのところである。このクルクルってやったのが、ツイズルなのか、スピンなのかが問題にされているわけだ。


その場でしゃがんでクルクル回るとは、なんと斬新なツイズルなんだろう・・・って、

これ、スピンだろっ?!

羽生選手は、この後、完璧なCSSp(チェンジフットシットスピン)を披露するのだが、同じスピンの2回目はノーカウントだし、1回目のツイズルみたいなスピンも認定されないから、結果0点となった次第である。

この大会では、羽生選手は、ぶっちぎりの首位だから、ここで6、7点無くなったとしても影響なんて全然無いのだけれど、完璧な演技にケチを付けられるのはファンとして耐え難いことのようだ。

ジャッジにイチャモンを付けるのは、スポーツ観戦の楽しみ方の1つではあるけど、連盟に直接抗議するなんて他のスポーツには無いことに思う。運営側も、(後ろめたいことが無いのならば)もっと毅然とした態度を取れば良いんだけど、ファンあってのフィギュアスケートってことなんだろう。

ちなみに、これはフリー演技のプロトコルである。ファンは、すでに2番ジャッジを特定しているはずだ。

それにしても、何で、あんな紛らわしい演技をしたんだろう。スピン1つだって、世界大会だと致命的なミスになりかねない。案外、スピンに入るタイミングをちょっと間違えただけなんてのが真相だったりして・・・まあ、国内大会でご祝儀採点をして、国際大会でコケるよりも、ずっと良いことに思う。

演技はホントに素晴らしかったと思う。翌日のフリーも圧巻だったけど、僕的には、このSPの方が断然インパクトがあった。出来映え点を稼ぐために、タケノコジャンプを連発する姑息な選手も多い中で、彼の凄さは採点基準を超越したところにあることを再認識した。

コロナ禍で、国際大会が次々と中止になり、コーチ不在の中で、10ヶ月ぶりの大会にバッチリ合わせてくるなんて凄すぎる。嫌いになりそうなくらい格好良かった。「僕の演技で世界を元気づける」なんて何様な発言も、彼なら許されよう。

羽生結弦選手は最高のフィギュアスケーターなのだ。

2020年12月12日土曜日

「牧瀬里穂」&「黒島結菜」伝説の冬CMを2本

 「閻魔堂沙羅の推理奇譚」ちゃんと見てますよ。第3話の「黒島結菜」さんは、前・後編の特別扱いでしたけど、最終話の「牧瀬里穂」さんも60分構成なんですね。ちなみに、牧瀬里穂さんは、今月で49才になられるそうです。黒島結菜さんは、23才ですから、ちょうど母娘役にぴったり。今回は、すれ違いでしたけど、共演とかあれば嬉しい限りです。


で、今回は、このお二人が出演した、伝説の冬CMについて投稿させていただきます。

まずは、牧瀬里穂さんです。先日「朝だ!生です旅サラダ」という旅番組に出演され、それに関連して、JR東海「X'mas Express」のCMがSNSで拡散されて(牧瀬里穂が)トレンド入りしたそうです。31年も前のCMが、いまだに話題になるというのも凄いことに思います。

放送は1989年(平成元年)、終電後の旧名古屋駅でロケを行ったとのことですから、歩いている人たちは全員エキストラということになります。云われてみれば、動きが不自然で、何となく分かります。今の名古屋駅は高島屋と一体化しちゃいましたけど、当時は如何にも「駅」って感じです。改札に駅員さんが立っているのが、平成元年ですよね。

この時の牧瀬里穂さんは17才。東京の大学に進学した彼氏と、地元に残っている高校生の彼女という設定でしょうか。こんな可愛い彼女を、故郷に待たせているなんて羨ましい限りです。で、先に見つけた里穂ちゃんが柱の陰に隠れるという可愛すぎる演出。この後の展開を視聴者に想像させる終わり方なんて素敵すぎです。それにしても山下達郎さんの名曲は、何年経っても色褪せませんね。

1989年と云うと、スマホどころか、携帯電話さえも無かった時代です。それでもあの頃の恋人は、ちゃんとつながっていたんですよね。

これは「X'mas Express」シリーズの2作目で、この後も、毎年毎年、たくさんの女優さんによって続編が制作されましたけど、設定年齢が最も低いこのバージョンが、僕は断トツで好きなんです。

昨年、このCMについて、「さくマガ」さんに「89 牧瀬里穂のJR東海クリスマスエクスプレスのCMが良すぎて書き殴ってしまった」という記事が掲載されました。当時の時刻表や駅構内図を使っての詳しい考察が話題になったのですが、今年も再掲載されているということで、僕も読ませていただきました。

その中で衝撃だったのは、このCMが「待ち合わせの場面では無い」という考察です。僕は、この記事を読むまで、何の疑いも無く、彼氏と待ち合わせをしている里穂ちゃんが、悪戯心で柱の陰に隠れているのだとばかり思っていたんです。バンダナ君(彼氏)は、待ち合わせで目立つようにバンダナを頭に巻き、改札口で里穂ちゃんを探しながら歩いているのだと。

しかし、違和感があったのも確かです。1つは、里穂ちゃんが名古屋駅に迎えに行った時刻です。このロケは終電後、つまり深夜に撮影されました。ですから、映り込んでいる時計や列車の出発時刻板は、CM用に設定されたものです。時計の時刻は午後10時前、女子高生がこんな時刻に駅へ迎えに行くなんて不自然です。まあ、ギリで親に外出を許してもらったとしても、その後、二人でデートなんかをしていたら、完全に青少年補導の対象になってしまいます。今晩帰省するけど、(遅いから)会うのは次の日にしよう。ってのが、あるべき約束に思います。

もう1つは、バンダナ君の歩き方です。多少周りを気にしてはいますが、待ち合わせをしていた彼女がいないにしては、飄々としていて、全然焦っていないんですよね。そのまま改札口から歩いて来ちゃってる。僕の彼女が牧瀬里穂ちゃんだったら、絶対、改札口で待ちます。一晩中でも待ちます。

一方で、里穂ちゃんは焦りまくっている。僕は、彼に早く会いたい一心で走っているのだと思っていたんですけど、ちゃんと待ち合わせをしているのならば、あんなに慌てなくっても良いはずです。バンダナ君を待たせたとしても、「ゴメン、待った?」「ううん、全然」とか云ってれば良いんですから。しかも、駅の構内でキョロキョロして、バンダナ君を探しているかのようなシーンもある。

やはり、待ち合わせでは無かったのでしょう。彼が今晩帰省することを(東京駅の固定電話とかで)知った里穂ちゃんは、サプライズで迎えに行くことを思い立った。新幹線が名古屋に到着するまで2時間弱。慌てて支度をして家を出たんだと思う。もしかしたら、プレゼントを未だ用意して無くって、急いで買ったのかもしれない。だからギリギリになった。

里穂ちゃんは焦っていました。この時代、新幹線に乗ってるバンダナ君とは、連絡のとりようが無い。もし遅れてしまったら、バンダナ君が先に改札口を出ていたら、さっさと行ってしまいます。約束していないんですからね。すれ違いになってしまう。だから、里穂ちゃんは何が何でも、新幹線の到着時刻には、改札口にいなければならなかったんです。でも、遅れてしまった。もしかしたら、もう改札口を通過しているのかもしれない。だから、構内を見回していたんです。で、改札口に降りてくるバンダナ君を見つけた。そして、サプライズ感が増すように、柱の陰に隠れた。これは、とっさに思いついたのかもしれませんし、初めから考えていたのかもしれません。

里穂ちゃんは、サプライズのために、もの凄いリスクを負っています。彼が8時発の新幹線に、乗っていないかもしれないんですから。あの笑顔はリスクを負っているからこそ醸し出されるもので、僕らはその笑顔に共感し、このCMは伝説になったんです。


次は、「黒島結菜」さんのNTT docomo 「想いをつなぐ篇」。

こちらのCMは、放送が2013年とありますから7年前、本格的にスマホが普及し始めた頃ですね。黒島結菜さんは高校2年生、16才の時の作品になります。

CM 曲は、SPICY CHOCOLATEの「ずっと feat. HAN-KUN & TEE」

最近の大人っぽくなった黒島結菜さんも、もちろん素敵ですけど、この頃の黒島さんも最強。十代の黒島さんの魅力は普通っぽさ。何だかその辺に居そうな可愛い子って感じが、彼女の良さに思います。

お相手役は「葉山奨之」さんで、丸山純奈さんと同じトライストーン所属の俳優さんです。映画「あしたになれば」でも黒島さんと共演していましたけど、まさか「きゃりーぱみゅぱみゅ」さんとお付き合いするようになるとは思いませんでした。

で、このCMのコンセプトは「つながる」だと思います。奨之君は、常に結菜ちゃんと連絡を取り合っています。電車に乗り遅れたシーンがありますけど、メイキング映像によると、乗り遅れて直ぐにラインしています。花火大会が終わっても、会場で待っていた結菜ちゃんは健気とも云えますけど、彼の現在位置が逐一報告されているんだから、待つしかありません。

スマホでつながり合っていれば、大切なデートの日にバイトを入れても大丈夫ということなんでしょうか・・・っていうか、こんな可愛い彼女がいたら、絶対バイト入れないと思います。結菜ちゃんと約束しておいて「間に合わないかも」じゃねぇだろう!急にシフト変わって断り切れなかったとか云いたいんでしょうけど、黒島結菜ちゃんが僕の彼女だったら、絶対バイトは入れません。

里穂ちゃんも、奨之君も走っていますけけど、その理由は全く違います。彼は義務を果たしているに過ぎません。だから、僕は、このCMの奨之君には好感できないんです。途中で、池に落ちた子猫を助けていたとか、道に迷ったお婆さんを自宅に送り届けたとか、納得できる理由があれば良かったんですけどね。結果として、16才の黒島結菜さんが可愛いだけのCMになってしまったように思います。


このNTT docomo のCMが放送されてからも、7年たちました。今は、全ての世代がスマホを持ち、ラインを利用するようになったし、待ち合わせで彷徨うことなんて無くなりました。僕らはつながることによって、無駄は無くなったし、安心を手に入れました。その一方で、サプライズを回避したがるようになったと思います。約束もせずに会いに行くことなんてないし、プレゼントだって、何にするか事前に相談することも多いと聞きました。

だからと云って、携帯電話が無い時代が良かったなんて云いません。バンダナ君と里穂ちゃんだって、名古屋駅に改札口が2つあったら、出会えなかったわけで、「昨夜、名古屋駅に迎えに行ったんだよ。」「そうだったの、ゴメン、気付かなかった。」なんてことになったら、「携帯電話があれば良いのにね。」ってなるはずだからです。そりゃあ、会いに来てくれた「気持ち」が有り難いってことも云えるんだけど、それは後になって思えばってことで、その時は、残念な気持ちの方が何倍も大きいはずです。

大切な人とつながっている今の時代は、あの頃の僕たちが望んでいた社会でもあるわけですから。

・・・ちょっと違ってるような気もするけど。

お終いは、2つのCMのスペシャルコラボで。



2020年12月5日土曜日

菊水作戦 ~沖縄周辺海域における航空機特攻~

「菊水作戦」とは、太平洋戦争末期、沖縄に来襲した連合国軍に対し、航空機特攻を中心とした日本海軍の作戦です。作戦の主体は第一機動基地航空部隊で、沖縄戦が始まった直後(1945年4月6日)の菊水一号作戦から、沖縄戦が終了する直前(6月22日)の菊水十号作戦まで行われました。同時期に陸軍も策応して特攻作戦を行いました。こちらは「航空総攻撃」と呼ばれていますが、合わせて菊水作戦として表記いたしました。

航空機特攻については、「巡洋艦「北上」と人間魚雷「回天」」の記事で、次のようにまとめさせていただきました。

「特攻」と云うと、まず思い出されるのが「神風」に代表される航空機による特攻であろう。この航空機特攻の中心となったのは「ゼロ戦」であった。ゼロ戦は、「零式艦上戦闘機」という名前から分かるように、本来は航空母艦に搭載するための戦闘機である。ところが、戦争末期には、空母に離発着できる腕を持つパイロットなどいなくなってしまったし、新しいパイロットを訓練するための時間も物資も無かった。また、この頃の戦闘機に求められたのは、ゼロ戦のような長い航続距離を持つ軽戦闘機でなく、陸上の飛行場から飛び立って、B29などの爆撃機を迎撃する重戦闘機であった。そこで、型落ちとなったゼロ戦に訓練不足なパイロットを乗せ、250キロとか500キロ爆弾を搭載して特攻させたわけである。ゼロ戦のような軽戦闘機に500キロもの爆弾を取り付ければ、飛んでいるだけで精一杯だから、結果は言わずものがなであろう。


特攻とか、神風というと、九州の基地から飛び立って行く映像がよく紹介されます。(ヲタに云わせるとあれは特攻機では無いらしいけど、菊水作戦に参加している機体ではあると思う)で、あの飛行機はどこに向かっているかというと、沖縄であります。特攻はフィリピン近海とかでも行われましたが、最大の特攻作戦が、沖縄諸島周辺のアメリカ艦隊を攻撃目標とした、この「菊水作戦」であります。

ウィキペディアの記述によると、この作戦において、海軍機は940機、陸軍機は887機が特攻を実施し、海軍では2,045名、陸軍では1,022名が特攻により戦死した。とありました。1827機のうち、133機が命中、122機が至近弾となったと云いますから、命中率は7%、至近弾まで合わせると14%の特攻機が敵艦船に損害を与えたことになります。

この結果、アメリカ軍の艦艇36隻が撃沈し、218隻の艦艇が損傷しました。菊水作戦によるアメリカ軍の戦死者は4,907名、負傷者は4,824名。この他に、イギリス軍とオランダ軍にも数百名の死傷者が出たとあります。アメリカ海軍が第二次世界大戦で、最も多くの犠牲を出したのが、この沖縄諸島周辺海域での戦闘によるものでした。

命中率7%をどう評価するのかは難しいところです。特攻機が撃沈したのは、駆逐艦などの小型艦艇が中心でした。しかし、太平洋戦争末期は、まともに戦っては日本軍は米軍に全くと云ってよいほど歯が立ちませんでしたから、この戦果は大変魅力的であり、軍部が特攻という戦術に傾倒していった理由が分かります。

特攻機に関する逸話で「片道分の燃料を積んで・・・」というものがありますが、これは事実ではありません。菊水作戦は索敵特攻でした。沖縄近海に米艦隊がいることは確かですけど、必ず敵艦と遭遇できるわけではありません。その場合は、帰還して次のチャンスを待つという方針がとられていました。(飛行機もパイロットも貴重ですから)出撃したものの敵艦が見つからず帰ってきた事例は、半分近くあったようです。また、特攻が成功したときは、積んでいた航空燃料が燃えることで破壊力が増大するとされて、これも、燃料をしっかりと積んでいた理由の1つとされています。

特攻に対する米軍の作戦は次のようなものでした。航空母艦や戦艦などの主要艦艇の周辺に、対空レーダーを搭載した駆逐艦をレーダーピケット艦とし、対空機関砲を搭載した小型艦艇とで、早期警戒体制の任務にあたらせました。レーダーピケットの情報は管制室へと送られ、空母から発進した戦闘機が特攻機の迎撃に向かいました。

対する日本軍機は全てが特攻機だったわけではありません。米艦隊の位置を探る偵察機、特攻機を誘導する支援機、さらに多くの戦闘機が、特攻機の護衛として、あるいは囮として参戦しました。

菊水作戦は、第十号まで実施されました。各回の作戦機は数百機、そのうち特攻機は200機ほどで、未帰還率は約50%とありました。特攻機のほとんどは、米戦闘機の迎撃や、艦船の対空砲火で撃墜されましたが、何機かは、防空網を掻い潜り特攻を成功させました。成功率は7%でしたが、突入された艦艇の被害は大きく、多くの米兵が犠牲となりました。

最も犠牲が多かったのが、周辺に配置されたレーダーピケット艦でした。特攻の目的からすれば、ピケット艦よりもその奥にあるはずの航空母艦を狙うべきなのですが、特攻機のパイロットは極度の興奮・緊張状態にありますから、対空砲火を浴びると目の前にある駆逐艦に突入してしまったり、炎上している艦船に突入したそうです。(「空母はあちら」って看板をつけてた駆逐艦の逸話もあるけど、たぶん嘘)。沖縄戦でレーダーピケット艦の任務についた駆逐艦は101隻。そのうち10隻が撃沈され、32隻が損害を受けたとありました。

沖縄周辺海域への特攻は、沖縄本島での地上戦と時期を合わせて行われています。米海軍の任務は、地上戦を戦っている陸軍や海兵隊を、艦砲射撃や航空機攻撃で支援することでした。ですから、米軍が地上戦をしている間は、沖縄近海に張り付いていなければなりません。日本軍が特攻を仕掛けてくることが分かっていても、沖縄を離れるわけにはいかなかったのです。米兵の肉体的、精神的負担はかなりのもので、海軍の司令官が、陸軍の作戦進行が遅いことを(海軍への嫌がらせで、わざとゆっくりしてるのだろうと)抗議したとありました。

米軍は、日本軍以上の犠牲者を出し、精神障害を引き起こす兵士も続出しました。しかし、米軍は、損失した艦艇を補充し、疲弊した兵士をローテーションしました。任務途中でしたが、司令官の交代も実施しています。一方的な攻撃を受けながらも、米海軍は沖縄近海に踏みとどまりました。菊水作戦が目的としていたのは戦局の挽回です。日本軍は、菊水作戦により、米軍に多くの損害を与えることはできましたが、目的を達成することはできませんでした。やがて、特攻に使用できる航空機が不足するようになると、鈍足の練習機までも使用するようになり、戦果は回を重ねるごとに乏しくなっていきました。

沖縄戦が終結すると米艦隊は沖縄近海から離れました。米艦隊の存在位置が分からなければ、特攻機を飛ばすことはできません。菊水作戦は終了し、軍部は来たるべき本土決戦に備えて、特攻戦力を温存する方針をとります。

貼り付けさせていただくのは、アメリカ海軍による対特攻機戦術に関する軍事教育用映画とのことです。前半は特攻戦術の分析、後半は特攻機に対する心得の啓蒙という構成です。映画の中で、軍服を正式に着用することが繰り返し指示されていました。裏を返せば、アメリカ海軍の兵士の中には、軍服をちゃんと着ていない奴が多くいたということでしょうか。


特攻機が船の側面中央から左右45度以内に収るように操艦することなど、様々な対策を理路整然と述べた後で、「敵機を60秒も追跡してから7,000ヤード(6,400m)地点で(ようやく)対空射撃なんてトロいことをやってんじゃねぇ。」と檄を飛ばし「ともかく撃ちまくれ!」ってオチで終わるところが、如何にも物量にモノを云わせるアメリカっぽい。(結局、それかよ)米兵の苦笑いが目に浮かびます。

人命軽視の特攻作戦とは云っても、飛行機もパイロットも貴重ですから、やるからには少しでも成功率を高めるような戦術がとられていました。特攻機の侵入を支援するために、多くの飛行機が作戦に参加していたことは知られていましたが、米軍がそれらを細かく分析していたことが分かります。さらに一兵士に至るまで、情報を共有しているところが米軍の強さの秘密なんだと思いました。

他にも興味深い説明がありました。1つは、特攻機が先に爆弾を投下してから突入している例の紹介です。第58任務部隊旗艦の空母「バンカーヒル」に突入する映像があって、これは、特攻を取り上げる番組で必ず使われるのですが、その時の記録でも、特攻機は突入する前に爆弾を投下しています。今まで語られていたのは、特攻機は、爆弾を括り付けていたので投下は不可能だったということで、それが特攻の非人道的な面を強調していたのですが、先に述べた片道燃料のことと合わせて、伝えられていた特攻機のイメージと事実は少し違うようです。


整備不良などで、不時着する特攻機も多かったと言われています。(軍需工場では熟練工が徴兵され、学徒動員の学生が旋盤を回してエンジンの部品とか作ってるんですから。)爆弾を抱えたままで基地に帰還なんて怖くてデキませんから、ちゃんと爆弾を捨てられるようになっていたと考えられます。ダメだったら戻って再出撃する方針ならば、爆弾の投下機を付けていたと考える方が自然です。

特攻機の最大の敵は、米軍の戦闘機です。特攻機の9割近くが、敵艦隊に辿り着く前に戦闘機によって撃墜されています。ただし、戦闘機は艦艇の防空射程内には入らないよう決められていました。でないと、味方の飛行機が邪魔で、対空砲を撃てませんからね。逆に云うと、特攻機は敵艦の防空射程内に入り込めば、戦闘機の追撃からは逃れられたわけです。

正攻法で完敗したマリアナ沖海戦を日本が降伏する最初のきっかけと考えるならば、特攻という手段を用いても侵攻を止められなかった沖縄での敗戦が、降伏する最大のきっかけだったことは明らかです。もはや万策尽きたはずの日本軍でしたが、菊水作戦での(微妙な)戦果が、軍部に妙な自信を持たせてしまいました。軍部は特攻を基本戦術とした本土決戦を本気で考えるようになります。

一方、アメリカはジレンマに陥っていました。沖縄戦だけでこれだけの損害が出るのですから、本土決戦を行った時の損害は想像もできません。8月には、ヤルタ会談の密約でソ連が対日参戦することが決まっていました。原爆完成の報告を受け、各国の思惑が交錯する中で、7月26日に「ポツダム宣言」が発表されます。

これに対して日本政府は「黙殺」という態度を表明しました。これは極めて日本的な表現で、表向きはNOだけど本音はYESという意味。(受け入れたいのはヤマヤマなんだけど、軍部の説得も必要だから、ちょっと待って、ということ)無回答も有り得たのですが、何か言うべきという軍部の要求で「黙殺」という表現を使ったとされています。ところがアメリカは、これを「拒否」と受け取りました。8月上旬に起きた悲劇の全ては、日本の自己責任とされたのです。


関連記事です。お時間があれば。

沖縄の陸上戦についてです。

黒島結菜「よっちゃん」と沖縄戦

太平洋戦争開戦についてです。

真珠湾攻撃と航空母艦「蒼龍」

2020年11月27日金曜日

「白いページの中に」柴田まゆみ

 「白いページの中に」(作詞・作曲:柴田まゆみ)は、1978年、第15回ポピュラーソングコンテストつま恋本選会の入賞曲です。

40年以上も前の曲なんですけど、今でも時々、地元のコミニティラジオで流れてきます。で、先日も流れてきて、カバー曲が、現在公開中の映画「ホテル・ローヤル」の主題歌になっているって紹介されたんですよね。今頃!って思ってしまいました。びっくりです。(ジャケットの写真にも)

この作品は、柴田さんが、高校のフォークソング部に所属していた時に作った曲が元になっているそうです。ポプコンの1978年春大会で入賞したのですが、その時の優秀曲賞が「佐野元春」さんで、同じ入賞曲に長渕剛さんの「巡恋歌」があったそうですから、凄いレベルの大会だったようです。

柴田さんは、この曲でデビューしましたが、シングルを一枚リリースしただけで、音楽活動を休止してしまいます。ポプコンは想い出作りで出場しただけで、元々プロになるつもりも無かったそうです。まあ、一発屋ってことですけど、1打数1安打で1ホームランですからね。ボカロ曲にもありますけど、アマチュアが繰り出す渾身の1曲ってのは、時に、名曲が飛び出てくるようです。

この曲で印象的なのは、サビ前の「長い長い坂道を、今、上ってゆく」のところ。ここからサビの盛り上げ方が秀逸で、正にコンクール向けの楽曲に思います。この曲が、どハマリする世代ってのは、アラウンド6だと思うんですけど、埋もれることが無かったのは、楽曲のデキの良さと、たくさんのカバー作品のおかげではないでしょうか。

たまたま尺が同じだったのであわせました。



柴田さんは、作詞の能力は評価が高かったようですし、歌唱力だってあるじゃないですか。まあ、周りが凄すぎたってことなんでしょうか。もったいないように思いますけど。

さて、「ホテルローヤル」は、2013年に集英社から刊行され、第149回直木賞を受賞した「桜木紫乃」さんによる小説短編集とありました。釧路湿原を見下ろすロケーションに建つラブホテルが舞台で、「波瑠」さん主演で映画化されています。

物語の内容に主題歌が、どう合っているのかイマイチ分からないんですけど、予告編を見ると、共演者が「松山ケンイチ」さんで、他に「伊藤沙莉」さんとか、「岡山天音」君や「正名僕蔵」さんが出演するんですよね。最近、映画も観てないし、行ってみようかなって思ったんですけど、止せば良いのに、映画評価のレビューを見ちゃったんです。あれって、悪口しか書いてないじゃないですか、で、一気にテンションが下がってしまったという次第です。主題歌に惹かれて映画を見に行った人っているのかなぁ。

伊藤沙莉さんが家出した女子高生役だなんて、これにもびっくり・・・女優さんって凄いですねぇ。まあ、テンション充電中ということで。

2020年11月24日火曜日

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」中条あやみ×黒島結菜

 「閻魔堂沙羅の推理奇譚」は、2018年より刊行されている短編小説シリーズで、ミステリー作家「木元哉多」さんのデビュー作とのことです。ググってみましたら・・・

閻魔大王の娘・沙羅が現世に未練を残し殺された死者たちに課す「自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き」という死者復活を賭けた霊界の推理ゲームを、1話完結で描いたミステリー

と、ありました。今までに7巻、19話が発表されていて、その内の6話が、NHK「よるドラ」でドラマ化されました。主演は「中条あやみ」さん。ただ、中条さん演じる「閻魔堂沙羅」は、物語のナビゲーター的存在で、各回のゲスト出演者が、実質的な主役を演じる構成になっています。

前半の3話、Ⅰ~Ⅳ回を視聴した印象は、タイトルから受けるイメージとは真逆の、ほのぼの系ドラマでした。兎に角、みんな良い人ばかり。さすがに、殺人を犯した奴は善人とは言い難いですけど、それなりに情状酌量の余地がありますし、第2話に登場した、乃木坂の「賀喜遥香」さんが演じた女子高生なんて、絶滅危惧種的に健気な女の子でしたよ。

NHK教育番組的なデキすぎストーリーは、若干ひき気味になりますけど、視聴後に心が温かくなるのは確か。週末の夜を気持ち良く過ごすことができます。それがNHK「よるドラ」のコンセプトなんでしょうね。

「中条あやみ」さん演じる「閻魔堂沙羅」は、ドSキャラとのことですが、意外と優しいところもあったりして、演じている「あやみ」さんは楽しいだろうなって思いました。黒島さん云うところの、ハロウィンの仮装みたいな衣装を、ここまで着こなせる女優さんって、他には思いつきませんです。


で、今回、取り上げさせていただくのは、「黒島結菜」さんが出演した、第3話、Ⅲ・Ⅳ回放送分です。黒島結菜さんが演じたのは、バドミントンの元トッププレイヤー「澤木夏帆」。一年半前に膝を故障して引退し、現在はジュニアの臨時コーチをしている、という設定でした。

ドラマ中で印象に残ったのは、全日本Jr.チャンピオンの「内山静香」。演じているのは「藤川心優」さんという子役出身の女優さんで、大阪を中心に活動なさっているようです。プロフィールの特技欄に「バドミントン」って出てましたから、それでオファーされたんでしょうか。

夏帆コーチを慕っているこの子が、ひたすら良い子なんですよ。実際のアスリートでも、トップに立つ子は、運動神経だけでなく、頭も性格も良いことが条件なんでしょう。


黒島結菜さんがバドミントン経験者であることは、ファンなら誰もが知っていることですよね。沖縄では、糸満の黒島というと有名なバドミントン一家のようで、YouTubeを検索すると、妹さんたちが出場しているインターハイ等の試合動画が出てきます。沖縄の大会では、上の妹さんと下の妹さんで決勝戦をした、なんてこともあったそうですよ。

黒島さんと中条さんが同い年で、プライベートでも仲良しであることも、ファンならば誰もが知っていることだと思います。このあたりのエピソードは、日テレの「アナザースカイ」でも紹介されましたけど、中条さんもバドミントン経験者であることは知りませんでした。二人が共演もしていないのに仲が良かったのは、バドミントンという共通項があったからかもしれません。

バドミントン・マガジンのインタビュー記事によると、黒島さんは、小・中学生の時に「糸満ジュニア」というクラブチームで活動していたとのことです。中学校のバドミントン部にも入っていたようですが、どちらで選手登録をしていたかは分かりません。中学2年生の時に沖縄でベスト8だったのが、最高戦績とありました。糸満高校でもバドミントン部だったという情報もありますが、この頃はタレント活動も始まっていて、沖縄と東京の二重生活でしたし、ケーキ屋さんでバイトもしていたみたいですから、部活はどうでしょうか。

ドラマの冒頭に静香と夏帆がバドミントンをしてるシーンがあります。番組予告では、バドミントンの腕前を披露とかありましたけど、実際にシャトルを打ち合っているシーンは、この時くらいでした。黒島さんは、手足が長く見えるので、フォームも綺麗だし、兎に角、格好良かったです。そりゃぁ、俳優さんですから、実力以上に上手く見せる術を持っているとは思いますし、ラケットを振る瞬間だけ早送りにしているような感じが・・・・してないか。バドミントンのシーンは、もっと見たかったですね。

上の画像は物語の前半でのシーン。あの唯之介も、こんな表情ができるんですね。ドラマの最後の方で、やる気を出してるときは、髪の毛をしばっていて、髪型によって印象を変えていたみたいです。元気が出た後は、いつもの黒島結菜さんでしたけど。

前半は、登場する人たちが、わざとらしいくらいに(ワザとでしたけど)口を揃えて「現役復帰なんかするな!」って云っていて、重苦しい雰囲気でした。その中で、代表コーチだけが優しい言葉をかけていたんですよね。つい「こいつ良い奴だ。」なんて思ってしまい、見え見えのトリックなのに引っかかってしまいました。

結局、このコーチが、交際相手(主人公の姉)に対する歪んだ思いやりから、現役復帰を妨害し、罪を犯していたんです。

夏帆の古傷を悪化させようと、飼い犬を逃がして追いかけさせたのって、傷害未遂になるんですかね。でも、階段から突き落とそうとしたのは、完全に暴行罪や傷害未遂。自転車のブレーキを壊したのは傷害罪。結果として交通事故を起こして死んでしまいましたから傷害致死、場合によっては殺人罪になるかもしれません。しかも、目撃者である静香ちゃんを拉致しましたから、未成年者略取。口封じのために殺してしまえば、誘拐殺人という重罪になります。犯罪というのは、1つ犯してしまうと、どんどんエスカレートしてしまうんだなって思いました。まあ、夏帆が生き返ったおかげで、最終的には、障害未遂と未成年者略取で済みましたけど、それでも重い罪のはず。あと、自転車壊してるから器物破損も。なのに、ナレーションでは、代表コーチ解任と、姉との交際解消しか語られませんでした。それだけじゃ済まないだろっ!

あと、気になったのは、謎解きのシーンでの台詞でしょうか。こういった、説明的な長~い台詞って、どうしても台本を読んでる感が出てしまいます。まあ、これは、若い女優さんたちのこれからに期待です。

閻魔堂は、物語のテイストに合わせて、ロケ地を変えているようです。今回は、「旧奈良少年刑務所」が使われました。

ここは、仏像巡りをしてた頃に、車で寄ったことがあります。その頃は、まだ少年刑務所として使われていて、門の前に車を停めたところ、守衛さんと目が合ってしまい、(何も悪いことしてないのに)慌てて引き返した思い出があります。

この旧奈良監獄の建物は、重要文化財に指定されている日本で最古の監獄建築なんですけど、今は使われて無くって、星野リゾートが監獄史料館やホテルなどの複合施設として、2024年の開業を目指しているとありました。高級ホテルを経営する星野リゾートでは、気軽に泊まるわけにはいきませんですね。

黒島さんって、このところ、テレビ東京やNHK大阪放送局のドラマに出演することが多いみたいです。「閻魔堂沙羅」は、制作費も安いだろうし、視聴率も高くはないだろうから世間の話題になることはないかもしれないけど(過度な期待さえしなければ)面白いドラマであることは保証いたします。

NHKオンデマンドが配信中止になることもなさそうだし。何より、30分で問題解決するから、テンポが良くって視聴疲れしないのが有り難いです。放送は残り4回。後半のゲスト出演者は、ベテランの俳優さんたちです。どんな展開になるんでしょうか。

 最後に、悪人には容赦ない沙羅ちゃんです。

  

2020年11月15日日曜日

炭焼きレストラン「さわやか」を語る(その5) ~パフェ歳時記~

 「パフェ」の語源はフランス語のパルフェだそうだ。英語で云うとパーフェクト、つまり完璧なスイーツという意味らしい。

昭和の子供にとって、パフェとプリン・ア・ラ・モードは憧れの的だった。街へ買い物に行った時などに、駅前の洋食レストランの食品サンプルを見てたから、パフェというのモノの存在は知っていたけれど、食べさせてもらったことはなかった。

コミック「美味しんぼ」に「とんかつをいつでも食べられる人生が丁度良い」という名言があるけれど、それで云うならば、「幸せな生活とは、いつでもパフェが食べられること」なんだと思う。

だから僕は、パフェが食べられるチャンスがあれば、必ずパフェを食べる。東京に出かけた時も、昼食が立ち食い蕎麦だったとしても、日本橋の千疋屋でパフェを食べた。最近は予算的に新宿駅地下のタカノに行くことが多いけど・・・。

そんな僕が自信を持ってお勧めするのが、炭焼きレストラン「さわやか」のパフェである。さわやかのお客の九割は、生焼けのハンバーグをオニオンソースで食べていて、それで満足しているようだが、食後にデザートを食べないのでは、さわやかを満喫したことにはならない。


今年最初のパフェは2月19日、静岡県産「紅ほっぺ」の「いちごパフェ」(税込み748円)だった。何で分かるのかと云うと、ちゃんと写真を撮っているからだ。おじさんがレストランでパフェを注文して、スマホで撮影している姿にドン引きされる方もいるかもしれないが、好きなんだから致し方ない。あの頃は、コロナ禍なんて別世界の話で、平和な世の中だったように思う。

やがて、非常事態宣言が出て、ゴールデンウィークを控えた4月18日から「さわやか」も休業することになった。で、このことが地元のテレビや新聞で報道されたものだから、駆け込みでお客が殺到する事態となった。テレビニュースのインタビューで、横浜から来たという人が「明日から休業だと聞いたんで」って答えていたが、「横浜なら上手い店がいくらでもあるだろうに、わざわざ来るんじゃねぇよ。」ってコメントが投稿されていた。首都圏の人たちをバイ菌扱いして申し訳ないと思うが、静岡県に感染者がいなかった頃なので、お許し願いたい。まあ、駐車場に横浜・湘南・横浜・品川・・・・春日部って感じで首都圏ナンバーの車がずらりと並んでいると、近所に住んでいる人も(さわやかでクラスターが発生したという話はないにしても)心中穏やかではなかったと思う。

この頃は、さすがの「さわやか」でも客足が少なくなっていたので、用意する食材も減らしていたらしい。それが、ニュースを聞いて客が殺到したモノだから、どの店舗でも夕方には食材が底を尽き、早々と閉店する事態になってしまったとのことである。

閉店している「さわやか」の前を通る度に、日本が普通で無くなってしまったことを実感した。


5月21日に「さわやか」は営業を再開したが、首都圏からの多くの客が集まる静岡県東部の店舗は、6月1日からの営業再開となった。

僕が「さわやか」に行ったのは、営業再開から2日後のことである。季節は、苺からメロンに変わっていた。入店したのは平日の夕方で、待ち時間はゼロ、店内には空席もあった。首都圏からの来店者はいなかったと思う。こんなに空いている「さわやか」は初めてだった。でも、少しずつ客が増えてきて、食べ終わって店を出る頃には、待ち時間も発生していて、いつもの「さわやか」に戻っていた。

静岡県袋井産「クラウンメロン」のパフェは、昨年食べた時よりも、メロンが厚かったように思った。きっと、店長さんがサービスしてくれたんだろう。

夏になって、さわやかは、また首都圏ナンバーの車で賑うようになった。伊豆半島の入り口にある函南店も観光客で賑わっていた。店の前のバス停に、旅行用の大きなトランクを持った観光客が座っているのをよく見かけた。彼女たちは、公共交通機関を使って伊豆半島を旅行し、そして「さわやか」に来ているのだった。きっと「るるぶ」とかにも紹介されているんだろう。


季節は、メロンから葡萄に変わった。

さわやかには、パフェの他に、パフェで使用するフルーツをお店でミキシングして作ったジュースもある。苺ジュースを一口飲ませてもらったことがあるが、正に苺そのものだった。メロンジュースは絶品だそうだが、飲んだことは無い。シャインマスカットのジュースは7粒の、巨峰のジュースには10粒の葡萄を使っているそうだが、値段は同じ。ジュースならば巨峰の方がお勧めである。

そんな時、さわやか静岡インター店で火災事故が発生した。「さわやか炎上」と云う見出しで新聞やネットニュースに出ていたので、何か不祥事でも起こしたのかと思った。普通は「ハンバーグレストランで火災」だろう。火災発生時の店は満席で、20人の従業員と80人の客がいたが全員無事とあった。

最初の頃は、火災を発生させたことを批難するコメントも投稿されていたのだが、やがて、満席の客を無事に避難させた従業員を褒めるコメントが主流となった。「さわやか」ファンの中には、もはや信者と云うべき奴らも多い。確かに、火がダクトに燃え移った時点で、消火活動から客の避難誘導に切り替えた店長の判断は的確だったと思うが、さすがに、火事を出した店を絶賛するのは如何なモノかと思う。さわやかのホームページには、火事を出したことの謝罪と、在店者に直接お詫びをしたいので申し出て欲しいとの告知が掲載された。・・・お詫びって何だろう、気になる。

葡萄の季節が終わる前にと、さわやかに行った。さわやかの「ぶどうパフェ」には、シャインマスカットが5粒と巨峰が3粒のっている。東部の店舗は相変わらず若者が多いが、地元のファミリーも戻って来ていて、いつもの「さわやか」の景色になっていた。

注文してしばらくしたら、バイトのお兄ちゃんが、すまなそうな顔をしてやってきた。巨峰が切れてしまって全てシャインマスカットになるけど良いかと聞かれた。やがて、税込み748円でシャインマスカットが8粒のっているパフェが運ばれてきた。季節の移り変わりを感じながら、巨峰抜きのパフェを食べた。


直にデザートメニューが更新されて、今は静岡県産三ヶ日みかんのパフェになっている。(缶詰の蜜柑では無い!)昨年は無かったから新作のようだ。値段は税込みで638円。三ヶ日みかんを丸ごと一個使っているらしい。三ヶ日(みっかび)は、静岡産の蜜柑の中でもブランドなので、他の産地よりも、ちょびっと値段が高い。とは云っても、三ヶ日みかんは珍しくもないが、さわやかのパフェとあっては、食さねばなるまい。しかし、静岡抹茶ティラミスも気になる。

そして年が明ければ、また苺のパフェが始まるだろう。こうして静岡県の一年は過ぎていくのだ。

2020年11月8日日曜日

さようなら「アシガール」

伊藤健太郎君のひき逃げ事件を受けて、NHKはアシガールとスカーレットのホームページを削除し、オンデマンドでの配信を終了してしまった。さらに、伊藤君に対して損害賠償の手続きを取る構えらしい。

彼が出演した映画が、作品と個人の罪は別だとか、見たい奴が金を払って見るからと云う論理で、公開されているのとは対照的である。見たい奴が金を払って見るのであれば、有料オンデマンドだって同じだと思うのだが、NHKは視聴者の受信料で成り立っているので、こういう不祥事には厳しく対処するとのことらしい。

事件が起きる前は、伊藤君の人気にあやかろうと、一番チヤホヤしていた放送局がNHKだったから、とんだ手のひら返しである。まあ、俳優「伊藤健太郎」は自分たちNHKが育てたって気分でいた分、より裏切られた感が強いのかもしれない。民放のようにスポンサーに配慮する必要の無い代わりに、視聴者・・・つまり世間の風潮に左右されるのがNHKなんだと改めて実感した次第である。

伊藤君は、釈放されて湾岸署を出てきたときに「自分が起こしてしまった事故のせいで、たくさんの方々にご迷惑をおかけした・・・」と云った。迷惑をかけた沢山の人って、どのくらいいるのだろう。

真っ先に思い浮かぶのは事故の被害者とそれに関連する人たち、次に思うのは、ドラマや映画の共演者とそのファンだ。健太郎君はどこまで分かっているのか知らないけれど、アシガールと黒島結菜さんのファンである「僕」は、紛れもなく伊藤君に迷惑をかけられた者の一人だ。NHKのオンデマンドのマイページ、お気に入り登録してあったアシガールの全13話が、消えてしまった時の悔しさと憤りは半端なかった。だから、彼の謝罪の何百万分の一は、僕に向けられたものだと信じている。

そんな中、原作コミックの15巻が、年末に刊行されるそうだ。森本先生が今回の事件により創作意欲を失い、連載を切り上げてしまうのであれば、それもまた「さよなら」であるが、現在連載中の第2部は読者の強い要望で始まったから、(純粋な)アシ・ラバが支え続ける限り、本能寺の変から関ヶ原の戦いへと話は続いていくだろう。

でも、NHKがアシガールの続編を制作する可能性は無くなってしまった。12月に公開予定の舞台「両国花錦闘士」のように、伊藤君に代役を立ててでもアシガール続編を制作して欲しいところであるが、制作側には、そんな意欲はもう無いだろうし、作ったところで世間からあーだこーだと云われることは目に見えている。

アシガールの配信終了は残念極まりないことだが、NHKは今までにも出演者に不祥事のあった番組を配信停止にしたことがあり、その方針が今回もブレなかっただけのことである。配信再開は、過去の例からしても極めて難しいだろう。ファンならばDVDを持っているだろうし、テレビ放送の録画もあるだろう。だが、配信がなければ新規のファンも生まれないだろうし、配信という共有財産を失ったアシラバの精神的ダメージは大きい。

今回の事態を、黒島結菜さんは、どう思っているのだろうか。

アシガールが放送されてたのは、ちょうど3年前の今頃だった。当時20才だった黒島さんも23才だ。大人の女優へのステップになるはずだったスカーレットへの出演は、とんだ思惑違いだったが、同じく大阪放送局で制作されている「閻魔堂沙羅の推理奇譚」のゲスト出演でも、黒島さんは実年齢相当の役を演じている。熱愛報道も出たし、いつまでも唯之助のイメージでいることもないだろう。潮時って言葉は相応しくないだろうが、これは与えられた1つのきっかけなのかもしれない。


僕は、アシガールに出会って、黒島結菜さんを知った。二十歳そこそこの女優を応援するなんて考えもしなかった。アシガール関連の投稿記事は13本。たくさんの人たちに読んでもらえたし、とても楽しく書かせていただいた。だから、アシガールには感謝しかない。

でも、女優「黒島結菜」を第一に考えれば、アシガールの配信終了は1つの区切りであって、何かが終わったわけではない。黒島ファンは次のステップを応援し、アシラバはコミックの世界へ帰っていく、ただそれだけのことなのだ。

さようなら「アシガール」そして、ありがとう。

2020年11月7日土曜日

「色のなき風やボカロのラブソング」岩永徹也

 プレッシャーバトル(プレバト)というバラエティ番組がある。特にファンと云うわけでもないのだが、何年もダラダラと見続けている。番組の中核は俳句のコーナーで、初めの頃は、なるほどと感心しながら見ていたのだが、最近はマンネリ気味だ。でも、習慣で見てしまう。先日も習慣で見ていたら、「岩永徹也」君がボーカロイドを詠んだ句を発表していた。マルチな才能を持つ彼は、作曲にも取り組んでいるとのことで、作曲支援のツールとして、ボカロ・キーボードを使っているようだ。岩永君のこのようなボーカロイドの使い方は、開発時に想定されていた正に王道なのであって、細やかではあるが、メディアに紹介されたことは嬉しい限りである。

で、岩永君が詠んだ句がこれである。

「色のなき風やボカロのラブソング」

梅沢さんは「色のなき風や」がどうも気になっていると云い、季語本来の形である「色なき風や」にしなかったことを指摘された。また、夏井先生は「ボカロ」を知らなかったとのことで、ボーカロイドという言葉の省略形を使用したことの善し悪しの判断を保留された。司会の浜ちゃんは、ボカロも初音ミクも何も知らなかった。プレバトでは、番組のBGMでボカロ曲をたくさん使っているのが特徴なんだけど、それを何も知らないってことは、彼は収録後の番組を全然チェックしていないってことなんだろう。フジモンさんは、ボカロ=バーチャルアイドルというイメージで捉えられているようだった。

この番組は、夏井先生の添削が最大のウリで、時には、ヤラセではないかと思えるほどの見事な添削を披露してくださるのだが、今回のように知らないことは知らないと云い、周囲の人に教えを請い、判断しかねるときは保留するという態度は素晴らしいと思った。

夏井先生の添削された俳句がこれである。先生は、直すと云うよりも、普通はこうなるというスタンスで発表されたように思う。

「色なき風やボーカロイドのラブソング」

季語の「色なき風」は、平安時代の短歌にも見られる、古い季語なんだそうだ。五行思想を季節に当てはめて、青春、朱夏、白秋、玄冬と云う言葉が生まれた。秋のイメージカラーは「白(透明)」とされ、そこから秋の風を色なき風と表すようになったらしい。 

代表的な歌が、「新古今集」に収録されている久我太政大臣雅実が詠んだ歌。

物思へば色なき風もなかりけり   身にしむ秋の心ならひに

なんだそうだ。

普通は、「秋風や」とか、「秋の風」とするところを、「色なき風」としたのは、岩永君の博学であり、お洒落なところで、900年以上前の歌にも使われている季語を、ボカロという現代・近未来的なものに合わせたところが、この俳句の面白さである。

岩永君は、ボカロのラブソングは、心の無い無機質な冷たい歌であり、そこから、色なき風を連想したと説明していた。無色透明なボカロの歌に、如何に色づけをしていくかが、ボカロPの腕の見せどころなんだと思うのだが、ボーカロイドをツールとして捉えている岩永君には、ボカロに対して、そういう想い入れは無いのだろう。

岩永君の決定的なミスは、季語を「色のなき風」としたことである。何故「の」を挟んでしまったのだろうか。僕は、ボーカロイドをボカロと省略したことと関連があるように思う。夏井先生は、ボカロという省略形を使ったことの是非を保留した。どちらでも良いのならば、ボーカロイドのままで良かったと云うことなのだが、ボーカロイドとボカロの語感は微妙に違う。

「ボーカロイド」と省略しない場合は、コンピューターに歌わせる技術そのものを表すのに対して、ボカロと云ったときは、(ヲタク)文化的な意味が強調されるように思う。岩永君が「色なき風」と合わせたかったのは、ヤマハのエンジニアが心血を注いで開発したボーカロイドでは無く、ヲタクが喜んで聴いているボカロなのであって、紛い物のラブソングを表すのは、やはり「ボカロのラブソング」の方がしっくりする。で、結局、ボカロにこだわって、歌のリズムを合わせようとした結果、「色のなき風」となったんだと思う。俳句の季語よりもボカロの方に強い思いを持つ僕には、夏井先生の添削作品よりも、岩永君の歌の方がしっくりくる。

「色なき風や○○○ボカロのラブソング」

「色なき風」と「ボカロ」を取り合わせて、僕なりに直してみようと思ったのだが、上手くできるわけもなかった。この辺の事情が夏井先生に上手く伝わっていれば、きっと素敵な三文字を入れてくれたに違いない。

ボカロのラブソングを貼り付けさせていただいてお終いにしようと思う。槇原敬之氏の「もう恋なんてしない」で如何であろうか。もう御本人がメディアに出てくることも無いと思うので、せめて、色なきボカロのラブソングを。

2020年10月31日土曜日

「紀平梨花」選手2020新プログラムの前評判がやたら高い話

紀平梨花選手の2020新プログラムの前評判がやたら良い。公開が遅れている分、期待が高まっているからだろう。

紀平選手が出場を予定していた、グランプリシリーズ・フランス大会が中止になってしまった。最近のヨーロッパでの感染状況を考えれば致し方ない事とは云え、テレビでのライブ中継も予定されていたから残念極まりないことである。スイスの国内大会に出場するのではという話もあったが、御本人直々に、エントリーしていないとの告知があった。結局、こちらも中止になってしまったけど・・・。全日本選手権までの間、どのように調整されるのか心配なところである。

コロナ禍により、今シーズンは国際大会が全然開催できていない。12月の全日本選手権が、梨花ちゃんの初戦になる可能性もある。新しいプログラムを念入りに準備しているのは、今年のプログラムを北京オリンピックまで使うことを視野に入れてのことかもしれない。

さて、GPSフランス大会の中止が発表されたのを受けて、SNSに新プログラムの一部が公開された。

まずは、ショートプログラム。最後のステップシークェンスの部分のようだ。片手側転を取り入れた振り付けが話題になった。ピアノ曲かと思っていたのだが、どうやらオーケストラ・バージョンを採用するらしい。

 楽曲は、ジェニファー・トーマス氏作曲の「The Fire Within」で、振付を担当したのが、ブノワ・リショー氏とのことである。ジェニファー・トーマス氏は、一昨年のフリー「A Beautiful Storm」の作曲者でもあるから、雰囲気が似ているのはそのためのようだ。


こちらは、フリー演技。今、話題のピアニスト清塚信也氏による「Baby, God Bless You」である。SNSには、清塚さん自身から、歓迎のコメントも投稿されていた。振り付けは、新コーチでもある「ステファン・ランビエール」氏とのことだ。


今シーズンのプログラムの特徴は、ずっと振付を担当していた「トム・ディクソン」氏が外れたことである。ステップ・シークェンスを見ただけだけど、ランビエール氏の振り付けは、もの凄く普通に思えた。これは良い意味で期待できる。梨花ちゃんのステーティングに、奇をてらったような演出は不要だからだ。

この動画は、清塚さんが気持ち良くピアノを弾いていて、それに梨花ちゃんが合わせているって感じがする。どんなリズムにだってハメてしまうのが彼女の運動能力の高さなんだけど、フィギュアの試合では、あまり評価されてないように思う。簡単な曲でも、完璧に合わせさえすれば加点されるのに、難しい曲を使って頑張っても、チョットのミスで減点される。それが最近のジャッジの傾向だ。

だから、理想を云えば、梨花ちゃんが気持ち良く滑って、それにピアノ伴奏を付けるというのがベスト。フリー演技は4分間だから、楽曲も当然4分に編集するわけで、是非とも、清塚さんご自身に演技用バージョンの編曲・演奏をお願いしたいものである。

Baby, God Bless You のオーケストラ・バージョンを貼り付けさせていただいて、お終いにしようと思う。オーケストラ・バージョンも諦め難い。この楽曲を、清塚信也氏に4分間に編曲してもらって、ご自身にピアノを演奏していただくか、指揮をしていただければ、最高のフリー楽曲になると思うんだが。

2020年10月25日日曜日

四国音楽祭で歌わなかった「丸山純奈」が、「糸」の弾き語りをSNSに投稿した話

 NHKの歌番組「もっと四国音楽祭2020」が10月23日に四国地区限定で放送されたようだ。丸山純奈さん(すーちゃん)は、この音楽祭に2018・2019と2年続けて出演していたので、もしかしたらと淡い期待を抱いていたのだが、今回は歌無しのVTR出演だった。ステージで歌わなかったのはコロナ禍のためと思うのが普通なんだろうけど、今のすーちゃんは充電中(休業中?)だから、コロナ禍でなくとも、歌わなかったかもしれない。もし、歌うのであれば、やり方なんて幾らでもあるわけだから、歌わなかったのは、やはり大人の事情によるものなんだろう。

VTRのすーちゃんは、垢抜けようとしていたし、話す言葉にも淀みがなかった。徳島の中学生だった頃と印象が違ったのは、お化粧よりも、徳島訛りを封印していたからだろう。

自粛中は、ギターの練習をしたり、曲作りに取り組んでいたらしい。皆に聞いてもらえるように頑張るとのことなので、気長に待つこととしよう。

で、これだけだったら特に取り上げることもなかったのだが、10月17日に母親のアカウントから鼻歌・・・弾き語りを投稿したりするものだから、何事かと驚いてしまった次第である。

どうやら、現在公開中の映画「糸」を見て感動したので、主題歌を口ずさんでしまったとのようだ。「糸」といえば、菅田将暉さんと小松菜奈さんのW主演映画で、二人がリアルでもお付き合いしているとの報道でも話題になった作品である。

僕は、ドラマでも映画でも、人を泣かせることを目的とした作品は苦手なので、この5分間のMVで既にお腹イッパイなのだが、良い映画なんだろうなってことは分かる。

映画「糸」は、中島みゆきの楽曲をモチーフにして制作された映画とある。楽曲の「糸」が作られたのは1992年だそうだから、28年も前の話だ。このアルバム収録曲は、様々なアーティストにカバーされながら、じわじわと広まり、職場の忘年会でカラオケにいくと、誰かが必ず歌うという神曲へと成長した。僕は、最初に聴いたとき、中島みゆきが久し振りに新曲でも出したのかと思った。そういえば、音楽チャンプで「琴音」さんも歌っていたと思う。


丸山純奈さん(すーちゃん)は、自身のSNSを突然停止した後、しばらくして、母親のアカウントで発信するようになった。発信するんだったら、ちゃんと自分のアカウントですれば良いのにって思うんだが、何か大人の事情でもあるのだろう。だからと云って、母親のアカウントなら良いと云うのも可笑しな話であるけど。

で、今までの発信は、東京での高校生活を満喫してます的なものだったが、今回、鼻歌とはいえ歌唱を投稿したのは、サプライズだった。丸山純奈さんは、休業中とはいえ、トライストーン・エンタテイメント所属のタレントである。僕の感覚では、プロの歌手が鼻歌をSNSに投稿するなんてのは、通常有り得ないことだ。これは、何かの前振りなのであろうか。

投稿された歌は、劣悪な環境で録音されたものにしては、良く歌えてる方だとは思う。ただ、ファンは喜ぶかも知れないが、その程度のデキに過ぎない。これを絶賛してはいけない。

SNSもそうだけど、やるんだったらちゃんとやって欲しい。ステージには立たないけど、鼻歌は投稿しますなんてオカシな話だ。僕は、デビューするまで待てと言われれば待つし、歌を聴きたければ金を払えと云われれば払う。その変わりプロとして恥ずかしくないものを提供して欲しい。それがタレントとファンとの普通な関係だろう。

とは云っても、すーちゃんが自分の歌を聴いて欲しいと思っていることが確認できたのは、嬉しい限りだ。もしかしたら、「糸」は四国音楽祭で歌うつもりで準備していた曲だったのかもしれない。で、ステ-ジで歌えなくなったので、SNSに投稿したとか・・・そうかもしれないし、そうあって欲しい。すーちゃんも、もうすぐ17才だ。と云うことは、この投稿は、丸山純奈さん16才の唯一の歌唱になるかもしれない。

「糸」がロングヒットしているのは、性別や年齢を問わず、その時々の歌い手に似合う曲だからである。きっと、すーちゃんは、歌手「丸山純奈」として、ちゃんとしたステージで、この歌を歌い直してくれるだろう。楽曲もまた、彼女の登場を待っている。

2020年10月18日日曜日

「筒美京平」作曲「AMBITIOUS JAPAN !」TOKIO&JR東海

作曲家「筒美京平」さんが10月7日、80歳で逝去されました。僕らは、筒美京平さんと都倉俊一さんの曲を聴きながら大きくなった世代ですから、やはり、筒美さんには特別な思いがあります。

でも、亡くなられたというニュースを聞いて、どんな方だったかなぁって思い返しても、思い出せなかったんですよね。写真を見てもピンとこない。都倉俊一さんは分かるのに何でだろうって考えたんですけど、メディアには全く出なかった方だと知って納得しました。だから曲と名前しか知らなかったんだって。

ちょっとググっただけでも、知っている曲が次から次へと出てきて、今更ながら驚いた次第です。で、どの曲を取り上げさせていただこうかなって、リストを眺めていたんですけど、「また逢う日まで」とか「魅せられて」だと世代的にはちょっと上な感じだし、近藤真彦は個人的に許せないし、なんて思っていたら、「AMBITIOUS JAPAN !」が出てきたんですよ。これもそうだったんだって、再び驚いた次第です。

2003年10月リリースっていうから、筒美さんが60才過ぎてからの作品だったんですね。恐らくこれが、最後のビックヒット曲になろうかと思います。

作詞:なかにし礼、作曲:筒美京平とありましたから、大企業のJR東海が、旬をとうに過ぎた大御所を引っ張り出してきて作ってもらった曲、っていうイメージなんですけど、疾走感のあるメロディーが新幹線にバッチリはまって格好いいこと此の上ありません。TOKIOにとっても、バンドとして一番格好良かった頃でしたから、全てが見事にはまったんだと思います・・・っていうか、筒美さんが、はめたんでしょうね、きっと。御本人は、してやったりって思っていたかもしれません。

どんなに才能のある人でも、多産な時期を過ぎると、創作能力がだんだんと衰えてくるものなんですけど、63才でこんなに格好いい曲をかっ飛ばした筒美京平さんって、本当に凄かったんだなって、三度驚いた次第です。

この辺の奴らってのは、子どもの頃から毎日、富士山と新幹線を見て育ってきたんで、逆に、新幹線には特別な想いってのが無いんですけど、自分や家族や周りにも通勤や通学に新幹線を使っている人がたくさんいるので生活の一部みたいになっています。東京に出かけるときも、行きは東海道線や高速バスを使って節約しても、帰りは疲れるから新幹線でってことも多いんですよ。

でも「AMBITIOUS JAPAN !」は、「のぞみ」のCMソングで、静岡県には、のぞみは1本も停車しません。駅のホームで「こだま」を待っているときに、颯爽と通過していく「のぞみ」を見て格好いいなぁって憧れてるのが、僕ら静岡県人なんです。まあ、疾走する「のぞみ」をこんなに間近に見られるのが、静岡県人の特権・・・ということにしておきましょう。小田原駅とかで、通過する「のぞみ」を待つために、10分近く停車させられている時は腹立ちますけどね。

で、YouTubeに溢れている「AMBITIOUS JAPAN !」の新幹線動画からセレクトしたのは、これ。テーマは、静岡県を通過していく「のぞみ」です。

車内清掃が終わるのをホームで凍えながら待ち、乗り込むと音も無く発車。車内放送から流れてくるオルゴール調にアレンジされた「AMBITIOUS JAPAN !」。

筒美さんが亡くなり、TOKIOは空中分解しちゃったけど、700系が走り続ける限り、このメロディーは流れるんだろうな。


で、思ったんですけど、僕、新幹線には何十回、もしかしたら何百回って乗っているんだけど、「のぞみ」って1回も乗ったことが無いかもです。岡山に行った時も「ひかり」だったし・・・(悲)

2020年10月17日土曜日

黒島結菜「時をかける少女2016」 その4 ~最終話は黒島結菜10代の集大成だった~

ついに「時をかける少女2016」最終話のTVer無料配信が終わる。

「時をかける少女2016」は、10代の黒島結菜の集大成だった。代表作「アシガール」の彼女は、その延長線上にある。もし2つのドラマに評価の違いがあるとしたら、それは共演者によるものだろう。

まずは「恋を知らない君へ」。このドラマのエンディング・テーマだ。どや顔で歌う「手越」が癪に障るが、上手いのは認めざるを得ない。

最終話は、たくさんの別れを詰め込んでいたので、慌ただく感じた。せめて、放送枠があと10分あればと思った。もしかしたら、拡大版で放送する予定で作っていたけど、(視聴率が悪くって)通常枠になったのかもしれない。(完全な妄想だけど)


全5話の中で良かったのは、エピソード編の第2話。通常の連ドラみたいに8話とか、10話の構成だったら、このような一話完結のエピソードをいろいろとやったんだろうなって思う。


一番面白かったのは第3話だ。これぞ黒島結菜って感じだった。視聴率が大爆死した第3話が一番面白いってのも皮肉な話だが、調べてみたらこの回だけ演出が違ってたから、僕と演出との相性の問題なのかもしれない。

最終話は、感動の場面での台詞が多すぎたように思う。説明しなくても視聴者はちゃんと分かって感動しているのだから、もっと、視聴者を信じて欲しかった。

「大切な人のために、初恋なんて喜んで捨ててやろう」の前後の台詞は不要だし、「ずっと一緒に居たいに決まってんじゃん、そんなの」の後は、視聴者と一緒に泣いているだけで十分だ。ラストシーンも、せっかく良い顔で終わってるんだから、最後の3人の変顔ショットは邪魔でしかない。

深町と母親との別れのシーンは良かったけど、肝心な芳山とのシーンの演技は・・・と思った。まあ、これは、菊池風磨君がどうと云うよりも、場面の相方を務めている、女優「高畑淳子」と「黒島結菜」の格の違いによるものだろう。

それから、初恋という言葉にこだわり過ぎていたように思う。旧作の芳山の設定は高校1年生で、主演の原田知世さんの実年齢は15才だったから、少女の淡く儚い恋のイメージに合っていたけど、2016の芳山は受験生の高校3年生である。第1話での吾朗の告白だって、プロポーズに近いものだった。もう、笑い飛ばせるような、たわいない恋ではなかったはずだ。大人の恋の始まりという設定でも十分だったように思う。

ただ、これらは番組を愛するが故の批判であって、逆に云えば、これ以外は良くできていたと思うし、さすがに僕は号泣しなかったけど、楽しく視聴することができた。

旧作の芳山は、記憶を消されてしまうという立場だった。深町が未来に帰った後も、心の底でずっと失恋を引きずっている切ない終わり方だったのに対して、2016の芳山は、自らの意思で深町を未来に帰し、前向きな気持ちで夏をやり直そうとしていた。ハッピーエンドでは無いにしても、深町と出会ったことを幸せと思える終わり方になっている。旧作の落ち着いた尾道の町並と、2016の開放的な伊豆の夏の景色が、二つの作品をさらに対照的なものに演出していたように思う。

「時かけ」は、若い3人の俳優で話を回していく物語だ。ベテラン俳優に頼ることができないから、若き主演女優「黒島結菜」のプレッシャーは、かなりのものだったはずだ。そんな中で、ストライクゾーンにキレの良いストレートをがんがん投げ込んでくるような、彼女の魅力は十分に引き出されていたと思う。

原作が同じで「時かけ」を名乗るからには、2つの作品の優劣が語られることは致し方ないけど、黒島が脆くて壊れそうな少女の恋心を表現できないように、知世ちゃんだって溌剌とした天真爛漫さは演じられなかっただろう。両方を好きだと云える自分は幸せな奴だと思うし、僕の住んでいるところが、あの有名な尾道と同じくらい素敵な街なんだって再発見できたことも嬉しかった。

最終話で、一番良かったのは、ラストで芳山と吾朗が進路について話しているシーンだ。二人とも本当に良い顔をしていた。結局、この二人ってどうなるのだろう。兎に角、吾朗が良い奴過ぎて、何のフォローも無しに終わるのは残念すぎる。説明過多な最終話に於いて、最後の最後に視聴者を突き放したような終わり方にモヤモヤしてしまった。吾朗のためにも、いつか、竹内涼真と黒島結菜で、最後はちゃんと結ばれる、本気の大人の恋の物語を作ってやって欲しい。

お終いは、やはりこれ。この手の動画では異例の再生数2,114,914 回、高評価23,953、低評価237、イイね率99%。「時をかける少女 2016」とアニメ版主題歌「変わらないもの」のコラボ動画だ。良くできていると思う。

2020年10月16日金曜日

紀平梨花 今季FS「Baby, God Bless You」には期待しかない

 先日、ネットニュースにフィギュアスケーター本田真凜選手の記事が掲載されていた。東京選手権のフリー演技で、違う曲のCDを提出しちゃったそうだ。差し替えも間に合わず、そのまま演技することになったものの、どうにかまとめて結果は7位。東日本大会には進めるらしい。まあ、東京選手権のような地方大会の出来事がニュースになるのも、その演技がYouTubeにアップされているのも、本田姉妹ならではである。

ファンは即興力を褒め称え、アンチは失態を蔑むのは、予想どおり。ちょっと安心したのは、キスアンドクライでの彼女の表情が明るかったことだ。まあ、それはそれで、スケートに真剣に取り組んでいないとか云われちゃうんだけど。

即興的演技構成で審判団がパニックになったみたいで、得点が出るまでの時間が異様に長かったけど、演技構成点が53.33(80点満点)もついたのは面白かった。フィギュアスケートってのは、音楽に合わせて、演技構成(ジャンプ7本とスピン3つ)をこなせば、それっぽくなるってことなんだろう。

いつもの年だったら、今シーズンの演技のお披露目も終わり、国際大会も始まっているはずだけど、コロナ禍で全く先の読めない情況にある。フィギュアスケート界というのは、練習拠点とか、コーチとか、国境や国籍の壁があまりないのが良いところだったんだけど、今はそれが、裏目に出ちゃっている感がある。

梨花ちゃんも、オーサー氏に師事する話とか、プルシェンコ氏のチームに入る話とか、いろいろ出ていたんだけど、ステファン・ランビエール氏の夏季合宿に参加して、そのまま、コーチングを受けることに決まったらしい。濱田コーチも引き続き登録されているってことは、日本に滞在中の間は、濱田コーチのリンクで練習するってことだろう。

それにしても、ヨーロッパ人には、ソーシャルディスタンスという概念がないらしい。

グランプリシリーズは、フランス大会に参戦する予定だそうだ。開催地は、ウィンタースポーツの聖地グルノーブルだから、凄い楽しみなんだけど、ヨーロッパでは、新型コロナウィルスの感染が再び広がっているようだから、開催中止になる可能性も高い。全日本選手権のことを考えれば、早めの帰国もありえるし、そうして欲しいと思ってる。

で、先日、音楽に動きを合わせるとそれっぽくなるという動画を見つけた。今シーズンの紀平梨花選手のフリー演技の音楽に、昨年の国別対抗のSPの演技映像を合わせた動画である。

楽曲は、話題のピアニスト「清塚信也」氏が作曲した、ドラマ「コウノドリ」より“Baby, God Bless You”だ。本当の振り付けは、新コーチ「ステファン・ランビエール」によるものだが、全然公開されていないので、2019年の国別対抗SPの動画を合わせて作ったらしい。

ショート・プログラムの本当の楽曲はドビュッシーの「月の光」。この時、梨花ちゃんは、当時の世界最高得点を叩き出した。昨シーズンは、ショートもフリーもへんてこりんな楽曲だったから、次は、クラシックか映画音楽みたいな王道のプログラムが良いなと思っていた。ずっと、こんな梨花ちゃんが見たいと思っていたから、合成映像とは云え嬉しい限りである。

そう云えば、ドビュッシーの「月の光」はピアノ曲だけど、梨花ちゃんはオーケストラバージョンを使っていた。ってことは、「Baby, God Bless You」もオーケストラバージョンを使うってことか。

コロナ禍が収って、アイスショーができるようになったら、清塚信也氏の生ピアノで滑って欲しい。クアド・サルコウも、トリプル・アクセルもいらない。今ならはっきり云える。紀平梨花のスケーティングが好きだ。

2020年10月10日土曜日

黒島結菜「時をかける少女2016」 その3 ~夏の大三角関係~

 カレーライスの一番美味しい作り方は、説明書どおりにキッチリ作ることらしい。良かれと思ってやってるアレンジは、結局は余計なことなんだそうだ。とは云っても、アレンジしたくなるのが、今も昔も変わらない作り手の心情である。

「時かけ2016」で云うならば、そのアレンジは「あからさまな三角関係」と「主人公の天真爛漫さ」であろう。「時をかける少女2016」は「時かけ」×「三角関係」+「コメディー」って分析できると思う。今回は、原作からあまりにもかけ離れた3人と、演ずる3人の俳優について、いろいろ妄想してみた。


1.この仕打ちから立ち直れた浅倉吾朗ってホントに良い奴

まずは、三角関係の一角、「竹内涼真」さん演じる「浅倉吾朗」だ。芳山の幼馴染みである吾朗は、原作や旧作でも芳山に好意を持っているが、その態度は素っ気ない。単なる友人とは異なり、かといって恋人同士でもない、幼馴染みという関係をよく描写しているように思う。

幼馴染みが結婚まで至るってのは、漫画や小説の話で、実際の世の中では、そう多くはないだろう。子どもの頃だったら、近所に異性の友達がいることは珍しくないけど、思春期になれば自然と離れていくものだからだ。時かけ2016で、芳山と吾朗の幼馴染みの関係が高3まで続いたのは、芳山が吾朗を異性として意識していなかったからである。

一方、吾朗は、物心ついたときから、ずっと芳山のことが好きだったという設定になっている。私立の進学校でなく、県立高校に進学したのも、ボート部に入ったのも、芳山と一緒が良かったからだ。医学部志望なのに、文系のクラスにいるのも、同じ理由からだろう。ここまでくると、ちょっとヤバい。ドラマに出てくる県立藤浦東高校は、そこそこの進学校みたいだから、同じ学校に進学するのは良しとしても、部活やクラスまで一緒という歪な関係はいただけない。恋人になったとたんに崩壊しそうな感じだ。もしかしたら、芳山も本能的にそれを感じているのかもしれない。

七夕祭りでの告白は、タイムリープを使われて無かったことにされてしまったが、まあ、一度離れる良い機会だろう。この二人は、それぞれの進学先で、新しい彼女や彼氏を作った方が良い。何年か後に同窓会で久し振りに会って・・・みたいな話になるんだったら、それもアリだと思うけど。

彼のヤバさが、視聴者に伝わらないのは、俳優「竹内涼真」君の爽やかな演技のせいだ。最近は、週刊誌報道で好感度も微妙な涼真君だが、役者としては、3人の中で一番上手い。第3話での公開プロポーズでは、かなりツラい役どころだったが、揺れ動く感情を演じきり、多くの視聴者を味方につけてしまった。これは、フラれ役としては、逆に失格。明らかなミスキャストであろう。

涼真君が左利きなので、この並び。どう見ても大学生と高校生のお似合いカップルである。仲良し兄妹にも見える。ちなみに、菊池風磨君も左利きで、矢野先生を演じている加藤シゲアキさんも左利きらしい。

ヤバかった吾朗は、第4話で人間として一回り成長することができた。家出を止めようとタイムリープしてきた二人を受け入れる器の大きさ、周りの期待に応えようと努力する優しさ、そして、恋のライバルである深町に対する誠実さ、ホントに良い奴としか云いようが無い。


第4話に、芳山がプールサイドに寝転び、星を見る場面がある。夏の大三角形のベガとアルタイルは七夕の織姫と彦星でもあるし、芳山と深町が初めて出会ったのは七夕の日だった。とすると、吾朗は白鳥座のデネブということか。

織姫のベガは、天頂付近にあって、明るいのでよく目立つ。夏の大三角形は、不等辺三角形で、実は、ベガに近いのは、アルタイルではなくデネブの方だってことを思い出した。デネブが、二人を近くで見ているような立ち位置にあるのも面白い。


2.チャラさに隠された深町翔平の純心

原作の深町のイメージは、冷静で神秘的な雰囲気を持つちょっと大人びた高校生ってところだろうか。それから比べると、時かけ2016の「菊池風磨」君演じる「深町翔平」は、真逆で違和感ありまくりだ。旧作のファンは、これだけでリタイアしてしまうだろう。このドラマのキャラ設定は、アニメ版に近いそうだが、アニメは原作から20年後の話だから深町では無い。

原作や旧作でも、深町は記憶操作をするが、それは自分がこの世界で生活するために必要だからである。ところが、2016の深町は、芳山の関心を引くために記憶を操作したかのような描写がある。幼い頃、犬に追いかけられた芳山を吾朗が助けたことがあった。深町は、それを自分が助けたことにすり替えるのだが、旧作では、深町が幼馴染みに成りすます過程で自然と記憶が変わったような描写だったはずだ。2016では、何で、あんな酷いやり方で記憶を乗っ取ったことにしたのであろう。あれでは、視聴者は誰も(菊池風磨担以外)彼を支持しなくなってしまう。対する吾朗が誠実な男として描かれている分、余計に彼が卑怯な男に思えてしまうのだ。

とは云え、未来は恋が存在しない世界という設定は、それなりに面白い。時かけ2016は、恋を知らない未来人が現代にやってきた物語だ。そういう視点でドラマを見ていると、深町という男の印象も変わってくる。

深町は、吾朗が芳山に告白しようとしている話を聞いて、恋愛に興味を持ち、肉食男子入門というへんてこりんな指南書で学び始めた。彼には全てが新鮮に思えたであろう。夏祭りで事故に遭い、芳山にピンチを助けられたことで(指南書の通りに)芳山への恋が芽生える。

彼の行動が、一途に突っ走っているのは、純粋な心の持ち主だからであり、非常識に思える行為は、彼が恋愛に関して無垢だからだ。ドラマ中にも、そういうシーンがちょいちょい挟み込まれているのだが、それが視聴者に伝わらないのは、彼のチャラ男設定にある。このキャラクター設定のために、彼があざとい方法で、吾朗から芳山を横取りしたかの印象を与えてしまうのだ。

そもそも、第1話で芳山は吾朗の告白を受けなかったのだから、深町が芳山に告白することは、裏切りでもなんでもない。ところが、第3話での公開プロポーズでは、ジャーニーズファン以外の視聴者の多くを敵に回してしまった。これは、王子様役としては失格。明らかなミスキャストであろう。

深町と吾朗の対照的なキャラ設定は、面白いわけだから、そのまま配役を交換したら、しっくりきたように思えてならない・・・まあ、それだと当たり前すぎるけど。


3.黒島のウザ可愛いキャラの原点、芳山未羽

ヒロイン芳山未羽のキャラは天真爛漫の一言に尽きる。これも旧作とは真逆の設定だ。リアルな黒島結菜さんは、物静かで大人しい女性とのことだが、最近のドラマでは元気な女の子を演じることが多い。で、その原点が、この芳山未羽にあるように思う。

芳山は、とにかくキャンキャン怒っているシーンが多い。「怒」というのは人間の醜い部分だけど、これを嫌味無く演じられるのが、女優「黒島結菜」の良さだ。(だから、同じような役ばかり回ってくるのだろうけど)火事を予言したことから、放火の疑いでしょっ引かれ、取り調べの刑事に臆することなく、タイムリープできると言い張るメンタルの強さも、小気味よい。

芳山が振り回しているNikon F3は、シャッターを押す度に手動でフィルムを巻き上げるマニュアルカメラだが、そんな動作も自然にできてるのも可愛・格好良い。ファインダー内の表示が、何を撮るときも絞り5.6でシャッタースピード250分の1なんだけど、まあ、そこはよしとしよう。手動でピントを合わせている描写があれば完璧だったのに。

写真が好きで、写真を学べる東京の大学に進学したいと語る設定は、リアルな黒島結菜さんそのものである。彼女が、日テレ新土曜ドラマの主演に抜擢された時、これを時期尚早と見る人も多かったから、代役だったのではという噂もあった。しかし、役のハマリ具合を見ると、芳山未羽は、彼女のために用意された役柄に思えてならない。

高校の夏服は、シンプルすぎるポロシャツだが、ショートカットで、黒い大きな瞳がクルクル動く黒島が着るとホントに可愛い。ただの白いポロシャツがこんなに似合う女優なんて、そう多くはないだろう。


幼馴染みの吾朗には、友情しか感じない芳山だが、コンビニのチャラい大学生にうつつを抜かしたりしているから、男性に興味が無いわけではないらしい。

それにしても、吾朗からの告白の受け流し方は酷い。時間を戻された吾朗には「告白したかったけど邪魔が入ってできなかった」という記憶が残るだけだが、ドラマを見ている側からすると、告白してはタイムリープして無かったことにされるシーンが何度も続くわけだから、竹内涼真君がマジで可哀想になってきて、見ているのがツラかった。で、挙げ句の果てに、目の前でキスシーンを見せられるのだから、たまったものではない。

芳山は、なぜここまで吾朗を邪険にするのだろう。やはり、この二人は、一度離れるべきである。芳山だって、他の男と付き合ってみれば、吾朗の良さも分かろうと云うものだ。

物語の最終回、芳山は、深町を未来に返すために、7月7日の理科準備室にタイムリープした。そこで全てをリセットして物語は終わる。深町との初恋は想い出だけになった。

リセットされたということは、失恋を乗り越えた吾朗の成長もなくなってしまったということだ。やり直される、深町のいない夏。吾朗は、七夕祭りで芳山に告白するだろう。芳山には、今度はきちんと受け止め、自分の気持ちをちゃんと吾朗に伝えて欲しい。

今から逃げない・・・この夏、一番成長したのは「芳山未羽」だろうから。



お終いは、第3話のダイジェストとエンディングテーマ「恋を知らない君へ」で。