2015年5月22日金曜日

5球スーパー

 昔、「初歩のラジオ」っていう月刊誌がありました。あと「ラジオの製作」なんてのもあって、それぞれ「初ラ」「ラ製」て呼ばれていて、僕ら理系小僧のバイブルでした。
 完全に信者となっていた僕は、学校からの帰り道、ゴミ置き場に古いテレビやステレオなどが捨てられているのを見つけると、急いで家からラジオペンチを持ってきて、抵抗やコンデンサーや真空管、あと名も知らない部品類を外して、段ボール箱に入れて宝物のように大切にしていました。

 中学生ですから、さすがに自分でラジオの設計図を引くことはできませんでしたが、雑誌に掲載されている設計図を基に宝箱から部品を調達し、ゴミ捨て場から調達できないトランジスターなどは、ジャンク屋さんで買って組み立てていました。

 そしてついに、「5球スーパー」っていう究極の真空管ラジオの製作に挑戦することになりました。ジャンク屋で中古の真空管を買ってきて、アルミシャーシを奮発して購入、夜中まで「はんだごて」を握って製作に没頭しました。
 ようやく完成し、では早速と、電源コードをコンセントに差し込んだ瞬間、バチッって感じでラジオから火花が出て、周りが真っ暗になりました。家のブレーカーのヒューズを飛ばしてしまった僕は、親父にひどく怒られました。
 その後、何回か飛ばしたので、ヒューズの交換は得意になりましたけど・・・。

 高校生になって、もう一度5球スーパーに挑戦しましたけど、その時も音は鳴りませんでした。恐らく家の壊れたステレオから転用したバリアブルコンデンサーのせいだと思います。ちゃんとお金を出して買えば良かったのかもしれません。でも、当時すでに真空管ラジオ用のバリコンなんて入手困難でしたし、何より100%買った部品だけで作っても、意味ないような気がしていたんですよね。この気持ち分かっていただけますでしょうか。

 ネットで検索すると、21世紀の今でも5球スーパーを製作している物好きな人がいて、6BE6、6BA6、6AR5なんていう真空管の写真を見ると胸が熱くなります。真空管って人間が作り出した最高の部品だと思います。電化製品の1パーツにすぎないのに、眺めているだけで、こんなにもワクワクさせてくれるんですから。

 最近、真空管式のステレオアンプが復活しています。音質がいいって云われていて、かなりの高額にもかかわらず結構人気のようです。実は、真空管式の方が音質がいいという科学的な根拠ってないんだそうです。でも、電源を入れて、仄かに光り始めるヒーターを眺めていると、それだけで素敵な音楽空間が演出されているわけで、それも音質の重要な要素って云うことなんでしょう。

 「5球スーパー」ですが、今では、部品も入手困難なので、作ろうとすると10万円近くかかるそうです。

2 件のコメント:

よかいぬ さんのコメント...

私は本当に詳しくないです。
近々のタモリクラブでも真空管アンプの聴き比べ企画がありましたね。
タモリさんもゲストのコブクロさんも音の違いに感嘆の声を上げていました。
CDの音源は人間の聞こえない上下の音域はカットしているとか・・・・
真空管やレコードアナログ版などは何か人間に訴える音域があるのでしょう。
松浦さんのClick you Link meもアナログ版があるとの事、聞いてみたい気もします。

さんのコメント...

独りよがりな昔話にお付き合いいただきありがとうございます。

タモリさんの番組は、スピーカーなどの条件を同じにして比べていたんでしょうか。
見たかったですw

真空管は、アナログ信号の処理に適したというか、アナログしかない時代に作られたパーツですから、CDを再生していたのでは、気分的な満足感以外に意味はないかと思います。
しかし、最近は、レコード盤も復活しているようなので、真空管アンプの活躍の場も意外とあるのかもしれません。あと、ハイレゾなんてのもありましたね。
まあ、オーディオは、趣味の世界ですから、本人が満足かどうかが全てだと思います。
僕は、人間ドックの聴力検査で「高音域が聞き取りにくくなっていますね。」なんて云われちゃいましたから、多分ハイレゾは、宝の持ち腐れになりそうですwww

真空管アンプの本当の楽しみ方は、自分で組み立てることにあると思います。
キットでも構わないので、自分の作ったアンプから音が出た時の喜びは、何事にも代えがたいと思います。
僕も子どもの時に、初めて組み立てたトランジスタラジオのキットから音が出た時のうれしさは、今でも覚えています。

初音ミクもそうですが、今は、自作といっても、動かしているのは、マウスとキーボード。作られた作品もバーチャルにすぎません。
昭和の時代のリアルな手作りが懐かしいです。