2015年3月14日土曜日

松浦亜弥の「草原の人」

 よくネットに松浦亜弥を「松田聖子2世」と評するコメントがあるが、これは慣例的な褒め言葉であり、実態を表したものではない。笑われるを覚悟で云うならば彼女は、「美空ひばり2世」である。
 実際、彼女自身、その辺を意識していたと思わせるものがある。2003年頃のライブで耳につく癖のある歌い方などは、まるで美空ひばりをマネてるかのようだ。そして、年代的に全く重ならない両者を結びつける曲が「草原の人」である。

 美空ひばりに「草原の人」の詞を託された故 長良じゅん氏は、26年もの間、この詞を歌うに相応しい歌手の出現を待ち続けた。そして、アイドル歌手としてデビューしたばかりの松浦亜弥に出会う。
 芸能界の超大物であった長良氏が、松浦亜弥を大変可愛がっていたのは、当時の記事にも出ている。氏が「あやや」を若い頃マネージャをしていたという「雪村いづみ」に喩えるくだりは、ほのぼのとしていて感動すらおぼえる。

 つんく♂氏は、レコーディングにあたって「美空ひばりはあまりにも偉大だが、同い年で比べればお前も負けてはいない。」と彼女を励ましたという。天才少女として数多くの伝説を持つ美空ひばりは、15・6歳の時には、すでにスーパースターであったから、さすがにこの言葉は褒めすぎではある。が、やはり松浦亜弥は、「美空ひばり2世」であり、そう呼ばれるにふさわしい才能を持っていたのは確かだ。

 しかし、それは、彼女の多くのファンが求めるものではなかったし、すでに「ひばり2世」というブランドが世間にインパクトを与える時代でもなかった。この曲が、その後の彼女とファン、制作サイドの3者のすれ違いの始まりとなってしまったのは何とも残念なことである。確かに「草原の人」はアイドルソングではない。だが、大人になった松浦亜弥が歌って似合う曲でもない。やはり16歳の女の子が歌うに相応しい曲なのだ。
 
 「草原の人」のベストテイクは2002年秋「めっちゃライブ」。このライブ、何となく声が出てなくて、FIRSTコンサートに比べても全体的にイマイチだが、この歌に関しては、この後の、どのライブよりも素晴らしい。長良氏をして「あややに歌わせて良かった」と言わしめたテイクである。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いまから45年ほど前21歳のころ、わたしは漫画家をめざして福岡から上京し、中目黒駅の近くに住んでいました。恵比寿にあったデザイン会社に勤務して、徹夜明けの日曜日は代官山を通って歩いて渋谷にあるワルツという喫茶店によく行っていました。中目黒から渋谷へ向かう南平台の坂道の途中の白い家がありました。加藤和枝さんの家です。通称「ひばり御殿」と呼ばれていたそうです。亡くなられた後は息子さんの和也さんが今も住まれているのでしょうか。その後わたしはアートディレクターとしてコカ・コーラのパッケージデザインを開発する仕事など外資系代理店の仕事を長く担当しました。現在は京都に住んで書道文化活動をしています。「草原の人」を聴くと若いあのころの南平台の坂を歩いたのを懐かしく思い出します。AsianX-issychan(智楊君)

さんのコメント...

貴重で素敵なエピソード、ありがとうございます。
今となっては、この歌を知る人は、いないかと思いますが、
松浦亜弥さんの「草原の人」には、
美空ひばりさんをイメージさせる何かがあると云うことでしょうか。