2020年11月15日日曜日

炭焼きレストラン「さわやか」を語る(その5) ~パフェ歳時記~

 「パフェ」の語源はフランス語のパルフェだそうだ。英語で云うとパーフェクト、つまり完璧なスイーツという意味らしい。

昭和の子供にとって、パフェとプリン・ア・ラ・モードは憧れの的だった。街へ買い物に行った時などに、駅前の洋食レストランの食品サンプルを見てたから、パフェというのモノの存在は知っていたけれど、食べさせてもらったことはなかった。

コミック「美味しんぼ」に「とんかつをいつでも食べられる人生が丁度良い」という名言があるけれど、それで云うならば、「幸せな生活とは、いつでもパフェが食べられること」なんだと思う。

だから僕は、パフェが食べられるチャンスがあれば、必ずパフェを食べる。東京に出かけた時も、昼食が立ち食い蕎麦だったとしても、日本橋の千疋屋でパフェを食べた。最近は予算的に新宿駅地下のタカノに行くことが多いけど・・・。

そんな僕が自信を持ってお勧めするのが、炭焼きレストラン「さわやか」のパフェである。さわやかのお客の九割は、生焼けのハンバーグをオニオンソースで食べていて、それで満足しているようだが、食後にデザートを食べないのでは、さわやかを満喫したことにはならない。


今年最初のパフェは2月19日、静岡県産「紅ほっぺ」の「いちごパフェ」(税込み748円)だった。何で分かるのかと云うと、ちゃんと写真を撮っているからだ。おじさんがレストランでパフェを注文して、スマホで撮影している姿にドン引きされる方もいるかもしれないが、好きなんだから致し方ない。あの頃は、コロナ禍なんて別世界の話で、平和な世の中だったように思う。

やがて、非常事態宣言が出て、ゴールデンウィークを控えた4月18日から「さわやか」も休業することになった。で、このことが地元のテレビや新聞で報道されたものだから、駆け込みでお客が殺到する事態となった。テレビニュースのインタビューで、横浜から来たという人が「明日から休業だと聞いたんで」って答えていたが、「横浜なら上手い店がいくらでもあるだろうに、わざわざ来るんじゃねぇよ。」ってコメントが投稿されていた。首都圏の人たちをバイ菌扱いして申し訳ないと思うが、静岡県に感染者がいなかった頃なので、お許し願いたい。まあ、駐車場に横浜・湘南・横浜・品川・・・・春日部って感じで首都圏ナンバーの車がずらりと並んでいると、近所に住んでいる人も(さわやかでクラスターが発生したという話はないにしても)心中穏やかではなかったと思う。

この頃は、さすがの「さわやか」でも客足が少なくなっていたので、用意する食材も減らしていたらしい。それが、ニュースを聞いて客が殺到したモノだから、どの店舗でも夕方には食材が底を尽き、早々と閉店する事態になってしまったとのことである。

閉店している「さわやか」の前を通る度に、日本が普通で無くなってしまったことを実感した。


5月21日に「さわやか」は営業を再開したが、首都圏からの多くの客が集まる静岡県東部の店舗は、6月1日からの営業再開となった。

僕が「さわやか」に行ったのは、営業再開から2日後のことである。季節は、苺からメロンに変わっていた。入店したのは平日の夕方で、待ち時間はゼロ、店内には空席もあった。首都圏からの来店者はいなかったと思う。こんなに空いている「さわやか」は初めてだった。でも、少しずつ客が増えてきて、食べ終わって店を出る頃には、待ち時間も発生していて、いつもの「さわやか」に戻っていた。

静岡県袋井産「クラウンメロン」のパフェは、昨年食べた時よりも、メロンが厚かったように思った。きっと、店長さんがサービスしてくれたんだろう。

夏になって、さわやかは、また首都圏ナンバーの車で賑うようになった。伊豆半島の入り口にある函南店も観光客で賑わっていた。店の前のバス停に、旅行用の大きなトランクを持った観光客が座っているのをよく見かけた。彼女たちは、公共交通機関を使って伊豆半島を旅行し、そして「さわやか」に来ているのだった。きっと「るるぶ」とかにも紹介されているんだろう。


季節は、メロンから葡萄に変わった。

さわやかには、パフェの他に、パフェで使用するフルーツをお店でミキシングして作ったジュースもある。苺ジュースを一口飲ませてもらったことがあるが、正に苺そのものだった。メロンジュースは絶品だそうだが、飲んだことは無い。シャインマスカットのジュースは7粒の、巨峰のジュースには10粒の葡萄を使っているそうだが、値段は同じ。ジュースならば巨峰の方がお勧めである。

そんな時、さわやか静岡インター店で火災事故が発生した。「さわやか炎上」と云う見出しで新聞やネットニュースに出ていたので、何か不祥事でも起こしたのかと思った。普通は「ハンバーグレストランで火災」だろう。火災発生時の店は満席で、20人の従業員と80人の客がいたが全員無事とあった。

最初の頃は、火災を発生させたことを批難するコメントも投稿されていたのだが、やがて、満席の客を無事に避難させた従業員を褒めるコメントが主流となった。「さわやか」ファンの中には、もはや信者と云うべき奴らも多い。確かに、火がダクトに燃え移った時点で、消火活動から客の避難誘導に切り替えた店長の判断は的確だったと思うが、さすがに、火事を出した店を絶賛するのは如何なモノかと思う。さわやかのホームページには、火事を出したことの謝罪と、在店者に直接お詫びをしたいので申し出て欲しいとの告知が掲載された。・・・お詫びって何だろう、気になる。

葡萄の季節が終わる前にと、さわやかに行った。さわやかの「ぶどうパフェ」には、シャインマスカットが5粒と巨峰が3粒のっている。東部の店舗は相変わらず若者が多いが、地元のファミリーも戻って来ていて、いつもの「さわやか」の景色になっていた。

注文してしばらくしたら、バイトのお兄ちゃんが、すまなそうな顔をしてやってきた。巨峰が切れてしまって全てシャインマスカットになるけど良いかと聞かれた。やがて、税込み748円でシャインマスカットが8粒のっているパフェが運ばれてきた。季節の移り変わりを感じながら、巨峰抜きのパフェを食べた。


直にデザートメニューが更新されて、今は静岡県産三ヶ日みかんのパフェになっている。(缶詰の蜜柑では無い!)昨年は無かったから新作のようだ。値段は税込みで638円。三ヶ日みかんを丸ごと一個使っているらしい。三ヶ日(みっかび)は、静岡産の蜜柑の中でもブランドなので、他の産地よりも、ちょびっと値段が高い。とは云っても、三ヶ日みかんは珍しくもないが、さわやかのパフェとあっては、食さねばなるまい。しかし、静岡抹茶ティラミスも気になる。

そして年が明ければ、また苺のパフェが始まるだろう。こうして静岡県の一年は過ぎていくのだ。

0 件のコメント: