2021年5月5日水曜日

黒島結菜と「さよならドビュッシー」~ピアニスト探偵 岬洋介~(超ネタバレ)

 「東出昌大」「黒島結菜」主演の「さよならドビュッシー」が、huluで無料公開されている。このドラマ、ネットのレビューでは酷評されているんだが、黒島ファンからは高評価である。前々から見たいと思っていたので、早速、視聴させていただいた。


「さよならドビュッシー」は、2010年に出版された「中山七里」氏の推理小説で、 第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作とある。2013年に「橋本愛」さんと現役ピアニスト「清塚信也」氏により映画化。2016年には、「東出昌大」さんと「黒島結菜」さんで日本テレビ系スペシャルドラマとして放送された。東出君は、この作品がテレビドラマ初主演だったらしい。

このドラマの共演により、黒島さんは、東出君の自宅に遊びに行くような親しい関係になったとされている。当時、東出君は、女優の「杏」さんと結婚されていた。黒島さんは、東出夫妻に大変可愛がられ、3人でタクシーに乗っていたとか、杏さんの手料理(レバニラ炒め)をご馳走になったなどという話が伝わっている。A-Studioでは、二十歳になったばかりの黒島さんが、東出君にウイスキーのロックを勧められて、それが初めてのお酒だったというエピソードも紹介された。

黒島さんは、保護犬の「コハダ」を飼っているが、そのサイトは、既に保護犬を飼っていた東出君から紹介されたらしい。なので、昨年、東出君の不倫が報道されたときは、焦ってしまった。しかも、お相手が二十代前半の清純派女優だというじゃないか・・・まあ、何事も無くて良かったけど。


ドラマのあらすじは、次の通り。

主人公「岬洋介」は、将来を嘱望される検事だったが、突然職を辞し、ピアニストへの道を歩み始めた。物語は「岬」が、鎌倉の名士「香月玄太郎」の屋敷に下宿することから始まる。

鎌倉の富豪「真田家」では、当主の「真田恭子」、銀行員の長男「徹也」、定職にも就かず漫画家を志望する次男「研三」、徹也の嫁「悦子」、徹也と悦子の娘で、ピアニストを目指している「遥」、遥の従姉妹で、両親を災害で亡くした「片桐ルシア」、家政婦の「三上紀美」が一つ屋根の下で暮らしていた。

当主の真田恭子に長年秘かな恋心を抱いていた玄太郎は、遥やルシアを自分の孫娘のように可愛がっていた。

ある夜、真田家を悲劇が襲う。遥とルシア、恭子が火事に巻き込まれたのだ。一命を取り留めたのは、遥だけだった。火事の起きた夜、遥とルシアの交わした最後の約束。「私のために、ドビュッシーの『月の光』を演奏してほしい。」従姉妹との約束を叶えるため、大火傷を負った身体を奮い立たせ、遥は、岬と共に再びピアニストへの道を歩き始める。

亡くなった恭子の遺言が発表され、6億円もの遺産を相続する権利を得る「遥」。だが、遥の身の回りで不可解な事件が次々と起こり始める。

 



ここからは、ミステリードラマの感想記事になります。思いっきりネタバレしてますので、ご注意願います。


ドラマは、CM抜きで95分なので、ルシアがイスラム教徒である描写が無いなど、原作や映画と比べてシンプルな設定になっている。映画では恋愛感情も描かれていたようだが、ドラマでの岬と遥は純粋な師弟関係だった。大火傷で顔の形成手術って、それだけでも大変なことだと思うのだが、あっさり通過。火事のシーンの次はもう退院。

音楽小説ということで、ドラマの全編でピアノ曲が流れていて、ドビュッシーの「月の光」が主題曲になっていた。で、「月の光」といえば、これ。

紀平梨花さん16才の演技である。ドラマのヒロインで「黒島結菜」さんが演じた「真田遥」も16才という設定だった。そういえば、梨花ちゃんは、フリー演技で「清塚信也」氏の楽曲を使っていたけど、ドビュッシーつながりは、単なる偶然だろうか?


物語の舞台は鎌倉だ。遥たちは、資産家の祖母と薔薇の花に囲まれた立派な洋館に住んでいるけど、ここって「鎌倉文学館」じゃないか。

岬洋介が下宿しているお屋敷の主人が、真田家の遺産相続の受託者でもある「北大路欣也」氏で、その家政婦が「キムラ緑子」さん。この2人の関係が微笑ましく面白い。北大路氏が死んだら、遺産は全て家政婦の彼女に譲られると思う。北大路氏は、偏屈な爺さんという設定だけど、こんな善人な北大路氏を見るのは初めてってくらい良い人だった。

あと、黒島さんのお父さん役が「正名僕蔵」さんで、彼女を虐める同級生の1人が「富山えり子」さんだった。黒島さんのドラマを見る度に、同じ人がいろいろな役で再登場している。役者の世界ってこんなに狭かったのか。

東出君が演じる主人公の「岬洋介」は、新進気鋭のピアニストで、現在は鎌倉音楽大学附属高校の臨時講師だが、司法試験を優秀な成績でパスした元検事という異色の経歴の持ち主だ。

岬洋介のキャラが、イマイチよく分からない。名探偵ガリレオの湯川のように頭脳明晰で冷めた変人かと思うと、感情をあらわにしたり、教え子を突き放す冷徹な指導者かと思うと、ヤバいくらいに優しかったりする。ピアノの指導をするときに、感情が高ぶって、ピアノをバンバン叩きだしたのには驚いた。僕が中学生の時の音楽教師は、ピアノに寄りかかっただけで怒ってたぞ。

わずか4小節の演奏から遥の才能を見いだし、足音を聞いただけで犯人にたどり着く絶対音感。D♭の弾き方で指の長さまで分かるなんて凄すぎる。平凡な才能しかないルシアをコンクールで優勝させてしまう指導力。音楽の前では誰もが平等という信念。そして、左耳の反応性難聴。ヒーローにハンディーは必要不可欠だ。才能のある奴は、それだけで格好いいし、羨ましい。でも、遺産相続でもめている場面で、いきなりショパンの「葬送」を弾き出したのは、マジなのかギャグなのかどっちなんだ。

ピアノコンクール当日、1曲目と2曲目の5分の休憩時間に控え室で痛んだ指を休める遥。ここで岬が真相を語り始める。こんな時に何を言い出すんだって、ツッコミを入れる北大路氏と僕。「君は片桐ルシアだ。」・・・って

え~!!!

ドラマの最初のシーンで、包帯でグルグル巻かれた顔を見たとき、僕は「犬神家の一族」の「佐清」を連想したけど、この直感は、間違っていなかった。成り済ましは、ミステリーではありふれたトリックだ。にもかかわらず、なぜ簡単に引っかかってしまったのだろう。

だいたい、黒島結菜と上白石萌歌なんて、体型を見れば・・・ってそういう問題では無いか。焼死体の身元判定なんて、DNA鑑定とかやって慎重に行われるはずだ。横溝正史のような昭和文学じゃあるまいし、取り違えなんて有り得ないってことなんだけど、ドラマなんだから良しとしよう。

このドラマ、ミステリーなんだけど、もの凄い事件が起きているわけではなくって、ジャンルとしては、音楽スポ根物語に近い。僕らは必死にピアノを弾く遥に、どうしても感情移入する。ここに落とし穴がある。

冷静な視聴者にしてみれば、成り済ましなんて見え見えのトリックだ。このドラマが黒島ファンに好評なのは、ファンであればあるほど遥に感情移入してトリックに引っかかり、大ドンデン返しってなるからなんだと思う。


事件を嗅ぎつけた刑事が、ステージ袖に現れて遥(ルシア)を監視するという、お約束のラストシーン。でも、この子の罪って何なんだ。

成り済ましだって、周りが勝手に取り違えたことが原因だ。顔の形成手術までされて、遥にされてしまったルシアこそ最大の被害者だろう。黙っていたことを責めるのも酷だ。ルシアが遥を羨ましく思っていたのは事実だが、妬ましく思っていたわけでは無い。遺産相続についても、遥は長男の子、ルシアは長女の子だから対等なはずである。利己的な動機など何も無い。生き残ったのが遥で良かったみたいな態度を周囲からとられたら、遥じゃないなんて云えるわけが無いじゃないか。

悦子の転落死だって、正体を知った悦子がパニックになって、石段から落ちたのであって、ルシアが殺意を持って突き落としたとは云えないだろう。瀕死の悦子を放置して、死に至らしめたのは事実だが、情況を考えれば情状酌量の余地有り有りだ。

ルシアを犯罪者扱いするのは間違っている。彼女は「不起訴」(未成年の場合は審判不開始)が相当だ。鎌倉には住みにくいだろうから、6億の遺産をもらって、海外留学でもして、ピアニストの道を目指して欲しい。ラストは、海外へ旅立つ空港のシーンでも良いくらいだ。


ドラマで描かれている内容は悲劇だし、ツラいものもあるんだけど、登場人物に悪人がいないし、前向きな終わり方なので、視聴後の心持ちは良い。黒島結菜さんの演技は、ぎこちないところもあったけど、「あしたになれば。」からは確実に進化していたし、ピアノの前に座っているだけで絵になっていた。雰囲気とか佇まいも女優の才能。「さよならドビュッシー」は、彼女の十代を代表する作品と云って良いだろう。

鎌倉文学館の薔薇も、そろそろ見頃を迎える頃かと思う。久し振りに訪れたいのだが、鎌倉は、今は怖くて、ちょっと行けない。悲しい。

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