2021年5月16日日曜日

Ado「うっせぇわ」のヒットに思う。 ~初音ミクAIへの道:その5~

 18才の歌い手「Ado」さんのメジャーデビュー曲「うっせぇわ」(詞曲・編曲:syudou)が、大ヒットしている。さらに、4月には、4作目のシングルとなる「踊」を配信限定リリースして、こちらも話題になっているようだ。「踊」は、ボカロ界の重鎮DECO*27氏が作詞、作曲・編曲はGiga氏とTeddyLoid氏が担当したとあった。ボカロ界でも、ついに重鎮と呼ばれる人物が存在するようになったらしい。

DECO*27氏は、このブログでも取り上げさせていただいた、ボカロ第2世代の「重鎮」である。数あるボカロ曲の中から、今回は、これを貼り付けさせていただこう。

で、Giga氏の楽曲というと、思いつくのは、この曲である。

自慢しよう。僕は、オジさんでありながら、この2曲が演奏されたライブに、それぞれ参戦しているのだ。

さて、Adoさんの「うっせぇわ」が大ヒットして、社会現象にまでなっている。この前も、近所のスーパーで親に連れられたガキ・・・児童が「うっせぇ、うっせぇ・・・」と歌っていた。「オマエの方がうっせぇわ」なんていうツッコミは、もう使い古されて誰も云わなくなったようだから、云わない。

この楽曲がヒットした理由については、様々な肩書きの人たちが、いろいろな分析をしている。歌詞の内容が現在の若者の心情を代弁してるとか、2倍音を多用したサビが効果的であるとかだ。スーパーで出会ったお子様は、社会の閉塞感を感じていると云うよりも、まあ、毒されているだけだろう。「千本桜」の時もそうだったが、子どもはボカロと波長が合うみたいだ。

以前、このブログで「YOASOBIの『夜に駆ける』が、ボカロの歌ってみた動画みたいだ」という記事を投稿させていただいたが、今回の「うっせぇわ」に関しては、「みたい」ではなく、ボカロの歌ってみた動画「そのもの」である。

「うっせぇわ」は、過激な歌詞や、一度聴いたら頭から離れないフレーズが特徴といえるが、この類いの楽曲は、中毒系と云って、ボカロ界では、ずっと前から作られていたように思う。人間の歌手だったら、事務所NGとなるような歌詞だって、コンピュータは歌ってくれるからだ。だから、このような楽曲がネットに出てくることは、全然想定の範囲内なんだけど、僕が驚いたのは、これを人間の女の子が歌い、リアル社会に受け入れられたということである。

Adoさんが、ボカロの歌ってみた動画で、配信限定とはいえメジャーデビューしたのは、YOASOBIの成功を受けてのことだと思う。もはや、ボカロとは、コンピュータの歌唱を意味するモノではなく、音楽の数あるジャンルの1つってことらしい。

歌い手のAdoさんについては、小学1年生の頃から父親のパソコンでVOCALOID楽曲を聴き始め、小学校高学年になると、ニコニコ動画の顔を出さずに活動する歌い手の文化に興味を持ち始めた、とあった。彼女は、物心ついたときから、コンピュータが歌っていた世代だ。だから歌い手に対する意識も全然違うんだろう。

初期の頃の歌ってみた動画は、ボカロを歌ってみたけど・・・ダメだった、みたいな「全然歌えてねぇじゃん!」というツッコミを期待しての投稿だったように思う。顔を出さない理由の1つは、あくまでも遊びの延長だったからだ。それが、段々と歌唱自慢の場になっていって、誰でも投稿できるモノでは無くなり、ニコニコ動画の活気は失われていった。その一方で、難曲を歌い切る「歌い手」は、憧れの存在になっていったのだ。Adoさんは、歌い手として音楽を楽しむのではなく、歌い手をきっかけにして歌手を目指すのでもなく、歌い手になることを目的にできる世代なのだ。

もし、この楽曲をボーカロイドが歌い、普通にネット配信しても、世間からは見向きもされなかっただろう。「うっせぇわ」のヒットは、Adoさんの存在感有りまくりな歌唱があればこそである。そして、彼女がボカロ曲そのもの、つまり、人間の女の子というアドバンテージを排して、歌唱だけで勝負しているということは、歌い手として比べた場合、ボーカロイドは、人間には到底敵わないということになる。人工知能搭載型ボーカロイド「初音ミクAI」への道は厳しい。

今は、ボカロの歌ってみた動画(みたいな曲で)でメジャーデビューするって時代なのだ。「みくみくにしてあげる♪」の配信権を巡って炎上していた頃からすれば、考えられない話である。

Adoさんが、今年のNHK紅白歌合戦に出演するかどうかが、話題になっていた。僕的には、出ても良し、出なくとも良しってところだろうか。顔だって、出しても出さなくても良い。歌い手Adoが歌手Adoとして大成するには、顔出しNGみたいなキャラ作りは不要に思うからだ。もし出演するのであれば、GReeeeNの時のような視聴者を小馬鹿にした演出だけはやめて欲しい。それだけである。

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