2019年11月2日土曜日

狩野川台風に匹敵する「台風19号」が直撃した狩野川流域の話

10月12日に台風19号が、静岡県の伊豆半島北部に上陸し、東日本各地に甚大な被害をもたらしました。

NHKのサイトからの引用です。
台風19号について、気象庁は、河川の氾濫が相次ぎ、静岡や関東で1200人以上が犠牲となった1958年の「狩野川台風」に匹敵する記録的な大雨となり、大雨の特別警報を発表する可能性もあるとして、厳重な警戒を呼びかけました。
狩野川台風???!

もはや静岡県人でさえ知らない「狩野川台風」を持ち出してくるとは驚きました。最近は、「今までに経験したことの無い」みたいな表現が多かったように思いますけど、今ひとつ伝わっていないと判断したんでしょう。だからと云って、誰も知らない60年以上前の台風を持ち出してくるとは・・・。

ただ、知らない方が逆にインパクト有りってことでしょうか、皆さん一斉に検索されたようで、このブログで一年前に投稿させていただいた記事にも、ちょびっとだけアクセスがありました。


少しはお役に立ちましたでしょうか。

しかし、今回の台風は、長野・福島・宮城など、狩野川台風とあまり関係の無かった地方に、大きな被害が出てしまいました。
「今回、類似台風として狩野川台風を持ち出したのは、予想される現象や災害の程度が著しいことや、大きさや進路・勢力・北上スピードなどが似ていることから説明に用いようと判断した。一方で、類似台風を持ち出して呼びかけることは非常にリスクがあるとも考えている。災害の起こる場所や広がりについては事例ごとに大きく異なる」と述べ、狩野川台風で被害がなかった場所が安全というわけではないと強調しました。
なるほどです。でも、このような発言の部分って報道されませんでしたから、今回の発表については、評価の分かれるところだと思います。

とは云え、北伊豆地方の人たちにとって、狩野川台風に匹敵するという言葉は、かなりのインパクトだったようです。
伊豆市修善寺地区では、台風の接近に備え、マニュアルに沿って「避難勧告」を出したようですけど、いつもだったら避難して来る人なんてほとんどいないのに、大勢の人たちが避難してきたものですから、慌てて避難所を増やした、なんて話が伝わってきました。

僕の周りでも、狩野川台風に匹敵という発表に加えて、千葉県を襲った台風15号による強風と長期停電の惨状が、連日マスコミから報道されていたこともあって、窓ガラスに養生テープを貼ったり、水やカップラーメンを買い漁ったりと、かなりの緊張感を持って台風に備えていました。
近所のスーパーでは、水やラーメンの棚が空っぽになっていましたけど、不思議なことにポテトチップの棚も空になってました。いざとなったら、ポテトチップで生き延びようと云うのでしょうか。

で、雨も風も凄くって、伊豆半島北部の函南町や伊豆の国市などでは浸水被害が出ましたが、戦後最大級の台風が真上を通り過ぎて行った割には、(一部地域を除いて)大災害に見舞われることも無く、ホッとした次第であります。

今回、狩野川流域が千曲川や阿武隈川流域のような事態に陥らなかったのは、狩野川台風から7年後の昭和40年に完成した狩野川放水路によって、狩野川の氾濫を防ぐことができたからとされています。


ただ、狩野川の水位の上昇は、ハンパないものがありまして、朝の5時頃から放水路を開放していたにも関わらず、昼過ぎには既に危険な水位まで上昇していたとのことで、モニターを見ていた関係者は越水を覚悟したと聞きました。


今回の放水によって、狩野川の水位は約1.8m下がったと推定されるそうです。近年最も大量に放水されたとされる平成19年の台風9号の放流では約3.7m低下したそうですから、それと比べると今回の狩野川の流量がいかに多かったかが分かります。ただ、この1.8mのおかげで、狩野川の堤防はギリギリのところで越水や決壊すること無く済んだわけであります。
今回の件で、第2放水路の必要性も考えられているようですが、実現には多くの困難がありそうです。

放水路のおかげで、狩野川本流の氾濫は防ぐことができましたが、支流域では浸水被害が発生しました。


函南町畑毛温泉も浸水の被害がありました。柿沢川の堤防下には函南桜の並木があって、毎年、お花見に行っていたのですが、桜の木が完全に水没しています。
昔からの家は、全て地区を通る県道の東側(山側)に建てられていて、県道の西側(川側)には、田畑や新しく立てられたアパートがあります。上がってきた水は、県道のところで止まりました。昔の人たちは、どこまで水がくるのか、ちゃんと分かっていたようです。


本流と支流との合流地点では、本流の水位が上昇すると、支流への逆流を防ぐために水門を閉め、ポンプを使って強制的に本流へ排水することになっているそうです。狩野川流域には、そのための排水機場が数多く設置されています。


函南町では、大場川や来光川などの支流が狩野川と合流しています。これらの支流は箱根山麓を水源としていて、箱根に降った大量の雨水が流れてきたものですから、排水機能が追いつかなくなって、浸水してしまったようです。


年寄りの話によれば、浸水被害があったところは、昔から水が漬くような場所だったそうですけど、最近は、そういう土地にも家が建ったり、商業施設が作られたりしていますからね。
パチンコ屋さんも浸水被害にあってしまいました。広い駐車場のある大きなパチンコ屋さんです。ここは、堤防のすぐ外側で、国道よりも低いところにあって、遊水池みたいな所です。パチンコ台も全部水に浸かって、しばらく休業してましたけど、同じ場所で営業再開しました。また浸水したらどうするんだろう。


今回の台風19号は、静岡県外の被害があまりにも大きかったものですから、狩野川流域の被害状況については、県内でさえあまり報道されませんでした。函南町の方が、他県のニュースを見てしまうと被害を訴えるのが申し訳なくなる、みたいなことをインタビューで答えてました。特産のイチゴなどの農業被害もありますから、決して大したことで無くはないんですけどね。
人的被害がなくって報道されなかったのは、良しとすべきことなのかもしれませんが。


今回の台風によって、一週間ほど断水した地域もあって、給水車が出て活動をしていたようです。給水活動自体は行政の仕事なんですけど、それを受け入れるのは各自治会です。同じ町内でも、自治会が機能している地区とそうで無い地区があって、機能しているところは受け入れ体制もしっかり整い、トラブルも無かったそうですから、日頃から高い防災意識を持つことが大切だと改めて知った次第です。

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