2021年5月31日月曜日

「聖徳太子と法隆寺」展と山岸凉子「日出処の天子」

日曜日の朝、突然6年前の投稿記事にアクセスがあった。山岸凉子先生の「日出処の天子」に関する記事である。理由は直ぐに想像できた。今年は、聖徳太子没後1400年ということで、東京と奈良の国立博物館で聖徳太子1400年遠忌記念特別展が開催される。で、NHK日曜美術館で取り上げていたからだ。

それにしても「日出処の天子」の記事なんてネットには星の数ほどもあるだろうに、何故、僕の記事なんかにアクセスしてきたんだろう・・・って、その謎は録画した放送を見て分かった。ゲストに「池田理代子」先生が出ていたからだ。僕のブログ記事は、池田先生の「聖徳太子」も取り上げている。池田作品を取り上げているブログ記事は、そう多くないはずだから、こんな小さな記事でもヒットしたんだろう。

「日出処の天子」~漫画史に燦然と輝くBL~

池田理代子先生の「聖徳太子」は、山岸ファンからは頗る評判が悪い。さらに、池田先生は、朝日新聞のインタビューで「日出処の天子」をボロクソに批判したので、御本人同士も、絶対、仲が悪いはずだ。

今回、NHKが、聖徳太子漫画の第一人者として、山岸先生でなく池田先生を呼んだのは、政治力とかNHKへの貢献度とか、所謂、大人の事情ってヤツだろう。NHKとしても、山岸先生を招くことで池田先生の不興を買うことは避けたかったのかもしれない。って、だったら、どちらも呼ばなければ良かったのだ。呼ばなければネットがザワつくこともなかっただろう。今回の放送で、NHKが山岸ファンを敵に回してしまったのは確かだ。今頃、NHKには、山岸ファンからの抗議のメールが届いているに違いない。

池田版「聖徳太子」は、連載当時から、山岸ファンからパクり作品であると批判されてきた。池田先生は「日出処の天子」を違和感があるとし、正しい聖徳太子を描くことを目指して連載を始めたはずなのに、何故、山岸版に作風が寄ってしまったのか、何故、同じような創作エピソードを入れたのか。偶然とは思えない類似性が、この2作品にはある。

池田先生は、ご自分の作品が批判されていることが、お気に召さなかったのだろう。で、2007年の朝日新聞のインタビューになったんだと思う。でも、(四天王寺からの依頼もあって)聖徳太子を描きたかったから描いた。それだけの話で良かったのだ。朝日新聞も、喋ったことを全部記事にするんじゃ無くって、適当にカットしておけば、あそこまでの炎上騒ぎにはならなかったように思う。発言の切り取りなんてお手の物だろうに。

「法隆寺が『日出処の天子』に激怒して、裁判沙汰になっている」っていうトンデモナイ捏造記事を大々的に報じた毎日新聞よりはマシではあるけど。(この時、法隆寺は、山岸作品に対して好意的なメッセージを出し、聖徳太子の「和を以て貴しと為す」という教えを実践している。)

同業他者の作品を批判することって、まあ、あるかもしれないし、同一人物を主人公にしているのだから、作風が似ることもあるかもしれない。手塚治虫の「ジャングル大帝」とディズニーの「ライオン・キング」に例えた記事があって、面白く読ませて頂いた。でも、ディズニーは、手塚作品のデキが悪いからライオンキングを作ったとは云っていない。山岸ファンが、ここまで憤ってるのは、池田先生が先行作品に明らかに影響されているのに、他方をあからさまに卑下したからだ。連載から三十数年、朝日新聞のインタビューからも十数年が経っているのに、山岸ファンの怒りは未だに治まっていない。

国立博物館に漫画が展示されるわけではないので、どうでもいい話なんだけど。

仏像ファンにとって、今年は法隆寺展の他にも、聖林寺の十一面観音像などの大御輪寺関連の仏像が東博に来るとか当たり年である。多くは寺院で拝観済みの仏様ではあるんだけど、博物館でのテーマに沿った展示は新しい発見もあって楽しい。なのに、奈良にも、東京にも、1年以上行けてない。悲しい。

2021年5月16日日曜日

Ado「うっせぇわ」のヒットに思う。 ~初音ミクAIへの道:その5~

 18才の歌い手「Ado」さんのメジャーデビュー曲「うっせぇわ」(詞曲・編曲:syudou)が、大ヒットしている。さらに、4月には、4作目のシングルとなる「踊」を配信限定リリースして、こちらも話題になっているようだ。「踊」は、ボカロ界の重鎮DECO*27氏が作詞、作曲・編曲はGiga氏とTeddyLoid氏が担当したとあった。ボカロ界でも、ついに重鎮と呼ばれる人物が存在するようになったらしい。

DECO*27氏は、このブログでも取り上げさせていただいた、ボカロ第2世代の「重鎮」である。数あるボカロ曲の中から、今回は、これを貼り付けさせていただこう。

で、Giga氏の楽曲というと、思いつくのは、この曲である。

自慢しよう。僕は、オジさんでありながら、この2曲が演奏されたライブに、それぞれ参戦しているのだ。

さて、Adoさんの「うっせぇわ」が大ヒットして、社会現象にまでなっている。この前も、近所のスーパーで親に連れられたガキ・・・児童が「うっせぇ、うっせぇ・・・」と歌っていた。「オマエの方がうっせぇわ」なんていうツッコミは、もう使い古されて誰も云わなくなったようだから、云わない。

この楽曲がヒットした理由については、様々な肩書きの人たちが、いろいろな分析をしている。歌詞の内容が現在の若者の心情を代弁してるとか、2倍音を多用したサビが効果的であるとかだ。スーパーで出会ったお子様は、社会の閉塞感を感じていると云うよりも、まあ、毒されているだけだろう。「千本桜」の時もそうだったが、子どもはボカロと波長が合うみたいだ。

以前、このブログで「YOASOBIの『夜に駆ける』が、ボカロの歌ってみた動画みたいだ」という記事を投稿させていただいたが、今回の「うっせぇわ」に関しては、「みたい」ではなく、ボカロの歌ってみた動画「そのもの」である。

「うっせぇわ」は、過激な歌詞や、一度聴いたら頭から離れないフレーズが特徴といえるが、この類いの楽曲は、中毒系と云って、ボカロ界では、ずっと前から作られていたように思う。人間の歌手だったら、事務所NGとなるような歌詞だって、コンピュータは歌ってくれるからだ。だから、このような楽曲がネットに出てくることは、全然想定の範囲内なんだけど、僕が驚いたのは、これを人間の女の子が歌い、リアル社会に受け入れられたということである。

Adoさんが、ボカロの歌ってみた動画で、配信限定とはいえメジャーデビューしたのは、YOASOBIの成功を受けてのことだと思う。もはや、ボカロとは、コンピュータの歌唱を意味するモノではなく、音楽の数あるジャンルの1つってことらしい。

歌い手のAdoさんについては、小学1年生の頃から父親のパソコンでVOCALOID楽曲を聴き始め、小学校高学年になると、ニコニコ動画の顔を出さずに活動する歌い手の文化に興味を持ち始めた、とあった。彼女は、物心ついたときから、コンピュータが歌っていた世代だ。だから歌い手に対する意識も全然違うんだろう。

初期の頃の歌ってみた動画は、ボカロを歌ってみたけど・・・ダメだった、みたいな「全然歌えてねぇじゃん!」というツッコミを期待しての投稿だったように思う。顔を出さない理由の1つは、あくまでも遊びの延長だったからだ。それが、段々と歌唱自慢の場になっていって、誰でも投稿できるモノでは無くなり、ニコニコ動画の活気は失われていった。その一方で、難曲を歌い切る「歌い手」は、憧れの存在になっていったのだ。Adoさんは、歌い手として音楽を楽しむのではなく、歌い手をきっかけにして歌手を目指すのでもなく、歌い手になることを目的にできる世代なのだ。

もし、この楽曲をボーカロイドが歌い、普通にネット配信しても、世間からは見向きもされなかっただろう。「うっせぇわ」のヒットは、Adoさんの存在感有りまくりな歌唱があればこそである。そして、彼女がボカロ曲そのもの、つまり、人間の女の子というアドバンテージを排して、歌唱だけで勝負しているということは、歌い手として比べた場合、ボーカロイドは、人間には到底敵わないということになる。人工知能搭載型ボーカロイド「初音ミクAI」への道は厳しい。

今は、ボカロの歌ってみた動画(みたいな曲で)でメジャーデビューするって時代なのだ。「みくみくにしてあげる♪」の配信権を巡って炎上していた頃からすれば、考えられない話である。

Adoさんが、今年のNHK紅白歌合戦に出演するかどうかが、話題になっていた。僕的には、出ても良し、出なくとも良しってところだろうか。顔だって、出しても出さなくても良い。歌い手Adoが歌手Adoとして大成するには、顔出しNGみたいなキャラ作りは不要に思うからだ。もし出演するのであれば、GReeeeNの時のような視聴者を小馬鹿にした演出だけはやめて欲しい。それだけである。

2021年5月9日日曜日

黒島結菜「LIFE!春」 ~コント「雑音」の雑感~

何年前のことだろうか。深夜にテレビをつけていたら、NHKでいきなりコント番組が始まった。NHKのニュース番組風なオープニングだったので、最初は、臨時ニュースでも始まったのかと思った。それが、「サラリーマンNEO」との出会いだった。サラリーマン体操とか、沢村一樹氏のセクシー部長とかが面白かったけど、この番組、めちゃくちゃ面白い時と、全然面白くない時があった。(どちらかと云うと面白くない時が多かったような・・・)

それは、内村さんの「LIFE!~人生に捧げるコント~」に受け継がれても同じだった。おおよその傾向として、キャラクターものは、面白いんだけど、シナリオに頼ったコントは面白くなかった。

コントって、そんなものかもしれない。ドリフの「8時だよ全員集合」だって、吉本新喜劇だって、ストーリーで笑わせているというよりも、お約束のギャグや、お馴染みのキャラクターがあればこそだ。馬鹿笑いすることだけが、コントの楽しみ方ではないのは分かっているつもりだけど、シナリオに頼ったコントはつまらなくて、キャラクターものは笑えた。ウッチャンが頑張りすぎると面白くなくなる傾向はあったけど、パロディーのクオリティーは高かった。まあ、国民から徴収した受信料を使って、視聴率を気にせずに遊んでいるんだから、こんな楽しい仕事はないだろう。


そのLIFE!が、季節番組としてリニューアル。5月5日に「春」版が放送された。ゲストに「黒島結菜」さんが登場するのことが告知されていたので、視聴させていただいた。(っていうか、いつも見ている。)4月に放送したLIFE!が、キャラクターもので面白かったから、それと比較してしまうと、シナリオ系(ストーリー系)の「春」はイマイチだったと思う。もちろん、黒島さんのせいではない。


黒島さんの登場したコントは3本。トークコーナーでの仲野君によると、6本を2日間で収録したそうだから、この3本は1日で収録したんだろう。社長秘書のコントは、ちょい役だったし、マジックのコントは座っているだけだった。「マジック」が面白かったのは、ココリコ田中さんの「石原良純」感が凄かったからで、これはキャラクター依存とも云えるだろう。続いて、ウエイトレス役で出演した「雑音」は、黒島さんがメインで、ツッコミ役も不在な1人コントだった。(新感覚コントって云うらしい)すごく面白かったかと云われると、まあ、そこは、シナリオ系なんだから致し方ない。

1本のコントを丸ごと任されるんだから、黒島さんへの信頼度は、かなりのようだ。彼女は「アシガール」や「らーめん才遊記」みたいなコメディードラマに多く出演していて、コメディエンヌとして一定の評価も受けているから、あえてコント初体験と云うこともないだろう。それにしても、黒島さんは、ヒロインの芝居が板に付いてきたように思う。驚いても、怒っても、ちゃんと可愛く見せようとしていた。

そもそも、コントとコメディーの違いって何だろう。ググってみたら、芸人がやるのがコントで、俳優がやるとコメディー。脚本があるのがコメディーで、脚本の存在を感じさせないのがコント。長いのがコメディーで、短いのがコント。などとあった。だとすると、脚本有り有りの「雑音」は、ショート・コメディーってことか。

コント(ショート・コメディー)で一番難しいなぁと思うのは、オチをつけた後の終わり方だ。漫才だったら、「もうええわ」とか「いい加減にしろ」って云って、打ち切ってしまえば良いし、落語は洒落た一言で終われるんだけど、コントはどうだろう。

LIFE!の場合、たいていのコントは、内村さんのボケで終わることが多い。「雑音」もそうだった。「雑音」のオチは、いきなり「お父さん」って云っちゃったことだったけど、それを受けて、うっちゃんが、コップを持つ手を震わせるというボケと、笑いを堪えきれない黒島さんで終わっていた。これが昭和の「志村けん」と「髙田みづえ」のコントだったら、口に含んだ水をぶっかけているはずだ。LIFE!のストーリー系のコントが物足りなく思えてしまうのは、僕らが、子どもの頃に、タライが頭の上に落ちてくるコントばかりを見て育ったからかもしれない。

LIFE!は見てるけど、黒島結菜は知らない、っていう視聴者層(居るのかなぁ)に、彼女を知ってもらえたってのが、良かったところかな。

2021年5月5日水曜日

黒島結菜と「さよならドビュッシー」~ピアニスト探偵 岬洋介~(超ネタバレ)

 「東出昌大」「黒島結菜」主演の「さよならドビュッシー」が、huluで無料公開されている。このドラマ、ネットのレビューでは酷評されているんだが、黒島ファンからは高評価である。前々から見たいと思っていたので、早速、視聴させていただいた。


「さよならドビュッシー」は、2010年に出版された「中山七里」氏の推理小説で、 第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作とある。2013年に「橋本愛」さんと現役ピアニスト「清塚信也」氏により映画化。2016年には、「東出昌大」さんと「黒島結菜」さんで日本テレビ系スペシャルドラマとして放送された。東出君は、この作品がテレビドラマ初主演だったらしい。

このドラマの共演により、黒島さんは、東出君の自宅に遊びに行くような親しい関係になったとされている。当時、東出君は、女優の「杏」さんと結婚されていた。黒島さんは、東出夫妻に大変可愛がられ、3人でタクシーに乗っていたとか、杏さんの手料理(レバニラ炒め)をご馳走になったなどという話が伝わっている。A-Studioでは、二十歳になったばかりの黒島さんが、東出君にウイスキーのロックを勧められて、それが初めてのお酒だったというエピソードも紹介された。

黒島さんは、保護犬の「コハダ」を飼っているが、そのサイトは、既に保護犬を飼っていた東出君から紹介されたらしい。なので、昨年、東出君の不倫が報道されたときは、焦ってしまった。しかも、お相手が二十代前半の清純派女優だというじゃないか・・・まあ、何事も無くて良かったけど。


ドラマのあらすじは、次の通り。

主人公「岬洋介」は、将来を嘱望される検事だったが、突然職を辞し、ピアニストへの道を歩み始めた。物語は「岬」が、鎌倉の名士「香月玄太郎」の屋敷に下宿することから始まる。

鎌倉の富豪「真田家」では、当主の「真田恭子」、銀行員の長男「徹也」、定職にも就かず漫画家を志望する次男「研三」、徹也の嫁「悦子」、徹也と悦子の娘で、ピアニストを目指している「遥」、遥の従姉妹で、両親を災害で亡くした「片桐ルシア」、家政婦の「三上紀美」が一つ屋根の下で暮らしていた。

当主の真田恭子に長年秘かな恋心を抱いていた玄太郎は、遥やルシアを自分の孫娘のように可愛がっていた。

ある夜、真田家を悲劇が襲う。遥とルシア、恭子が火事に巻き込まれたのだ。一命を取り留めたのは、遥だけだった。火事の起きた夜、遥とルシアの交わした最後の約束。「私のために、ドビュッシーの『月の光』を演奏してほしい。」従姉妹との約束を叶えるため、大火傷を負った身体を奮い立たせ、遥は、岬と共に再びピアニストへの道を歩き始める。

亡くなった恭子の遺言が発表され、6億円もの遺産を相続する権利を得る「遥」。だが、遥の身の回りで不可解な事件が次々と起こり始める。

 



ここからは、ミステリードラマの感想記事になります。思いっきりネタバレしてますので、ご注意願います。


ドラマは、CM抜きで95分なので、ルシアがイスラム教徒である描写が無いなど、原作や映画と比べてシンプルな設定になっている。映画では恋愛感情も描かれていたようだが、ドラマでの岬と遥は純粋な師弟関係だった。大火傷で顔の形成手術って、それだけでも大変なことだと思うのだが、あっさり通過。火事のシーンの次はもう退院。

音楽小説ということで、ドラマの全編でピアノ曲が流れていて、ドビュッシーの「月の光」が主題曲になっていた。で、「月の光」といえば、これ。

紀平梨花さん16才の演技である。ドラマのヒロインで「黒島結菜」さんが演じた「真田遥」も16才という設定だった。そういえば、梨花ちゃんは、フリー演技で「清塚信也」氏の楽曲を使っていたけど、ドビュッシーつながりは、単なる偶然だろうか?


物語の舞台は鎌倉だ。遥たちは、資産家の祖母と薔薇の花に囲まれた立派な洋館に住んでいるけど、ここって「鎌倉文学館」じゃないか。

岬洋介が下宿しているお屋敷の主人が、真田家の遺産相続の受託者でもある「北大路欣也」氏で、その家政婦が「キムラ緑子」さん。この2人の関係が微笑ましく面白い。北大路氏が死んだら、遺産は全て家政婦の彼女に譲られると思う。北大路氏は、偏屈な爺さんという設定だけど、こんな善人な北大路氏を見るのは初めてってくらい良い人だった。

あと、黒島さんのお父さん役が「正名僕蔵」さんで、彼女を虐める同級生の1人が「富山えり子」さんだった。黒島さんのドラマを見る度に、同じ人がいろいろな役で再登場している。役者の世界ってこんなに狭かったのか。

東出君が演じる主人公の「岬洋介」は、新進気鋭のピアニストで、現在は鎌倉音楽大学附属高校の臨時講師だが、司法試験を優秀な成績でパスした元検事という異色の経歴の持ち主だ。

岬洋介のキャラが、イマイチよく分からない。名探偵ガリレオの湯川のように頭脳明晰で冷めた変人かと思うと、感情をあらわにしたり、教え子を突き放す冷徹な指導者かと思うと、ヤバいくらいに優しかったりする。ピアノの指導をするときに、感情が高ぶって、ピアノをバンバン叩きだしたのには驚いた。僕が中学生の時の音楽教師は、ピアノに寄りかかっただけで怒ってたぞ。

わずか4小節の演奏から遥の才能を見いだし、足音を聞いただけで犯人にたどり着く絶対音感。D♭の弾き方で指の長さまで分かるなんて凄すぎる。平凡な才能しかないルシアをコンクールで優勝させてしまう指導力。音楽の前では誰もが平等という信念。そして、左耳の反応性難聴。ヒーローにハンディーは必要不可欠だ。才能のある奴は、それだけで格好いいし、羨ましい。でも、遺産相続でもめている場面で、いきなりショパンの「葬送」を弾き出したのは、マジなのかギャグなのかどっちなんだ。

ピアノコンクール当日、1曲目と2曲目の5分の休憩時間に控え室で痛んだ指を休める遥。ここで岬が真相を語り始める。こんな時に何を言い出すんだって、ツッコミを入れる北大路氏と僕。「君は片桐ルシアだ。」・・・って

え~!!!

ドラマの最初のシーンで、包帯でグルグル巻かれた顔を見たとき、僕は「犬神家の一族」の「佐清」を連想したけど、この直感は、間違っていなかった。成り済ましは、ミステリーではありふれたトリックだ。にもかかわらず、なぜ簡単に引っかかってしまったのだろう。

だいたい、黒島結菜と上白石萌歌なんて、体型を見れば・・・ってそういう問題では無いか。焼死体の身元判定なんて、DNA鑑定とかやって慎重に行われるはずだ。横溝正史のような昭和文学じゃあるまいし、取り違えなんて有り得ないってことなんだけど、ドラマなんだから良しとしよう。

このドラマ、ミステリーなんだけど、もの凄い事件が起きているわけではなくって、ジャンルとしては、音楽スポ根物語に近い。僕らは必死にピアノを弾く遥に、どうしても感情移入する。ここに落とし穴がある。

冷静な視聴者にしてみれば、成り済ましなんて見え見えのトリックだ。このドラマが黒島ファンに好評なのは、ファンであればあるほど遥に感情移入してトリックに引っかかり、大ドンデン返しってなるからなんだと思う。


事件を嗅ぎつけた刑事が、ステージ袖に現れて遥(ルシア)を監視するという、お約束のラストシーン。でも、この子の罪って何なんだ。

成り済ましだって、周りが勝手に取り違えたことが原因だ。顔の形成手術までされて、遥にされてしまったルシアこそ最大の被害者だろう。黙っていたことを責めるのも酷だ。ルシアが遥を羨ましく思っていたのは事実だが、妬ましく思っていたわけでは無い。遺産相続についても、遥は長男の子、ルシアは長女の子だから対等なはずである。利己的な動機など何も無い。生き残ったのが遥で良かったみたいな態度を周囲からとられたら、遥じゃないなんて云えるわけが無いじゃないか。

悦子の転落死だって、正体を知った悦子がパニックになって、石段から落ちたのであって、ルシアが殺意を持って突き落としたとは云えないだろう。瀕死の悦子を放置して、死に至らしめたのは事実だが、情況を考えれば情状酌量の余地有り有りだ。

ルシアを犯罪者扱いするのは間違っている。彼女は「不起訴」(未成年の場合は審判不開始)が相当だ。鎌倉には住みにくいだろうから、6億の遺産をもらって、海外留学でもして、ピアニストの道を目指して欲しい。ラストは、海外へ旅立つ空港のシーンでも良いくらいだ。


ドラマで描かれている内容は悲劇だし、ツラいものもあるんだけど、登場人物に悪人がいないし、前向きな終わり方なので、視聴後の心持ちは良い。黒島結菜さんの演技は、ぎこちないところもあったけど、「あしたになれば。」からは確実に進化していたし、ピアノの前に座っているだけで絵になっていた。雰囲気とか佇まいも女優の才能。「さよならドビュッシー」は、彼女の十代を代表する作品と云って良いだろう。

鎌倉文学館の薔薇も、そろそろ見頃を迎える頃かと思う。久し振りに訪れたいのだが、鎌倉は、今は怖くて、ちょっと行けない。悲しい。

2021年5月3日月曜日

「Memory 青春の光」後藤真希&松浦亜弥VS小田さくら&岸本ゆめの

ツイッターを眺めていたら、「小田さくら」がトレンドになっていて、ビックリしました。どうやら、今流行の一発録り動画で、「青春の光」を歌ったからのようです。ハロヲタ君たちにも、トレンドを形成できる勢力があったんですね。   


 「小田さくら」さんは、このブログでも取り上げさせていただきましたが、「岸本ゆめの」さんは、存じ上げませんでした。研修生の方なんですね。今、大人気の「THE FIRST TAKE」に、ハロプロの女の子たちが(たぶん大人の事情で)呼んでもらえないので、アップフロントで同じような企画を始めたということでしょうか。   

アンチからは、カメラアングルが切り替わったりしていますので、一発撮りじゃないだろうとか云われているそうです。複数のカメラで収録していたのでしょうけど、確かに、小田さんの手の位置などを見ていると不自然ではあります。音声は一発録音だとしても、映像は別撮りか、編集している可能性もありますね。

っていうか、一発録りって、そこまで価値のあることなのかなぁ。そりゃあ、企画としては良くできてると思いますけど、一発撮りが凄いって云うんだったら、ライブDVDだって一発撮りみたいなものだし、生放送の歌番組もあるし、松浦亜弥さんは、一発撮りのスタジオレコーディングのDVDとかも出していたように思います。

オートチューンとかで、音痴を誤魔化すのは論外ですけど、ちゃんと自分で歌っているんだったら、1発目だろうが、5テイク目だろうが関係ないと思うんですけどね。むしろ、一発で終わらせる気持ちで何度も取り組んで、いくつかの中からベストなものを人様にお出しするってのが、プロの有るべき姿に思います。(松浦亜弥さんは、一発撮りどころか、ろくにリハーサルも行わない、ぶっつけ本番型でしたけど・・・良い子は、マネをしないでくださいw)

まあ、一発撮りって云っても、(松浦亜弥さんを含めて)プロは緊張感をもって、それまでに何度もステージに立ってきたわけですからね。「THE FIRST TAKE」は、コロナ禍でライブが開催できない今、「聴く側が」ライブのような緊張感を味わえる企画として登場したとありました。つまり、一発撮りとは、聴き手の満足度を高めるための演出の1つのようです。

さて「Memory 青春の光」といえば、カラオケ上手なOLさんと評された、ハロプロの先輩「後藤真希」&「松浦亜弥」さんのテイクでしょう。

大御所感がハンパないですけど、年齢的には、小田さくらさんたちと同じか、年下なくらいだと思います。後藤さんの方が個性的に歌いたいタイプですから、松浦さんが合わせるというこの選択は正解ですね。でも「主・従」でなく、あくまでも「主・主」になっているところが面白いです。2人で、よくカラオケに行くなんて話がありましたけど、今はどうなのかなぁ。

この番組は、映像と歌唱は別撮りだったと云われていて、収録によっては、バックバンドに無い楽器の音がしていることもあります。まず歌を録ってから、その自分の歌に合わせて、映像を撮ったということでしょうか。ですから、広い意味での口パクと云えなくもありませんが、僕らは、作られた映像として見ているだけですから、大した問題ではありません。小田さくらさんのテイクで、カメラを切り替えたのだって、そうした方が映像作品としての完成度が高くなると、制作側が考えたのでしょう。

ハロヲタ君たちが、トレンドに押し上げてくれたおかげで、久し振りに松浦亜弥さんのことを記事にできて嬉しい限り。感謝です。

折角ですから、お終いに「サマーナイトタウン」でいかがでしょうか。YouTubeへのリンクになりますけど。

2021年5月1日土曜日

令和に語る「高田みづえ」の魅力 「硝子坂」「私はピアノ」「ガラスの花」(再編集)

 「高田みづえ」は、不思議な歌手でした。演歌歌手のようでいて、アイドル歌手のようでいて、これからって時に相撲取りと結婚して、いきなり引退しちゃったんですから。現役8年間で紅白出場7回。今は、角界でも名門中の名門「二所ノ関」部屋のおかみさんです。

 その「高田みづえ」さんが、NHKの音楽番組「第47回思い出のメロディー」に生出演し、30年ぶりにステージに立ったのは、今から6年前のことです。NHKは数年前からオファーを出していたとのことですが、1回限りということで実現したとありました。それまでも、部屋のおかみさんとして、相撲部屋でのイベントでは歌ったこともあったそうで、YouTubeには、関取「松鳳山」の結婚披露宴の余興で、「そんなヒロシに騙されて」の替え歌を披露している動画があります。

二所ノ関部屋のおかみさんの歌唱です。

こちらは、紅白歌合戦に初出場したのテイクになります。佐良直美さんが紅組の司会だったんですね。周りのお姉様方の顔ぶれが凄すぎます。

17歳で演歌系アイドル歌手としてデビューした「高田みづえ」さんは、デビュー曲「硝子坂」がヒット、その年の紅白にも出場し、順調な歌手人生をスタートさせました。ところが3年後に彼女は紅白に落選してしまいます。20歳になった時、歌手としての新たなスタイルを求めてリリースしたのが「私はピアノ」でした。そして、これが最大のヒット曲になります。

以前にも貼り付けさせていただきましたが、僕的なベストテイクがこちら。登場してきた時に、有線マイクのコードが引っかかって笑う仕草が何とも良いでしょ。大人になった可愛らしさ、清廉さ、どこまでも素直で嫌みのない歌唱、ここに「高田みづえ」の魅力が全て詰まっていると思います。

「私はピアノ」は、1980年に桑田佳祐氏が奥様の原由子さんのために作った曲でした。桑田氏は、当時から他人に楽曲提供をしなかったので、カバーという形でリリースするのですが、別の歌手が唄うことになっていたのを事務所の力で強引に手に入れたとか・・・。

YouTubeには、想い出のメロディーで歌った「私はピアノ」のテイク動画が2つ投稿されています。再生回数の多い方は、熱心なファンが編集したと思われる素敵な動画ですが、CD音源を合わせた、いわゆる口パク動画ですので、ご注意を。

YouTube上には、たくさんのテイクがアップされています。もう1つ貼り付けさせていただくのは、高速ヴァージョンとでも云うべきテイク。みづえさんは、ドリフの「8時だよ全員集合!」にもよく出演して、体当たりなコントを披露していました。生放送のバラエティ番組では、時間が押していることが多く、こんなふうに、歌のコーナーに巻きを入れて調節していたようです。

歌い終わった後の苦笑い。生バンド伴奏ならではですよね。

NHKの最後のステージからも、6年が経とうとしています。このステージの2年後に、親方は大きな怪我をされますが、部屋を束ねて奮闘するみづえさんの姿が話題になりました。長女でタレントの「アイリ」さんは、現在ユーチューバーの活動もしていて、相撲部屋の様子を発信していますが、動画の端にみづえさんが写ることもあるそうです。まあ、部屋で預かる多くの力士のことを考えると、この先、ステージに立つことは無いかと思います。

お終いは、「ガラスの花」でいかがでしょうか。1982年のリリースで、作詞・作曲は「谷村新司」さん。歌手「高田みづえ」が、もっとも充実していた頃の歌唱に思います。(若島津関と交際を始めた頃かな)YouTubeへのリンクになります。


#高田みづえ   #私はピアノ  #二所ノ関部屋