2019年2月17日日曜日

「紀平梨花」2018全日本選手権エキシビション ~表現力重視のEXでジャンプを語る~

フィギュアスケートの選手にとって、上位入賞者によるエキシビションに出場することは、名誉なこととされている。ファンにとっても、エキシビションは、男女両方のスター選手の演技を一度に見ることができるから、競技よりも先にチケットが売り切れるらしい。審判員も見ているそうだからアピールの場とも云えるが、やっぱり、ジャンプとかで転倒すると格好悪いから、選手は自信を持っている技で構成することが多いようだ。

紀平選手のエキシビションは、昨シーズンや今シーズンのいくつかの演技動画がアップされている。競技みたいにギリギリのところで演技するものでは無いはずだが、改めて見ると、演技内容に思いの外バラツキがあるのが面白い。アイスショーで、止せば良いのに3アクセルにチャレンジして、大コケするのも彼女らしいと云える。

で、僕的にこれがベストかなって思ったのが、昨年末の全日本選手権での演技である。ただし、難点は、実況と解説の無良さんの声が入っていること。内容も解説者というよりもファン目線に近い。エキシビションは、演技中は、おしゃべり無しというのが、放送のルールだと思っていたのだが、まあ、あまりの演技の素晴らしさに黙っていられなくなった、ということにしておこう。


ジャンプについての解説がないので、代わりに述べさせていただくと、

①3S ②2A ③3Lz(タノ)

となっていて、たぶん、これが彼女の得意種目なんだろうと思う。

最初は、3サルコウである。サルコウは、高得点のジャンプではないから、SPでは跳ばないし、フリーでも1回しか跳ばない。ただ、その1回を最後の最後に入れているところがポイントである。

選手は演技が進むにつれて疲労してくるから、当然ジャンプの成功率も下がる。だから、難易度の高いジャンプを最初に実施する傾向がある。今シーズン、彼女のフリーの演技が、スピンやステップで無く、ジャンプで終わるというのもスゴイことだが、その最終ジャンプにサルコウを選択してるってことは、彼女がサルコウに絶対の自信を持っていることの表れと云える。

紀平選手は、来シーズンに向けて、4回転の練習をしているようだが、そのジャンプもサルコウである。彼女にとって、両足踏み切りに近いサルコウは、もっとも跳び易いジャンプなのだろう。

2つめは、2アクセルである。まあ、普段から3アクセルの練習ばかりしているだろうから、それよりも1回転少ない2アクセルは余裕なのだろう。アクセルジャンプは、前向きに跳び上がるので飛距離もあって、見た目も豪快だ。2アクセルでも十分に見応えがある。

さらに、この演技ではジャンプからそのままステップに入っているのだが、シーズン当初は、こういう構成では無かったから、こんなところからも彼女の成長をうかがい知ることができる。

3つめは、3ルッツである。しかも両手を上げてのタノ・ジャンプである。解説の無良さんが、思わず「安定感バツグン」と漏らしてしまったのも理解できる。これは試合用のガチなジャンプで、エキシビションの3番目に跳ぶようなものではない。まあ、それだけこの日は絶好調だったのだろう。

ルッツは、アクセルの次に高得点のジャンプである。ルッツは、左足のアウトサイドエッジで踏み切るという特殊なジャンプであるから。苦手としている選手も多い。坂本花織選手もあまり得意ではないらしく、フリーでも1回しか跳ばないし、四大陸ではエッジエラーで減点もされている。(そのかわり彼女は素晴らしいループ・ジャンプを持っている)

フィギュアスケートは、反時計回りに滑りながら演技をするものだから、その流れに逆らって左のアウトサイドエッジで踏み切るルッツは難しいとされている。ただ、他のジャンプの回転軸がリンクの中心側に傾くのに対して、ルッツは、ほぼ垂直に跳び上がるから、とても見栄えのするジャンプである。

紀平選手の魅力と強みは、この美しいルッツ・ジャンプを跳べるところにある。よく紀平選手は浅田真央選手を越えたかどうかということが話題になる。実績という点では遥かに及ばないだろうが、技術的には越えたと云えなくもない。それは、このルッツがあるからである。
解説書を見ると、ルッツは、同じ左足踏み切りで、インサイドエッジを使うフリップと見分けが難しいとされているが、彼女のルッツは極めて明確である。滑走する左足が外側にクッと開いてシャッて跳んでくところなど、惚れ惚れしてしまう。

実は、先日の四大陸選手権のエキシビションでは、この3番目のジャンプをサルコウと入れ替えていて、ルッツを跳んでいない。エキシビションとは云え、得意なルッツを回避して、安全なサルコウを2回跳んだということからも、四大陸での彼女の状態が、ギリギリのものだったことが予想できる。

左耳にイヤホンをするときの素振りや、フリーの演技前に濱田コーチが手を握ろうとしたときに、反射的に左手を引っ込めて、「あっ、痛いよね。ごめん。」なんてシーンを見ると、本当に痛かったんだな~って思う。


参考までに、昨シーズンのエキシビションを貼り付けさせていただいて、お終いにしようと思う。

2017年のジュニアグランプリファイナル(名古屋大会)での演技である。この大会で紀平選手は4位となっている。この時は、ロシア勢が表彰台を独占、シニアの部でも1,2位がロシア勢だったから、この先10年位は、ロシアの天下が続くんだろうなって雰囲気だったようだ。


ジャンプの構成は、①3S ②3F ③3Lzだと思う。同じプログラムでも、アジアカップでは2アクセルを跳んだりしているから、エキシビションで入れてくるジャンプって、その時、その時で変えてくるものらしい。

1年以上前の演技であるから、今と比べてしまうと、表現力もそれなりだし、3フリップが2回転になってしまうミスもあるのだが、メリハリの効いた動きとスピード感は見ている者に清々しさを感じさせる。
シニアになった彼女に、もう一度演じてもらいたい。そんなプログラムである。

2019年2月16日土曜日

丸山純奈「どこから来たの?」にのせて、静岡県三島市をPRする

ちょっと前までだったら信じられないことだが、三島の街を観光客らしい人たちが歩いているのを見かけるようになった。三島は、古には伊豆国の国府が置かれ、東海道の宿場町として栄え、新幹線も停車する町なのだが、どこにでもあるような地方都市の1つにすぎないし、商店街もシャッターが目立ち始めていたから、不思議な光景である。

いつの間にか、三島市は「富士山とせせらぎの街」ということになっていたらしい。で、せっかくなので、今回は、いくつかある観光スポット(?)の1つで、僕の散歩道にもなっている「源兵衛川」を取り上げようと思う。

「源兵衛川」は、三島駅前にある「楽寿園」の湧水池「小浜池」を水源にして、市街地を流れる1.5kmの灌漑用水である。


写真を撮ったのは僕です。

三島は、富士山起源の三島溶岩流の末端に位置する街である。富士山に降った大量の雪と雨は、地下水脈となって溶岩流の末端である三島の街の至る所で湧水となって地表に出てくる。湧き出てくる場所は様々で、ガサゴソと積み重なった溶岩の下であったり、昔々の地震でできた小さな崖であったり、或いは民家の石垣の隙間であったりする。

小浜池は、三島では最も大きい(大きかった)湧水池だ。かつては小松宮の別邸があったそうだが、今は「楽寿園」という市立公園になっている。僕が子どもの頃は、楽寿園の中には遊園地や動物園があって、メリーゴーランドとか、お猿の列車とか、ジェットコースター以外のアトラクションは一通り揃っていたし、動物園には、ゾウやキリンやペンギンや、一日中動かないオオサンショウウオなんかがいて、近隣の学校が遠足に訪れるなど、賑やかなところであった。

しかし、それらは、あくまでも付け足しであって、楽寿園は小浜池であり、小浜池こそが楽寿園であった。その小浜池の水位は、昭和の中頃から、徐々に低下し始める。やがて、降水量の少ない時期には地下水位がマイナスとなり、自然湧水が止まるようになり、池が干上がってしまう期間も年々長くなっていった。

小浜池の水位の低下により、源兵衛川も流れの無い日が多くなった。水源を失った源兵衛川は、市の北側にある東レ三島工場から、地下に埋設された導管によって供給される使用済みの冷却水によって、かろうじてその流れを維持していた。しかし、その供給量は必要最低限のものであり、水の流れの乏しい川は、急速に汚染化が進み、源兵衛川は悪臭漂うドブ川へと変っていった。

そんな源兵衛川が再生できたのは、NPO法人「グラウンドワーク三島」の活動と、東レ三島工場の協力によるものだそうだ。

東レは、市や市民団体からの要望を受け入れて、冷却水の源兵衛川への供給量を増やすことになった。東レで使用している工業用水は、やはり富士山からの湧水である柿田川の工業用水だ。東レでは、工場で使用する水を製品の洗浄に使うものと、機械の冷却に使うものとに分けていて、その冷却水の中でもあまり使用していない綺麗で冷たい水を、源兵衛川に供給しているのだそうだ。放流のための施設の維持費や電気代は、年間数千万円にも上るという。

地下水位の低下は、工場群の地下水の汲み上げが関係しているのは確かだが、それは原因の1つであって、上流部の宅地化や市街地化などとの複合的なものだとされている。だから、東レが全責任を取る必要は全く無いのだが、東レはユニクロのヒートテックの素材を生産するなどしていて、業績は好調だそうだから、やってくれているのだろう。

で、そんな源兵衛川だが、昨年は、夏から秋にかけて、台風の影響などで地下水位が上昇し、自然湧水が大復活、川の水位が上昇して、遊歩道が水没してしまうという珍事が起きた。年寄りたちが、昔は川で泳いだものだと云ってたが、昨年の夏は本当に泳げたのである。
ただ、冬に入ってからは、水位は下がり、今は東レからの排水によって、流れが維持されている状況である。

実は、源兵衛川を流れる水が、東レ三島工場から供給されていることを、観光客に対する裏切り行為であるかのような意見を目にすることがある。確かに、川の水に足を入れて「冷たーい!」って云ったり、「透き通っていて綺麗!」とか云っている声を聞くと、なんとも微妙な気持ちにはなる。

ただ、これは内緒にしているわけではなくって、広く公開されていることだし、そもそも源兵衛川は、室町時代に「源兵衛」さんが開いた灌漑用水(人工の川)なわけだから、そこを流れている水が「東レ」三島工場で使われた冷却水(工場排水)であったところで、どういうものでも無い。
市街地のど真ん中を流れる川に、三島梅花藻が育ち、ホトケドジョウが住み、蛍が飛び交い、カワセミが訪れるのである。そして、それが、多くの人々の無償の努力によって、成り立っていることに価値があるのだ。

とは云っても、源兵衛川が、がっかり観光地であることは保証できる。まあ、わざわざ訪れるような場所ではないが、川沿いには、刀剣女子の聖地「佐野美術館」や、伏流水で生き締めした鰻が味わえる老舗の鰻屋、車で数分のところには、炭焼きレストラン「さわやか」もあるので、何かのついでならば、お勧めである。


最後に、東レからの排水が混じっているのは源兵衛川の話であり、市内にある他の湧水池や川は、ちゃんとした自然湧水であるので誤解なきようw

2019年2月12日火曜日

丸山純奈が米津玄師の「Lemon」を歌ったらしい

丸山純奈さんのライブは、いつの頃からか動画撮影禁止となったので、YouTubeに新しいテイクが上がらなくなった。動画が無いと云うことは、弊ブログのコンセプトである「ライブの魅力を手書きポップの感覚で紹介する」ことができないので、大変困っている。
だが、写真はOKだそうだし、録音も禁止とはなっていない。だから、静止画と会場で録った音声があれば、ライブの雰囲気を紹介することは可能なのだが、うかつに「録音しても良いですか?」などと質問して、公式に禁止されてしまったら、とんだヤブ蛇であるので怖くて聞けない。

まあ、愚痴はこれくらいにしておこう。今回は、Twitter動画ではあるが、先日のライブで歌ったという、米津玄師氏の「Lemon」のカバーテイクが公開されたのだから。

御本家の動画は、ついに視聴数が3億回を越えようとしている、っていうかこの記事を書いている間に越えたかもしれない。だいたい、タダで聴ける動画が3億回も回っていたら、ダウンロードしたり、CD買ったりする奴なんかいないだろうって思うんだが、そうならないのが、今の世の中である。そもそも・・・おっと、また愚痴ってしまうところだった。


やはり、途中で切れるのは精神安定上よろしくない。今後は、Twitter動画用2分間アレンジバージョンとかが登場してくれることを期待しよう。

改めて思うのは、これはすーちゃんも云っていることであるが、この楽曲の音域の広さである。米津玄師氏は、かつて、「ハチ」の名義でボカロPとして活動していたのだが、自分でこんなに歌えるのに、なんでボーカロイドなどに手を出したのか理解に苦しむ。当時、流行っていたからと云ってしまえばそれまでだが、きっと深遠な理由があるのだろう。

で、すーちゃんの歌唱であるが、キーは自分が出せる一番低い音に合わせたのだろうが、最高音まで地声で張り上げられるのはさすがである。逆か。上を地声で張り上げられるギリギリのところに設定しておいて、それに対応する最低音がしっかり出せてるところが凄いのだ。

ついこの間までのテイクだと、低音は厳しいかなと思ってしまう場面があったのだが、確実に成長しているのは、嬉しい限りである。歌手の世界では、高音が出せる男と、低音が出せる女こそが無敵だからだ。

そして、特筆すべきは、Cメロの部分であろう。時間制限のあるTwitter動画で、この部分を選んで貼り付けたのは、このCメロを聴いて欲しかったからに違いない。

この歌は、渇ききった無機質のような世界観が特徴で、米津氏の歌唱も正にその通りなのだが、歌詞の内容は、それとは真逆の昭和の演歌調であるところが面白い。多分、そのギャップが、彼と、この歌の魅力なのだろう。

米津氏のそれと比べると、彼女の歌唱は、切なく重く湿ぼったい。そして、血の通った人肌の温もりを感じる。これが純奈節である。純奈節である限り、彼女の歌唱はモノマネにはならない。実は、歌詞の世界観からすれば、こちらの歌唱の方が自然だと云えなくも無い。

もちろん、米津氏のファンからすれば、こんなの「Lemon」じゃないとなるだろうが、虫の音と鳥のさえずりのように、質的に異なるわけだから、どちらが好みかということはあっても、どちらが良いかという比較は意味を成さないのだ。
                         
彼女は、このステージから一週間後のライブでは、「Lemon」は歌わなかったらしい。これだけ完成度の高いカバーを、たったの1回しか披露しないと云うのだろうか。ファンからすれば勿体ない話だが、彼女にしてみれば、これも数ある挑戦曲の1つに過ぎないのだろう。

米津玄師氏が、このテイクの存在を知ったところで、どうなるものでも無いのは分かっている。だが、それでも知ってもらいたい。そんな気分である。

2019年2月11日月曜日

「紀平梨花」2019四大陸選手権  ~この逆転劇、いーやスポーツ漫画の世界~

昨日は、フィギュアスケート四大陸選手権の女子フリーがありました。

ここでの四大陸というのは、ヨーロッパを除いた残り全部という意味です。アメリカは南北2つだろうとか、南極はどうしたとか、そもそもユーラシア大陸なんだから、アジアとヨーロッパは1つだ、と云う意見もありましょうが、大航海時代のヨーロッパの世界観に基づいているのでしかたありません。フィギュア界を二つに分けた場合、「ヨーロッパ選手権」と「その他の国々選手権」となるのは、フィギュアスケートはヨーロッパが本場なのだという、彼らのプライドが感じられる編成であります。

冬季オリンピックを除くと、選手にとって最も大切な大会は、3月に開催される世界選手権で、ここで優勝した選手が、そのシーズンの世界チャンピオンとして認識されます。ヨーロッパ選手権や四大陸は、その1ランク下の前哨戦という扱いですから、ベテランになると世界選手権に集中するために出場しないという選手も多いですし、オリンピック・イヤーだと補欠組の大会みたいになってしまいます。でも、ちゃんとした国際大会であることには違いありません。

紀平選手は今シーズンがシニア参戦1年目ですので、この大会は初出場ということになります。実は、ジュニア時代の彼女は、高いポテンシャルを持ちながら、肝心なところでコケてましたから、此手の世界大会のタイトルって一度も取ったことがなかったんですよね。

1月のコロラド合宿では、フリーの振り付けを手直しするなど、充実した練習ができていたと伝えられていました。新調した靴が、わずか一ヶ月で痛んでしまったそうですから、スゴイ練習量だったのだと思います。

ところが、火曜日、練習中に左手の薬指を負傷(亜脱臼)したとのニュースが飛び込んできてきました。7時のNHKニュースでもやってました。これは、昨年のジュニア選手権の前と同じパターンです。(あの時は指の骨折で、結果8位と惨敗)手の指ならばスケートとは関係ないだろうなんて思ってはいけません。梨花ちゃんは繊細で、アクシデントには弱いんです。


心配されたショートプログラムでは、冒頭の3アクセルの回転が抜けてしまって、1アクセルとなりました。SPの規定では、2アクセルか3アクセルを跳ぶことに決まってますから、規定違反で0点となります。フリーだと1アクセルの基礎点として、1点チョットもらえるんですけどね。

でも、今回は、この後で崩れなかったんですよね。3本のジャンプのうち1本が0点になったのにも関わらず、首位と5点差に留まったのが、彼女の成長と言えます。

それにしても、絶好調でありながら、試合直前に怪我をして一転大ピンチ。SPでは、5位となってしまったものの、フリーでは、圧巻の演技で逆転優勝。って完全にスポーツ漫画の世界ですね。

今回も「歩くだけで(指が)痛い」とか云って周囲を心配させてましたし、他にも、靴紐が思うように結べないとか、リンクの形状がどうとか、氷の質がどうとか、試合時間がどうとか、指が曲げられないから空気抵抗が大きくなるとか、あーだ、こーだと「梨花ちゃん節」全開だったようです。
それでいて、試合後のインタビューでは、「演技に集中できました」って云うんですから、不思議な子です。

人間ってのは、処理できないくらいの不安要素を抱えこんでしまうと自己崩壊してしまうので、一般的には「大丈夫だ。きっとできる。」みたいな成功体験をイメージさせて、メンタル面をケアすることが重要だとされています。(大坂なおみ選手の例が有名ですね)

ところが彼女の場合は、不安要素に対する解決策を(自らが)追求することによって、精神面の安定を図っているように思います。ですから、解決策が必ずしも当を得ている必要は無くって、本人が納得できれば、それでOKなわけです。インタビュー記事などを読んでいると、あーだ、こーだ言い訳ばかりしてないで練習しろっ、って感じになるんですけど、どうやら、これが彼女のやり方のようです。

今回の会場は、アメリカ・アナハイムのアイスホッケー場だそうです。天井からつるされている電光掲示板がいかにもNHLですね。試合は、現地時間の夜10時に行われていたんですけど、日本時間では、午後3時。で、テレビ放送は午後7時です。テレビ放送前にネタバレにならないように、7時まで一切の情報を遮断していました。午後5時のニュースで、フィギュアスケート取り上げた時には、慌ててテレビを消しました。ところが、6時頃になって、うかつにも、パソコンでYahooニュースを開いちゃったんです。(悲)

休日なんですから、フジテレビさんも午後3時から生放送してくれれば良かったのにって思います。

でも、フジテレビさん。今回は、ちゃんと公式動画を配信してくれてます。フジテレビというとYouTubeを敵視していた感がありましたけど、時代は変ったんですね。1日で視聴回数20万を越えてしまいましたよ。


ジャンプの構成です。
①3A ②2A+3T ③3Lo ④3Lz+3T ⑤3F ⑥3Lz+2T+2Lo ⑦3S
冒頭の3アクセルで、SPのビハインドを埋めてしまえば、後は普通にやるだけで勝てるだろう、という構成ですね。

実は、アクセルジャンプの練習のし過ぎで、左足の靴が壊れてしまって、サブシューズを履いているんだそうです。ですから、よーく見ると左右のブレードの色が、金と銀で違ってるんですよね。でも、これはこれで格好良いかもです。
あと、熊の縫いぐるみ、デカ過ぎです。投げ込んだ人の腕力も凄いけど、どうやって会場まで持ってきたんでしょうか、って云うか、よくセキュリティチェックに引っかからなかったものです。男子の田中刑事君にも色違いの熊が投げ込まれたそうで、ファンの意図が分かりません。

結果だけを見れば、この大会でライバルと言えたのは、坂本花織選手くらいなもの。普通にやれば圧勝のパターンだったわけです。梨花ちゃんの後に演技した上位陣が総崩れになってしまう、という気の毒な事態が起きたのも、残りの3人は、シーズンベストを大きく越えなければ優勝できなかったわけで、気にするなと云う方が無理な話です。

今回は、トリプル・アクセルを1回しか跳べなかったのにも関わらず、この得点ですからね。SPなんて、最初っから2アクセルにすれば良いわけだし、勝つことだけを考えれば、フリーでも封印した方が良いくらいです。でも、そういうことには、ならないんでしょう。

次は、今月末にオランダで開かれるチャレンジ・カップですけど、世界選手権を控えていますから、怪我の状況によっては、不参加になる可能性もあります。


男子の宇野昌磨選手も気迫の演技で逆転優勝を果たしましたし、3月の世界選手権が待ち遠しいです。会場は、埼玉スーパーアリーナ。当然、リアルタイムでテレビ放送するでしょうから、ネタバレ気にせず、ハラハラできそうです。

2019年2月4日月曜日

「紀平梨花」2018GPファイナル・フリー ~防衛的悲観論者のリカバリー能力~

シニア参戦1年目の今シーズン、紀平梨花選手は、グランプリシリーズで2戦2勝して、ファイナルへと進みます。グランプリファイナルのショートプログラムでは、珍しくノーミスの演技を披露し、今季世界最高得点をたたき出しました。

何度見ても良いですね。海外メディアから、まるでディズニー映画だと評された演技。以前、ロシア語版の動画を紹介させていただきましたが、消えてしまいましたのでこちらを。


今シーズンに限らず、紀平選手は、SPで失敗して、フリーで逆転というパターンばかりだったんですが、この大会では、SP1位ということで、フリーでは最終滑走での登場になりました。


最初のトリプルアクセルのコンビネーションジャンプを失敗して、手をついてしまいましたね。3アクセルは、ダウングレード判定で、コンビネーションにもできませんでした。基礎点で12.20、GOEも入れれば15点近く稼ぐジャンプが、ダウングレードで基礎点3.3、GOEー1.65で、わずか1.65点しかもらえませんでした。いきなりの大ピンチです。

フィギュアスケートというのは、最も難易度の高い技を、体力のある最初の方に実施するというのが定石となっています。ですから、最初に必殺技を出してしまうという、ちょっと変ったスポーツなんですよね。また、最も難易度が高いということは、失敗する可能性も高くなってるわけで、最初のつまずきから如何に立ち直れるのかを競い合うという、やっぱり不思議なスポーツでもあります。

で、昨シーズンまでの梨花ちゃんでしたら、この後は、ボロボロになって惨敗というパターンだったんですけど、今回は少し違いました。シニアになって大崩れしなくなったのが、今季活躍できている最大の要因に思います。

改めて、紀平選手の今シーズンのジャンプ構成です。

①3A+3T ②3A ③3Lo ④3Lz+2T ⑤3F ⑥3Lz+2T+2Lo ⑦3S

最初のジャンプを失敗して連続ジャンプにできませんでしたから、2番目の単独の3アクセルに2トゥループを付けて連続ジャンプにしてリカバリーしました。流れが悪かったために3トゥループにはなりませんでしたけど、3アクセル+2トゥループというのは、かつて、浅田真央選手が必殺技としていたジャンプですから、リカバリーで跳んでしまうこと自体、凄いことです。

彼女の談によると、最初の3アクセルからの連続ジャンプでは、必ずしも3トゥループを付けようとは考えていないそうで、流れによっては、2トゥループでも構わないという感覚なんだそうです。柔軟性のある構成なんですね。3トゥループは、どこのセカンドジャンプにも付けられる、という自信があればこその構成に思います。

で、付けられなかった3トゥループを4番目の連続ジャンプ3Lz+2Tの2トゥループと入れ替えることで、リカバリーしてきました。

3Lz+3Tを跳んだことについては、解説者や評論家さんから高評価を得ているようです。実は、3Lz+3Tというのは、かつて、キム・ヨナ選手が必殺技としていたジャンプでして、演技中盤にリカバリーとして簡単に跳べるようなジャンプではないんですよね。

この2つのリカバリーで、3アクセルの失敗で失った得点の、半分近くは回復できていると思います。

では、もしもこの時に、セカンドジャンプが2トゥループになってしまい、3トゥループを付けられなかったとしたら、どうしたでしょうか。

その場合、影響があるのは、6番目の3Lz+2T+2Loですね。2トゥループを3回跳ぶことになり、規定違反になってしまいます。
で、これは僕の予想なんですけど、3連続ジャンプを3Lz+1Eu+2Sに変更するのではないかと思います。

実は、全日本選手権では、ここの3連続ジャンプで最初のルッツをステップアウトしてしまいバランスを崩すんですけど、その時に、(とっさの判断で)3Lz+1Eu+2Sに変更しています。このシングル・オイラーを挟んだ3連続ジャンプというのは、ジュニア時代からシニアの今季まで、試合では全く見せてなかったジャンプです。全くの想定外の技でして、跳んだ瞬間にジャンプ名を言ってしまう、解説の荒川静香さんでさえ、一瞬パニックになって、言葉が出なかったくらいです。
しかし、フィギュアースケートは、体操競技と同じで、練習で出来ないことは、試合では絶対に出来ないスポーツですから、彼女がこの技を普段から練習していたのは確かです。

では、セカンドジャンプそのものが付けられなくって、単独の3ルッツになってしまったらどうしたでしょうか。おそらく、5番目の3フリップを連続ジャンプにしてくると思います。3フリップ+3トゥループは、ショートプログラムでも跳んでいるジャンプですので、問題なくできると思います。

こんなふうに、フィギュアースケートというのは、失敗することを前提として、此処で失敗したら次はこうする。これで失敗したら次はこうするというように、想定されるありとあらゆる場面に対して準備をする競技のようです。

ところが、宇野昌磨選手がインタビューで答えていたのですが、彼は試合中にリカバリーをしようとしても上手くいかないので、敢えて連続ジャンプを後半に集め、跳べなければそれでお終いという、ガチガチの構成にしているそうなんです。無理にリカバリーしようとしても、余計失敗して墓穴を掘ってしまうってことですね。
確かに、リカバリーの練習をするのであれば、その時間を使って、プログラムを100%完遂できるように取り組んだ方が良いというのも、正しい選択の1つではあります。

どうやら、全ての選手がリカバリーを考えているわけでは無いみたいです。リカバリーするというのは、考えている以上に難しいことなんですね。
まあ、それを出来るようになったから、今季の梨花ちゃんの躍進があるわけで、そのためには、技術力も体力も精神力も必要なわけで、簡単に云うと強くなったってことだと思います。

梨花ちゃんがトリプルアクセルに取り組んで、跳べるようになるまでに1年、試合で使えるようになるまでに更に1年、それから2年経った今でも、安定して跳べているとは言えません。

成功すれば圧勝できるが、失敗すれば入賞すらできないという状況が続くなかで、安定した成績を残すためには、リカバリーを考えざるをえなかったのでしょう。また、そうすることで、試合に対するメンタルコントロールにつなげていったのだと思います。
何より、ありとあらゆる事態を想定して対策を講ずるという戦略が、防衛的悲観論者と称される、彼女の性分に合っていたのでしょう。

この演技でのリカバリーによって得られる得点は、5点足らずです。しかし、彼女にとってのリカバリーは、ダメージコントロールと云う側面が大きく、失敗した時の備えを持っているという安心感が、メンタル面の支えとなり、今季の大躍進へとつながっているのだと思います。

2019年2月3日日曜日

「嵐」、活動休止報道に再便乗して、ボカロカバーをもう少し

 嵐の活動休止発表から一週間。メディアもいろいろとネタを掘り出してきますけど、世間では、この事態を少しずつ冷静に受け止め始めたように思います。

よく考えてみれば、休止は2年も先の話だし、安室奈美恵さんと違って、芸能界から引退するわけでもありませんからね。動揺して損した感がちょびっと出てきました。

では、さっそく、「夢光P」さんの「One Love」からいきましょうか。ソロとユニゾンやハモりの使い分けとか、歌割りも良く考えられています。5体のボーカロイドの個性もちゃんと出ているし、聴けば聴くほど神カバーに思います。


そう云えば、記者会見での「無責任」質問が批判されていましたけど、芸能記者なんて爪あとを残してナンボの仕事ですからね。それに、大野君の脱退ではなく、なぜ活動休止なんだろうって思うのは素朴な疑問だし、彼らの経済効果とその休止に伴う影響を考えれば、無責任だと云いたくなる気持ちも理解できます。KAT-TUNなんて、3人抜けてK-UNになっても解散してませんでしょ。

続けて「hartfield2011」さんの作品をいくつか。まずは「Lotus」。


夢光Pさんの作品は違和感の無さがスゴイところですけど、こちらは、嵐の歌唱に全く寄せることなく、ボーカロイドの特性を前面に出したカバーが特徴ですね。

桜井君が言うところでは、残り2年間を全力で走り抜けることが、責任を果たすことなんだそうです。無責任批判に対する神対応として、ネットで絶賛されてました。嵐の好感度はさらにアップしてますから、オールOKです。

大野君は、大好きな釣りをしていても、明日は「嵐」に戻ると思うのが辛かったそうです。こんな時、昭和だったら「頑張れ、頑張れ」って云うばかりでしたけど、平成になって、辛いときは頑張らなくって良いんだよって感じになって、そういう発想って昭和には無かったように思います。
平成と云うのは、何より「個」を尊重してきたし、周りもそれを認めてきた時代なんだと思います。だから、何となく辞めたいからヤメて、5人じゃ嵐じゃ無くなるから終わりにすると云われても、ファンは、それを理解する義務があるのでしょう。

それにしても、サザエさん症候群であることを、こんなに素直に告白できるタレントさんって、あまり記憶にありません。
だから、ファンからの、「大野君の夏休みを応援しよう」という姿勢は、決して偽善的なものでは無くって、平成と云う時代が培ってきた、1つの在り方に思います。

次のボーカロイドカバーは、かなりの高評価なんですよ。ボーカロイドの無機質な歌唱が、ドラマのイメージにピッタリなんだそうです。僕的には、もうちょっとキーを下げていただきたいところなんですけどね。


この「truth」は、大野君主演ドラマの主題歌でした。僕は、ドラマはあまり見ない方なんですが、これは見ていましたよ。部屋の壁にターゲットの写真を貼ったりしてましたね。

嵐の中では一番地味な印象の大野君でしたが、歌手としても、俳優としても、そしてアーティストとしても、一番才能があったのが大野君だったのかもしれません。ただ、一番アイドルに向いていなかったのも大野君だったということでしょうか。

ただ、アイドルというのが、憧れの存在という意味だとすれば、大野君が送ろうとしている、「全力で走り続けて、やがて自由人になる」という人生は、世の男どもの憧れでもあるわけです。

こちらは本物、全然似てませんけど、これはこれで良いです、ってスミマセン、逆でしたね。


ジャニーズの動画なんて、YouTubeに在るわけ無いって思い込んでたんですけど、思っていた以上にたくさんあって、ビックリしました。ジャニーズといえども、ムキになって動画を削除するような時代では無くなったんでしょうか。それとも、嵐ならではの余裕なんでしょうか。

これから、東京オリンピックにむけて世間が盛り上がっていく中で、嵐の活躍の場は確実に広がっていくだろうし、残り2回の紅白歌合戦と、新国立競技場でのさよならライブにむけて、ロングスパートをかけていくのでしょう。嵐の活躍に今後も目が離せません、ということで、お終いは、しっとりと「ふるさと」にしましょうか。