2020年11月27日金曜日

「白いページの中に」柴田まゆみ

 「白いページの中に」(作詞・作曲:柴田まゆみ)は、1978年、第15回ポピュラーソングコンテストつま恋本選会の入賞曲です。

40年以上も前の曲なんですけど、今でも時々、地元のコミニティラジオで流れてきます。で、先日も流れてきて、カバー曲が、現在公開中の映画「ホテル・ローヤル」の主題歌になっているって紹介されたんですよね。今頃!って思ってしまいました。びっくりです。(ジャケットの写真にも)

この作品は、柴田さんが、高校のフォークソング部に所属していた時に作った曲が元になっているそうです。ポプコンの1978年春大会で入賞したのですが、その時の優秀曲賞が「佐野元春」さんで、同じ入賞曲に長渕剛さんの「巡恋歌」があったそうですから、凄いレベルの大会だったようです。

柴田さんは、この曲でデビューしましたが、シングルを一枚リリースしただけで、音楽活動を休止してしまいます。ポプコンは想い出作りで出場しただけで、元々プロになるつもりも無かったそうです。まあ、一発屋ってことですけど、1打数1安打で1ホームランですからね。ボカロ曲にもありますけど、アマチュアが繰り出す渾身の1曲ってのは、時に、名曲が飛び出てくるようです。

この曲で印象的なのは、サビ前の「長い長い坂道を、今、上ってゆく」のところ。ここからサビの盛り上げ方が秀逸で、正にコンクール向けの楽曲に思います。この曲が、どハマリする世代ってのは、アラウンド6だと思うんですけど、埋もれることが無かったのは、楽曲のデキの良さと、たくさんのカバー作品のおかげではないでしょうか。

たまたま尺が同じだったのであわせました。



柴田さんは、作詞の能力は評価が高かったようですし、歌唱力だってあるじゃないですか。まあ、周りが凄すぎたってことなんでしょうか。もったいないように思いますけど。

さて、「ホテルローヤル」は、2013年に集英社から刊行され、第149回直木賞を受賞した「桜木紫乃」さんによる小説短編集とありました。釧路湿原を見下ろすロケーションに建つラブホテルが舞台で、「波瑠」さん主演で映画化されています。

物語の内容に主題歌が、どう合っているのかイマイチ分からないんですけど、予告編を見ると、共演者が「松山ケンイチ」さんで、他に「伊藤沙莉」さんとか、「岡山天音」君や「正名僕蔵」さんが出演するんですよね。最近、映画も観てないし、行ってみようかなって思ったんですけど、止せば良いのに、映画評価のレビューを見ちゃったんです。あれって、悪口しか書いてないじゃないですか、で、一気にテンションが下がってしまったという次第です。主題歌に惹かれて映画を見に行った人っているのかなぁ。

伊藤沙莉さんが家出した女子高生役だなんて、これにもびっくり・・・女優さんって凄いですねぇ。まあ、テンション充電中ということで。

2020年11月24日火曜日

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」中条あやみ×黒島結菜

 「閻魔堂沙羅の推理奇譚」は、2018年より刊行されている短編小説シリーズで、ミステリー作家「木元哉多」さんのデビュー作とのことです。ググってみましたら・・・

閻魔大王の娘・沙羅が現世に未練を残し殺された死者たちに課す「自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き」という死者復活を賭けた霊界の推理ゲームを、1話完結で描いたミステリー

と、ありました。今までに7巻、19話が発表されていて、その内の6話が、NHK「よるドラ」でドラマ化されました。主演は「中条あやみ」さん。ただ、中条さん演じる「閻魔堂沙羅」は、物語のナビゲーター的存在で、各回のゲスト出演者が、実質的な主役を演じる構成になっています。

前半の3話、Ⅰ~Ⅳ回を視聴した印象は、タイトルから受けるイメージとは真逆の、ほのぼの系ドラマでした。兎に角、みんな良い人ばかり。さすがに、殺人を犯した奴は善人とは言い難いですけど、それなりに情状酌量の余地がありますし、第2話に登場した、乃木坂の「賀喜遥香」さんが演じた女子高生なんて、絶滅危惧種的に健気な女の子でしたよ。

NHK教育番組的なデキすぎストーリーは、若干ひき気味になりますけど、視聴後に心が温かくなるのは確か。週末の夜を気持ち良く過ごすことができます。それがNHK「よるドラ」のコンセプトなんでしょうね。

「中条あやみ」さん演じる「閻魔堂沙羅」は、ドSキャラとのことですが、意外と優しいところもあったりして、演じている「あやみ」さんは楽しいだろうなって思いました。黒島さん云うところの、ハロウィンの仮装みたいな衣装を、ここまで着こなせる女優さんって、他には思いつきませんです。


で、今回、取り上げさせていただくのは、「黒島結菜」さんが出演した、第3話、Ⅲ・Ⅳ回放送分です。黒島結菜さんが演じたのは、バドミントンの元トッププレイヤー「澤木夏帆」。一年半前に膝を故障して引退し、現在はジュニアの臨時コーチをしている、という設定でした。

ドラマ中で印象に残ったのは、全日本Jr.チャンピオンの「内山静香」。演じているのは「藤川心優」さんという子役出身の女優さんで、大阪を中心に活動なさっているようです。プロフィールの特技欄に「バドミントン」って出てましたから、それでオファーされたんでしょうか。

夏帆コーチを慕っているこの子が、ひたすら良い子なんですよ。実際のアスリートでも、トップに立つ子は、運動神経だけでなく、頭も性格も良いことが条件なんでしょう。


黒島結菜さんがバドミントン経験者であることは、ファンなら誰もが知っていることですよね。沖縄では、糸満の黒島というと有名なバドミントン一家のようで、YouTubeを検索すると、妹さんたちが出場しているインターハイ等の試合動画が出てきます。沖縄の大会では、上の妹さんと下の妹さんで決勝戦をした、なんてこともあったそうですよ。

黒島さんと中条さんが同い年で、プライベートでも仲良しであることも、ファンならば誰もが知っていることだと思います。このあたりのエピソードは、日テレの「アナザースカイ」でも紹介されましたけど、中条さんもバドミントン経験者であることは知りませんでした。二人が共演もしていないのに仲が良かったのは、バドミントンという共通項があったからかもしれません。

バドミントン・マガジンのインタビュー記事によると、黒島さんは、小・中学生の時に「糸満ジュニア」というクラブチームで活動していたとのことです。中学校のバドミントン部にも入っていたようですが、どちらで選手登録をしていたかは分かりません。中学2年生の時に沖縄でベスト8だったのが、最高戦績とありました。糸満高校でもバドミントン部だったという情報もありますが、この頃はタレント活動も始まっていて、沖縄と東京の二重生活でしたし、ケーキ屋さんでバイトもしていたみたいですから、部活はどうでしょうか。

ドラマの冒頭に静香と夏帆がバドミントンをしてるシーンがあります。番組予告では、バドミントンの腕前を披露とかありましたけど、実際にシャトルを打ち合っているシーンは、この時くらいでした。黒島さんは、手足が長く見えるので、フォームも綺麗だし、兎に角、格好良かったです。そりゃぁ、俳優さんですから、実力以上に上手く見せる術を持っているとは思いますし、ラケットを振る瞬間だけ早送りにしているような感じが・・・・してないか。バドミントンのシーンは、もっと見たかったですね。

上の画像は物語の前半でのシーン。あの唯之介も、こんな表情ができるんですね。ドラマの最後の方で、やる気を出してるときは、髪の毛をしばっていて、髪型によって印象を変えていたみたいです。元気が出た後は、いつもの黒島結菜さんでしたけど。

前半は、登場する人たちが、わざとらしいくらいに(ワザとでしたけど)口を揃えて「現役復帰なんかするな!」って云っていて、重苦しい雰囲気でした。その中で、代表コーチだけが優しい言葉をかけていたんですよね。つい「こいつ良い奴だ。」なんて思ってしまい、見え見えのトリックなのに引っかかってしまいました。

結局、このコーチが、交際相手(主人公の姉)に対する歪んだ思いやりから、現役復帰を妨害し、罪を犯していたんです。

夏帆の古傷を悪化させようと、飼い犬を逃がして追いかけさせたのって、傷害未遂になるんですかね。でも、階段から突き落とそうとしたのは、完全に暴行罪や傷害未遂。自転車のブレーキを壊したのは傷害罪。結果として交通事故を起こして死んでしまいましたから傷害致死、場合によっては殺人罪になるかもしれません。しかも、目撃者である静香ちゃんを拉致しましたから、未成年者略取。口封じのために殺してしまえば、誘拐殺人という重罪になります。犯罪というのは、1つ犯してしまうと、どんどんエスカレートしてしまうんだなって思いました。まあ、夏帆が生き返ったおかげで、最終的には、障害未遂と未成年者略取で済みましたけど、それでも重い罪のはず。あと、自転車壊してるから器物破損も。なのに、ナレーションでは、代表コーチ解任と、姉との交際解消しか語られませんでした。それだけじゃ済まないだろっ!

あと、気になったのは、謎解きのシーンでの台詞でしょうか。こういった、説明的な長~い台詞って、どうしても台本を読んでる感が出てしまいます。まあ、これは、若い女優さんたちのこれからに期待です。

閻魔堂は、物語のテイストに合わせて、ロケ地を変えているようです。今回は、「旧奈良少年刑務所」が使われました。

ここは、仏像巡りをしてた頃に、車で寄ったことがあります。その頃は、まだ少年刑務所として使われていて、門の前に車を停めたところ、守衛さんと目が合ってしまい、(何も悪いことしてないのに)慌てて引き返した思い出があります。

この旧奈良監獄の建物は、重要文化財に指定されている日本で最古の監獄建築なんですけど、今は使われて無くって、星野リゾートが監獄史料館やホテルなどの複合施設として、2024年の開業を目指しているとありました。高級ホテルを経営する星野リゾートでは、気軽に泊まるわけにはいきませんですね。

黒島さんって、このところ、テレビ東京やNHK大阪放送局のドラマに出演することが多いみたいです。「閻魔堂沙羅」は、制作費も安いだろうし、視聴率も高くはないだろうから世間の話題になることはないかもしれないけど(過度な期待さえしなければ)面白いドラマであることは保証いたします。

NHKオンデマンドが配信中止になることもなさそうだし。何より、30分で問題解決するから、テンポが良くって視聴疲れしないのが有り難いです。放送は残り4回。後半のゲスト出演者は、ベテランの俳優さんたちです。どんな展開になるんでしょうか。

 最後に、悪人には容赦ない沙羅ちゃんです。

  

2020年11月15日日曜日

炭焼きレストラン「さわやか」を語る(その5) ~パフェ歳時記~

 「パフェ」の語源はフランス語のパルフェだそうだ。英語で云うとパーフェクト、つまり完璧なスイーツという意味らしい。

昭和の子供にとって、パフェとプリン・ア・ラ・モードは憧れの的だった。街へ買い物に行った時などに、駅前の洋食レストランの食品サンプルを見てたから、パフェというのモノの存在は知っていたけれど、食べさせてもらったことはなかった。

コミック「美味しんぼ」に「とんかつをいつでも食べられる人生が丁度良い」という名言があるけれど、それで云うならば、「幸せな生活とは、いつでもパフェが食べられること」なんだと思う。

だから僕は、パフェが食べられるチャンスがあれば、必ずパフェを食べる。東京に出かけた時も、昼食が立ち食い蕎麦だったとしても、日本橋の千疋屋でパフェを食べた。最近は予算的に新宿駅地下のタカノに行くことが多いけど・・・。

そんな僕が自信を持ってお勧めするのが、炭焼きレストラン「さわやか」のパフェである。さわやかのお客の九割は、生焼けのハンバーグをオニオンソースで食べていて、それで満足しているようだが、食後にデザートを食べないのでは、さわやかを満喫したことにはならない。


今年最初のパフェは2月19日、静岡県産「紅ほっぺ」の「いちごパフェ」(税込み748円)だった。何で分かるのかと云うと、ちゃんと写真を撮っているからだ。おじさんがレストランでパフェを注文して、スマホで撮影している姿にドン引きされる方もいるかもしれないが、好きなんだから致し方ない。あの頃は、コロナ禍なんて別世界の話で、平和な世の中だったように思う。

やがて、非常事態宣言が出て、ゴールデンウィークを控えた4月18日から「さわやか」も休業することになった。で、このことが地元のテレビや新聞で報道されたものだから、駆け込みでお客が殺到する事態となった。テレビニュースのインタビューで、横浜から来たという人が「明日から休業だと聞いたんで」って答えていたが、「横浜なら上手い店がいくらでもあるだろうに、わざわざ来るんじゃねぇよ。」ってコメントが投稿されていた。首都圏の人たちをバイ菌扱いして申し訳ないと思うが、静岡県に感染者がいなかった頃なので、お許し願いたい。まあ、駐車場に横浜・湘南・横浜・品川・・・・春日部って感じで首都圏ナンバーの車がずらりと並んでいると、近所に住んでいる人も(さわやかでクラスターが発生したという話はないにしても)心中穏やかではなかったと思う。

この頃は、さすがの「さわやか」でも客足が少なくなっていたので、用意する食材も減らしていたらしい。それが、ニュースを聞いて客が殺到したモノだから、どの店舗でも夕方には食材が底を尽き、早々と閉店する事態になってしまったとのことである。

閉店している「さわやか」の前を通る度に、日本が普通で無くなってしまったことを実感した。


5月21日に「さわやか」は営業を再開したが、首都圏からの多くの客が集まる静岡県東部の店舗は、6月1日からの営業再開となった。

僕が「さわやか」に行ったのは、営業再開から2日後のことである。季節は、苺からメロンに変わっていた。入店したのは平日の夕方で、待ち時間はゼロ、店内には空席もあった。首都圏からの来店者はいなかったと思う。こんなに空いている「さわやか」は初めてだった。でも、少しずつ客が増えてきて、食べ終わって店を出る頃には、待ち時間も発生していて、いつもの「さわやか」に戻っていた。

静岡県袋井産「クラウンメロン」のパフェは、昨年食べた時よりも、メロンが厚かったように思った。きっと、店長さんがサービスしてくれたんだろう。

夏になって、さわやかは、また首都圏ナンバーの車で賑うようになった。伊豆半島の入り口にある函南店も観光客で賑わっていた。店の前のバス停に、旅行用の大きなトランクを持った観光客が座っているのをよく見かけた。彼女たちは、公共交通機関を使って伊豆半島を旅行し、そして「さわやか」に来ているのだった。きっと「るるぶ」とかにも紹介されているんだろう。


季節は、メロンから葡萄に変わった。

さわやかには、パフェの他に、パフェで使用するフルーツをお店でミキシングして作ったジュースもある。苺ジュースを一口飲ませてもらったことがあるが、正に苺そのものだった。メロンジュースは絶品だそうだが、飲んだことは無い。シャインマスカットのジュースは7粒の、巨峰のジュースには10粒の葡萄を使っているそうだが、値段は同じ。ジュースならば巨峰の方がお勧めである。

そんな時、さわやか静岡インター店で火災事故が発生した。「さわやか炎上」と云う見出しで新聞やネットニュースに出ていたので、何か不祥事でも起こしたのかと思った。普通は「ハンバーグレストランで火災」だろう。火災発生時の店は満席で、20人の従業員と80人の客がいたが全員無事とあった。

最初の頃は、火災を発生させたことを批難するコメントも投稿されていたのだが、やがて、満席の客を無事に避難させた従業員を褒めるコメントが主流となった。「さわやか」ファンの中には、もはや信者と云うべき奴らも多い。確かに、火がダクトに燃え移った時点で、消火活動から客の避難誘導に切り替えた店長の判断は的確だったと思うが、さすがに、火事を出した店を絶賛するのは如何なモノかと思う。さわやかのホームページには、火事を出したことの謝罪と、在店者に直接お詫びをしたいので申し出て欲しいとの告知が掲載された。・・・お詫びって何だろう、気になる。

葡萄の季節が終わる前にと、さわやかに行った。さわやかの「ぶどうパフェ」には、シャインマスカットが5粒と巨峰が3粒のっている。東部の店舗は相変わらず若者が多いが、地元のファミリーも戻って来ていて、いつもの「さわやか」の景色になっていた。

注文してしばらくしたら、バイトのお兄ちゃんが、すまなそうな顔をしてやってきた。巨峰が切れてしまって全てシャインマスカットになるけど良いかと聞かれた。やがて、税込み748円でシャインマスカットが8粒のっているパフェが運ばれてきた。季節の移り変わりを感じながら、巨峰抜きのパフェを食べた。


直にデザートメニューが更新されて、今は静岡県産三ヶ日みかんのパフェになっている。(缶詰の蜜柑では無い!)昨年は無かったから新作のようだ。値段は税込みで638円。三ヶ日みかんを丸ごと一個使っているらしい。三ヶ日(みっかび)は、静岡産の蜜柑の中でもブランドなので、他の産地よりも、ちょびっと値段が高い。とは云っても、三ヶ日みかんは珍しくもないが、さわやかのパフェとあっては、食さねばなるまい。しかし、静岡抹茶ティラミスも気になる。

そして年が明ければ、また苺のパフェが始まるだろう。こうして静岡県の一年は過ぎていくのだ。

2020年11月8日日曜日

さようなら「アシガール」

伊藤健太郎君のひき逃げ事件を受けて、NHKはアシガールとスカーレットのホームページを削除し、オンデマンドでの配信を終了してしまった。さらに、伊藤君に対して損害賠償の手続きを取る構えらしい。

彼が出演した映画が、作品と個人の罪は別だとか、見たい奴が金を払って見るからと云う論理で、公開されているのとは対照的である。見たい奴が金を払って見るのであれば、有料オンデマンドだって同じだと思うのだが、NHKは視聴者の受信料で成り立っているので、こういう不祥事には厳しく対処するとのことらしい。

事件が起きる前は、伊藤君の人気にあやかろうと、一番チヤホヤしていた放送局がNHKだったから、とんだ手のひら返しである。まあ、俳優「伊藤健太郎」は自分たちNHKが育てたって気分でいた分、より裏切られた感が強いのかもしれない。民放のようにスポンサーに配慮する必要の無い代わりに、視聴者・・・つまり世間の風潮に左右されるのがNHKなんだと改めて実感した次第である。

伊藤君は、釈放されて湾岸署を出てきたときに「自分が起こしてしまった事故のせいで、たくさんの方々にご迷惑をおかけした・・・」と云った。迷惑をかけた沢山の人って、どのくらいいるのだろう。

真っ先に思い浮かぶのは事故の被害者とそれに関連する人たち、次に思うのは、ドラマや映画の共演者とそのファンだ。健太郎君はどこまで分かっているのか知らないけれど、アシガールと黒島結菜さんのファンである「僕」は、紛れもなく伊藤君に迷惑をかけられた者の一人だ。NHKのオンデマンドのマイページ、お気に入り登録してあったアシガールの全13話が、消えてしまった時の悔しさと憤りは半端なかった。だから、彼の謝罪の何百万分の一は、僕に向けられたものだと信じている。

そんな中、原作コミックの15巻が、年末に刊行されるそうだ。森本先生が今回の事件により創作意欲を失い、連載を切り上げてしまうのであれば、それもまた「さよなら」であるが、現在連載中の第2部は読者の強い要望で始まったから、(純粋な)アシ・ラバが支え続ける限り、本能寺の変から関ヶ原の戦いへと話は続いていくだろう。

でも、NHKがアシガールの続編を制作する可能性は無くなってしまった。12月に公開予定の舞台「両国花錦闘士」のように、伊藤君に代役を立ててでもアシガール続編を制作して欲しいところであるが、制作側には、そんな意欲はもう無いだろうし、作ったところで世間からあーだこーだと云われることは目に見えている。

アシガールの配信終了は残念極まりないことだが、NHKは今までにも出演者に不祥事のあった番組を配信停止にしたことがあり、その方針が今回もブレなかっただけのことである。配信再開は、過去の例からしても極めて難しいだろう。ファンならばDVDを持っているだろうし、テレビ放送の録画もあるだろう。だが、配信がなければ新規のファンも生まれないだろうし、配信という共有財産を失ったアシラバの精神的ダメージは大きい。

今回の事態を、黒島結菜さんは、どう思っているのだろうか。

アシガールが放送されてたのは、ちょうど3年前の今頃だった。当時20才だった黒島さんも23才だ。大人の女優へのステップになるはずだったスカーレットへの出演は、とんだ思惑違いだったが、同じく大阪放送局で制作されている「閻魔堂沙羅の推理奇譚」のゲスト出演でも、黒島さんは実年齢相当の役を演じている。熱愛報道も出たし、いつまでも唯之助のイメージでいることもないだろう。潮時って言葉は相応しくないだろうが、これは与えられた1つのきっかけなのかもしれない。


僕は、アシガールに出会って、黒島結菜さんを知った。二十歳そこそこの女優を応援するなんて考えもしなかった。アシガール関連の投稿記事は13本。たくさんの人たちに読んでもらえたし、とても楽しく書かせていただいた。だから、アシガールには感謝しかない。

でも、女優「黒島結菜」を第一に考えれば、アシガールの配信終了は1つの区切りであって、何かが終わったわけではない。黒島ファンは次のステップを応援し、アシラバはコミックの世界へ帰っていく、ただそれだけのことなのだ。

さようなら「アシガール」そして、ありがとう。

2020年11月7日土曜日

「色のなき風やボカロのラブソング」岩永徹也

 プレッシャーバトル(プレバト)というバラエティ番組がある。特にファンと云うわけでもないのだが、何年もダラダラと見続けている。番組の中核は俳句のコーナーで、初めの頃は、なるほどと感心しながら見ていたのだが、最近はマンネリ気味だ。でも、習慣で見てしまう。先日も習慣で見ていたら、「岩永徹也」君がボーカロイドを詠んだ句を発表していた。マルチな才能を持つ彼は、作曲にも取り組んでいるとのことで、作曲支援のツールとして、ボカロ・キーボードを使っているようだ。岩永君のこのようなボーカロイドの使い方は、開発時に想定されていた正に王道なのであって、細やかではあるが、メディアに紹介されたことは嬉しい限りである。

で、岩永君が詠んだ句がこれである。

「色のなき風やボカロのラブソング」

梅沢さんは「色のなき風や」がどうも気になっていると云い、季語本来の形である「色なき風や」にしなかったことを指摘された。また、夏井先生は「ボカロ」を知らなかったとのことで、ボーカロイドという言葉の省略形を使用したことの善し悪しの判断を保留された。司会の浜ちゃんは、ボカロも初音ミクも何も知らなかった。プレバトでは、番組のBGMでボカロ曲をたくさん使っているのが特徴なんだけど、それを何も知らないってことは、彼は収録後の番組を全然チェックしていないってことなんだろう。フジモンさんは、ボカロ=バーチャルアイドルというイメージで捉えられているようだった。

この番組は、夏井先生の添削が最大のウリで、時には、ヤラセではないかと思えるほどの見事な添削を披露してくださるのだが、今回のように知らないことは知らないと云い、周囲の人に教えを請い、判断しかねるときは保留するという態度は素晴らしいと思った。

夏井先生の添削された俳句がこれである。先生は、直すと云うよりも、普通はこうなるというスタンスで発表されたように思う。

「色なき風やボーカロイドのラブソング」

季語の「色なき風」は、平安時代の短歌にも見られる、古い季語なんだそうだ。五行思想を季節に当てはめて、青春、朱夏、白秋、玄冬と云う言葉が生まれた。秋のイメージカラーは「白(透明)」とされ、そこから秋の風を色なき風と表すようになったらしい。 

代表的な歌が、「新古今集」に収録されている久我太政大臣雅実が詠んだ歌。

物思へば色なき風もなかりけり   身にしむ秋の心ならひに

なんだそうだ。

普通は、「秋風や」とか、「秋の風」とするところを、「色なき風」としたのは、岩永君の博学であり、お洒落なところで、900年以上前の歌にも使われている季語を、ボカロという現代・近未来的なものに合わせたところが、この俳句の面白さである。

岩永君は、ボカロのラブソングは、心の無い無機質な冷たい歌であり、そこから、色なき風を連想したと説明していた。無色透明なボカロの歌に、如何に色づけをしていくかが、ボカロPの腕の見せどころなんだと思うのだが、ボーカロイドをツールとして捉えている岩永君には、ボカロに対して、そういう想い入れは無いのだろう。

岩永君の決定的なミスは、季語を「色のなき風」としたことである。何故「の」を挟んでしまったのだろうか。僕は、ボーカロイドをボカロと省略したことと関連があるように思う。夏井先生は、ボカロという省略形を使ったことの是非を保留した。どちらでも良いのならば、ボーカロイドのままで良かったと云うことなのだが、ボーカロイドとボカロの語感は微妙に違う。

「ボーカロイド」と省略しない場合は、コンピューターに歌わせる技術そのものを表すのに対して、ボカロと云ったときは、(ヲタク)文化的な意味が強調されるように思う。岩永君が「色なき風」と合わせたかったのは、ヤマハのエンジニアが心血を注いで開発したボーカロイドでは無く、ヲタクが喜んで聴いているボカロなのであって、紛い物のラブソングを表すのは、やはり「ボカロのラブソング」の方がしっくりする。で、結局、ボカロにこだわって、歌のリズムを合わせようとした結果、「色のなき風」となったんだと思う。俳句の季語よりもボカロの方に強い思いを持つ僕には、夏井先生の添削作品よりも、岩永君の歌の方がしっくりくる。

「色なき風や○○○ボカロのラブソング」

「色なき風」と「ボカロ」を取り合わせて、僕なりに直してみようと思ったのだが、上手くできるわけもなかった。この辺の事情が夏井先生に上手く伝わっていれば、きっと素敵な三文字を入れてくれたに違いない。

ボカロのラブソングを貼り付けさせていただいてお終いにしようと思う。槇原敬之氏の「もう恋なんてしない」で如何であろうか。もう御本人がメディアに出てくることも無いと思うので、せめて、色なきボカロのラブソングを。