2019年2月16日土曜日

丸山純奈「どこから来たの?」にのせて、静岡県三島市をPRする

ちょっと前までだったら信じられないことだが、三島の街を観光客らしい人たちが歩いているのを見かけるようになった。三島は、古には伊豆国の国府が置かれ、東海道の宿場町として栄え、新幹線も停車する町なのだが、どこにでもあるような地方都市の1つにすぎないし、商店街もシャッターが目立ち始めていたから、不思議な光景である。

いつの間にか、三島市は「富士山とせせらぎの街」ということになっていたらしい。で、せっかくなので、今回は、いくつかある観光スポット(?)の1つで、僕の散歩道にもなっている「源兵衛川」を取り上げようと思う。

「源兵衛川」は、三島駅前にある「楽寿園」の湧水池「小浜池」を水源にして、市街地を流れる1.5kmの灌漑用水である。


写真を撮ったのは僕です。

三島は、富士山起源の三島溶岩流の末端に位置する街である。富士山に降った大量の雪と雨は、地下水脈となって溶岩流の末端である三島の街の至る所で湧水となって地表に出てくる。湧き出てくる場所は様々で、ガサゴソと積み重なった溶岩の下であったり、昔々の地震でできた小さな崖であったり、或いは民家の石垣の隙間であったりする。

小浜池は、三島では最も大きい(大きかった)湧水池だ。かつては小松宮の別邸があったそうだが、今は「楽寿園」という市立公園になっている。僕が子どもの頃は、楽寿園の中には遊園地や動物園があって、メリーゴーランドとか、お猿の列車とか、ジェットコースター以外のアトラクションは一通り揃っていたし、動物園には、ゾウやキリンやペンギンや、一日中動かないオオサンショウウオなんかがいて、近隣の学校が遠足に訪れるなど、賑やかなところであった。

しかし、それらは、あくまでも付け足しであって、楽寿園は小浜池であり、小浜池こそが楽寿園であった。その小浜池の水位は、昭和の中頃から、徐々に低下し始める。やがて、降水量の少ない時期には地下水位がマイナスとなり、自然湧水が止まるようになり、池が干上がってしまう期間も年々長くなっていった。

小浜池の水位の低下により、源兵衛川も流れの無い日が多くなった。水源を失った源兵衛川は、市の北側にある東レ三島工場から、地下に埋設された導管によって供給される使用済みの冷却水によって、かろうじてその流れを維持していた。しかし、その供給量は必要最低限のものであり、水の流れの乏しい川は、急速に汚染化が進み、源兵衛川は悪臭漂うドブ川へと変っていった。

そんな源兵衛川が再生できたのは、NPO法人「グラウンドワーク三島」の活動と、東レ三島工場の協力によるものだそうだ。

東レは、市や市民団体からの要望を受け入れて、冷却水の源兵衛川への供給量を増やすことになった。東レで使用している工業用水は、やはり富士山からの湧水である柿田川の工業用水だ。東レでは、工場で使用する水を製品の洗浄に使うものと、機械の冷却に使うものとに分けていて、その冷却水の中でもあまり使用していない綺麗で冷たい水を、源兵衛川に供給しているのだそうだ。放流のための施設の維持費や電気代は、年間数千万円にも上るという。

地下水位の低下は、工場群の地下水の汲み上げが関係しているのは確かだが、それは原因の1つであって、上流部の宅地化や市街地化などとの複合的なものだとされている。だから、東レが全責任を取る必要は全く無いのだが、東レはユニクロのヒートテックの素材を生産するなどしていて、業績は好調だそうだから、やってくれているのだろう。

で、そんな源兵衛川だが、昨年は、夏から秋にかけて、台風の影響などで地下水位が上昇し、自然湧水が大復活、川の水位が上昇して、遊歩道が水没してしまうという珍事が起きた。年寄りたちが、昔は川で泳いだものだと云ってたが、昨年の夏は本当に泳げたのである。
ただ、冬に入ってからは、水位は下がり、今は東レからの排水によって、流れが維持されている状況である。

実は、源兵衛川を流れる水が、東レ三島工場から供給されていることを、観光客に対する裏切り行為であるかのような意見を目にすることがある。確かに、川の水に足を入れて「冷たーい!」って云ったり、「透き通っていて綺麗!」とか云っている声を聞くと、なんとも微妙な気持ちにはなる。

ただ、これは内緒にしているわけではなくって、広く公開されていることだし、そもそも源兵衛川は、室町時代に「源兵衛」さんが開いた灌漑用水(人工の川)なわけだから、そこを流れている水が「東レ」三島工場で使われた冷却水(工場排水)であったところで、どういうものでも無い。
市街地のど真ん中を流れる川に、三島梅花藻が育ち、ホトケドジョウが住み、蛍が飛び交い、カワセミが訪れるのである。そして、それが、多くの人々の無償の努力によって、成り立っていることに価値があるのだ。

とは云っても、源兵衛川が、がっかり観光地であることは保証できる。まあ、わざわざ訪れるような場所ではないが、川沿いには、刀剣女子の聖地「佐野美術館」や、伏流水で生き締めした鰻が味わえる老舗の鰻屋、車で数分のところには、炭焼きレストラン「さわやか」もあるので、何かのついでならば、お勧めである。


最後に、東レからの排水が混じっているのは源兵衛川の話であり、市内にある他の湧水池や川は、ちゃんとした自然湧水であるので誤解なきようw

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

東レの冷却水はどこから源兵衛川に流れているの、大場川にも流している?

さんのコメント...

コメントありがとうございます。
この記事を書いた頃と比べて、源兵衛川も観光地らしくなり、嬉しい限りです。

導水管は地下を通って、楽寿園南口の蕎麦屋さんと公衆トイレの間にでています。
源兵衛川は農業用水ですから、田畑を潤したあとは、大場川を経て駿河湾に流れますから、広い意味では、大場川にも流しているといえます。
現在は、湧水量がとても多くて、遊歩道も水没しているくらいなので、冷却水は流していないと思います。