カレーライスの一番美味しい作り方は、説明書どおりにキッチリ作ることらしい。良かれと思ってやってるアレンジは、結局は余計なことなんだそうだ。とは云っても、アレンジしたくなるのが、今も昔も変わらない作り手の心情である。
「時かけ2016」で云うならば、そのアレンジは「あからさまな三角関係」と「主人公の天真爛漫さ」であろう。「時をかける少女2016」は「時かけ」×「三角関係」+「コメディー」って分析できると思う。今回は、原作からあまりにもかけ離れた3人と、演ずる3人の俳優について、いろいろ妄想してみた。
1.この仕打ちから立ち直れた浅倉吾朗ってホントに良い奴
まずは、三角関係の一角、「竹内涼真」さん演じる「浅倉吾朗」だ。芳山の幼馴染みである吾朗は、原作や旧作でも芳山に好意を持っているが、その態度は素っ気ない。単なる友人とは異なり、かといって恋人同士でもない、幼馴染みという関係をよく描写しているように思う。
幼馴染みが結婚まで至るってのは、漫画や小説の話で、実際の世の中では、そう多くはないだろう。子どもの頃だったら、近所に異性の友達がいることは珍しくないけど、思春期になれば自然と離れていくものだからだ。時かけ2016で、芳山と吾朗の幼馴染みの関係が高3まで続いたのは、芳山が吾朗を異性として意識していなかったからである。
一方、吾朗は、物心ついたときから、ずっと芳山のことが好きだったという設定になっている。私立の進学校でなく、県立高校に進学したのも、ボート部に入ったのも、芳山と一緒が良かったからだ。医学部志望なのに、文系のクラスにいるのも、同じ理由からだろう。ここまでくると、ちょっとヤバい。ドラマに出てくる県立藤浦東高校は、そこそこの進学校みたいだから、同じ学校に進学するのは良しとしても、部活やクラスまで一緒という歪な関係はいただけない。恋人になったとたんに崩壊しそうな感じだ。もしかしたら、芳山も本能的にそれを感じているのかもしれない。
七夕祭りでの告白は、タイムリープを使われて無かったことにされてしまったが、まあ、一度離れる良い機会だろう。この二人は、それぞれの進学先で、新しい彼女や彼氏を作った方が良い。何年か後に同窓会で久し振りに会って・・・みたいな話になるんだったら、それもアリだと思うけど。
彼のヤバさが、視聴者に伝わらないのは、俳優「竹内涼真」君の爽やかな演技のせいだ。最近は、週刊誌報道で好感度も微妙な涼真君だが、役者としては、3人の中で一番上手い。第3話での公開プロポーズでは、かなりツラい役どころだったが、揺れ動く感情を演じきり、多くの視聴者を味方につけてしまった。これは、フラれ役としては、逆に失格。明らかなミスキャストであろう。
涼真君が左利きなので、この並び。どう見ても大学生と高校生のお似合いカップルである。仲良し兄妹にも見える。ちなみに、菊池風磨君も左利きで、矢野先生を演じている加藤シゲアキさんも左利きらしい。
ヤバかった吾朗は、第4話で人間として一回り成長することができた。家出を止めようとタイムリープしてきた二人を受け入れる器の大きさ、周りの期待に応えようと努力する優しさ、そして、恋のライバルである深町に対する誠実さ、ホントに良い奴としか云いようが無い。
織姫のベガは、天頂付近にあって、明るいのでよく目立つ。夏の大三角形は、不等辺三角形で、実は、ベガに近いのは、アルタイルではなくデネブの方だってことを思い出した。デネブが、二人を近くで見ているような立ち位置にあるのも面白い。
2.チャラさに隠された深町翔平の純心
原作の深町のイメージは、冷静で神秘的な雰囲気を持つちょっと大人びた高校生ってところだろうか。それから比べると、時かけ2016の「菊池風磨」君演じる「深町翔平」は、真逆で違和感ありまくりだ。旧作のファンは、これだけでリタイアしてしまうだろう。このドラマのキャラ設定は、アニメ版に近いそうだが、アニメは原作から20年後の話だから深町では無い。
原作や旧作でも、深町は記憶操作をするが、それは自分がこの世界で生活するために必要だからである。ところが、2016の深町は、芳山の関心を引くために記憶を操作したかのような描写がある。幼い頃、犬に追いかけられた芳山を吾朗が助けたことがあった。深町は、それを自分が助けたことにすり替えるのだが、旧作では、深町が幼馴染みに成りすます過程で自然と記憶が変わったような描写だったはずだ。2016では、何で、あんな酷いやり方で記憶を乗っ取ったことにしたのであろう。あれでは、視聴者は誰も(菊池風磨担以外)彼を支持しなくなってしまう。対する吾朗が誠実な男として描かれている分、余計に彼が卑怯な男に思えてしまうのだ。
とは云え、未来は恋が存在しない世界という設定は、それなりに面白い。時かけ2016は、恋を知らない未来人が現代にやってきた物語だ。そういう視点でドラマを見ていると、深町という男の印象も変わってくる。
深町は、吾朗が芳山に告白しようとしている話を聞いて、恋愛に興味を持ち、肉食男子入門というへんてこりんな指南書で学び始めた。彼には全てが新鮮に思えたであろう。夏祭りで事故に遭い、芳山にピンチを助けられたことで(指南書の通りに)芳山への恋が芽生える。
彼の行動が、一途に突っ走っているのは、純粋な心の持ち主だからであり、非常識に思える行為は、彼が恋愛に関して無垢だからだ。ドラマ中にも、そういうシーンがちょいちょい挟み込まれているのだが、それが視聴者に伝わらないのは、彼のチャラ男設定にある。このキャラクター設定のために、彼があざとい方法で、吾朗から芳山を横取りしたかの印象を与えてしまうのだ。
そもそも、第1話で芳山は吾朗の告白を受けなかったのだから、深町が芳山に告白することは、裏切りでもなんでもない。ところが、第3話での公開プロポーズでは、ジャーニーズファン以外の視聴者の多くを敵に回してしまった。これは、王子様役としては失格。明らかなミスキャストであろう。
深町と吾朗の対照的なキャラ設定は、面白いわけだから、そのまま配役を交換したら、しっくりきたように思えてならない・・・まあ、それだと当たり前すぎるけど。
3.黒島のウザ可愛いキャラの原点、芳山未羽
ヒロイン芳山未羽のキャラは天真爛漫の一言に尽きる。これも旧作とは真逆の設定だ。リアルな黒島結菜さんは、物静かで大人しい女性とのことだが、最近のドラマでは元気な女の子を演じることが多い。で、その原点が、この芳山未羽にあるように思う。
芳山は、とにかくキャンキャン怒っているシーンが多い。「怒」というのは人間の醜い部分だけど、これを嫌味無く演じられるのが、女優「黒島結菜」の良さだ。(だから、同じような役ばかり回ってくるのだろうけど)火事を予言したことから、放火の疑いでしょっ引かれ、取り調べの刑事に臆することなく、タイムリープできると言い張るメンタルの強さも、小気味よい。
芳山が振り回しているNikon F3は、シャッターを押す度に手動でフィルムを巻き上げるマニュアルカメラだが、そんな動作も自然にできてるのも可愛・格好良い。ファインダー内の表示が、何を撮るときも絞り5.6でシャッタースピード250分の1なんだけど、まあ、そこはよしとしよう。手動でピントを合わせている描写があれば完璧だったのに。
写真が好きで、写真を学べる東京の大学に進学したいと語る設定は、リアルな黒島結菜さんそのものである。彼女が、日テレ新土曜ドラマの主演に抜擢された時、これを時期尚早と見る人も多かったから、代役だったのではという噂もあった。しかし、役のハマリ具合を見ると、芳山未羽は、彼女のために用意された役柄に思えてならない。
高校の夏服は、シンプルすぎるポロシャツだが、ショートカットで、黒い大きな瞳がクルクル動く黒島が着るとホントに可愛い。ただの白いポロシャツがこんなに似合う女優なんて、そう多くはないだろう。
それにしても、吾朗からの告白の受け流し方は酷い。時間を戻された吾朗には「告白したかったけど邪魔が入ってできなかった」という記憶が残るだけだが、ドラマを見ている側からすると、告白してはタイムリープして無かったことにされるシーンが何度も続くわけだから、竹内涼真君がマジで可哀想になってきて、見ているのがツラかった。で、挙げ句の果てに、目の前でキスシーンを見せられるのだから、たまったものではない。
芳山は、なぜここまで吾朗を邪険にするのだろう。やはり、この二人は、一度離れるべきである。芳山だって、他の男と付き合ってみれば、吾朗の良さも分かろうと云うものだ。
物語の最終回、芳山は、深町を未来に返すために、7月7日の理科準備室にタイムリープした。そこで全てをリセットして物語は終わる。深町との初恋は想い出だけになった。
リセットされたということは、失恋を乗り越えた吾朗の成長もなくなってしまったということだ。やり直される、深町のいない夏。吾朗は、七夕祭りで芳山に告白するだろう。芳山には、今度はきちんと受け止め、自分の気持ちをちゃんと吾朗に伝えて欲しい。
今から逃げない・・・この夏、一番成長したのは「芳山未羽」だろうから。
お終いは、第3話のダイジェストとエンディングテーマ「恋を知らない君へ」で。
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