【お笑いタレントの前田健さんが、24日に東京都内の路上で倒れ、虚血性心不全のため26日未明に搬送先の病院で亡くなりました。44歳でした。
前田さんは、東京生まれで、20歳のときにアメリカに渡り、ダンスや歌などを学び、帰国後はコメディアンを目指してタレント活動をはじめ、一人芝居やものまねなどで人気が出ました。
なかでも歌手の松浦亜弥さんのものまねがブレークし、多くのバラエティー番組で活躍したほか、近年はテレビドラマにも出演し俳優や振り付け師など活動の幅を広げていました。
前田さんは、24日の夜、夕食をとったあとに東京・新宿区の路上で突然倒れ、心肺停止の状態で病院に搬送されましたが、虚血性心不全のため26日午前1時すぎ、44歳で亡くなりました。】
「まえけん」さんの急死については、ワイドショーでも取り上げられていましたし、新聞にも出ていました。内容的には、NHKの記事と大差ないのですが、44歳という若さで、しかも路上での急逝には、考えさせられるものがあります。
前田さんは、近年は、振り付け師や役者さんとしての活動が主だったようですけど、ニュースでは、「松浦亜弥さんの物真似で有名な」という紹介を必ずされています。先ほども、ラジオで、「まえけんさんが亡くなって寂しいです。」といって「桃色片想い」をリクエストしたリスナーがいました。
前田さんは、はるな愛さんと違って、プロの芸人、モノマネ師ですから、物真似のレパートリーは、「あやや」以外にもたくさんあったはずですが、やはり、「まえけん」と「あやや」は、切っても切れない関係なんでしょう。
モノマネには、旬があると云います。御本人の人気が落ち着いて、マスコミでの露出が減ってきた時が旬だそうで、例えば、「キンタロー」さんが「前田敦子」さんの物真似でブレイクしたのがこれに当たります。世間の誰もが知っていて、でも最近ちょっと見ないなあって時ですね。松浦亜弥さんで云うと、「はるな愛」さんが「エアーあやや」でブレイクしたときがそれに当たるでしょうか。それから考えると、前田さんが物真似をしていた頃は、かなり早い時期と云えます。
この後、いろいろなタレントさんが、「あやや」の物真似をするようになりますけど、それらは、松浦亜弥さんの物真似というよりは、松浦亜弥さんを物真似している前田健さんのモノマネといった感じですから、前田さんは、「あやや」の物真似のスタンダードを確立した人物と云えると思います。
改めて、当時のモノマネ動画を見たんですけど、形態模写だけでなく、同じキーで歌いながらマネていたんですね。ただ、歌真似とも違っていて、全然似ていない中で、一点だけ似せて見せるという芸だったんだなって、今更ながら感心してしまいました。
前田さんは、松浦亜弥さんがデビューして間もない頃から目を付けて研究していたと聞きました。今話題だから物真似する、というよりは、自分が好きだからマネするという感覚でしょうか。前田さんは、自らゲイであることを告白していますし、「はるな愛」さんのことと合わせると、「あやや」というのは、その手の方々を惹きつける何か特別な魅力があったのかもしれません。
モノマネ師と御本人の関係は、持ちつ持たれつと云えるものばかりではありません。「コロッケ」さんと「野口五郎」さんの仲は、かなり険悪だといいますし、悪意に満ちたモノマネは、御本人のイメージダウンにつながることも少なくありません。
最近は見られなくなりましたけど、以前は、松浦亜弥さんのYouTube動画に、まえけんさんと絡めて揶揄する書き込みもよくありました。前田さんのモノマネが、松浦亜弥さんに対する世間のマイナスイメージに貢献してしまったことは否めません。
とはいっても、松田聖子さんも、散々、悪意に満ちたモノマネをされていましたから、人気の低下を物真似のせいにするのはどうかと思います。要は、モノマネのイメージを吹き飛ばすだけのパワーが、御本人にあれば良いだけの話ですから。
はるな愛さんは、松浦亜弥さんのライブのゲストに招かれたりしていますが、松浦亜弥さんと前田健さんの関係はどうだったのでしょうか。ネットに松浦亜弥さんからとされるコメントが掲載されています。
【コメント全文】
昨日からのニュースを見て心配していました。突然の悲報にびっくりしています。
私のことをおもしろ可愛くモノマネしてくれて、楽しく話題にしてくれて嬉しかったです。
マエケンさんのモノマネで自分のクセを知ったりして。
初めて共演させていただいた時には、私の体調やスケジュールまで気遣って下さったり、
プレゼントと一緒に手書きのとっても丁寧なお手紙をいただいたことを覚えています。
マエケンさん、「あやや」の思い出をありがとうございます。
いまはただ心からご冥福をお祈り致します。
松浦亜弥
コメントというのは、事務所が代筆して出す場合も多いかと思いますが、内容的には、御本人の気持ちが表れているように思います。特に最後の「マエケンさん、「あやや」の思い出をありがとうございます。」という一文ですよね。本人が自らのことをこのように表現するのは珍しいと思います。前田さんがモノマネしていた「あやや」は完全に過去の存在ということなんでしょう。
逆に考えれば、前田さんにとっても「あやや」をモノマネしていたのは、過去のできごとであったと思います。「あやや」のモノマネ師という偏ったイメージが前田さんの芸能活動の足枷になっていたこともあったはずです。
前田さんは、近年は、モノマネ師というよりは、振り付け師や俳優としての活動が多かったようです。「あやや」の物真似などしたところで知らない子も多くなった今こそ、世間のイメージから解放され、芸能界で活躍の幅を広げていく時だったのではないでしょうか。
44歳。新境地を拓いて行く適齢期とも云える時に、人生を終えざるをえなかった前田さんの無念さを思うと心が痛みます。