2019年3月21日木曜日

「紀平梨花」2019世界選手権SP ~逆転するからって、相手にアドバンテージを与えるにもホドがある~

まずは、ザギトワ選手を絶賛させていただくことから始めたいと思います。

今シーズンは、身体的にもメンタル的にも厳しいのでは、と云われていましたけど、一番重要な大会できっちり結果を出してきたのは、さすがオリンピックチャンピオンです。
今まで、ロシアの女子選手は、シニアになってからの選手生命が、あまりにも短いことが問題になっていました。今シーズンのザキトワ選手の精彩を欠いた演技を見て、ザギトワ時代は終わったのではないか、などと考えていましたが、失礼極まりないことでした。

とにかく、冒頭の3ルッツ+3ループが圧巻でした。着地した右足でそのままセカンドジャンプするという、曲芸飛行で云うところのタッチ&ゴーな必殺技。これほど見事な3Lz+3Loを(テレビですけど)リアルタイムで見たのは記憶にありません。ジャンプの基礎点10.8は、紀平梨花選手の必殺技である、3A+3Tの基礎点12.2に迫るモノで、この日の出来映え点2.44を加えると完全に逆転しております。

ロシア女子選手の4回転や連続ジャンプというのは、体のバネと身軽さによって可能とされていて、体型が変化していくシニアになってからが課題だったのですが、シニア2年目のザギトワ選手がクリーンに跳んだということは、彼女がこの技を維持するだけの筋力をも身につけているということですから、ザギトワ恐るべしです。

ショートプログラムにおいて、3アクセルを跳ばなくても80点台を取れるというのは、ただただ凄いとしか言い様がありません。

これで、ザギトワ選手の優勝の可能性は極めて大きくなりました。紀平選手が超絶なフリー演技をしたとしても、ザギトワ選手がフリーの得点を140点台に乗せれば、もはや追いつくことは不可能。ザギトワ選手にとっての140点未満というのは、ボロボロな演技なわけで、そんなザギトワ選手なんて見たくもありませんからね。

で、紀平梨花選手なんですけど、3アクセルを失敗することは、ある程度想定されていたとしても、最終グループの6人に残れなかったのが痛いですね。通常の大会でしたら、70点台に乗せれば、最終グループには入れるのでしょうけど、さすが世界選手権。どの選手もきっちり結果を出してきましたから、甘くは無いというところでしょうか。
明日は、フリーで高得点を出して最終グループにプレッシャーをかける、という構図にしたいところでしょうけど、最終グループにない選手が優勝するというのは、世界選手権のような大きな大会では、まず有り得ない話ですし、あってはならないことでもあります。

あとは、伸び伸び滑って、表彰台狙いって感じになってしまいました。


衣装も振り付けも可愛いし、音楽もステキなんですけど、何か彼女と合わないものがあるんですかね。これだけSPでの3アクセルの成功率が悪いというのは、完全にメンタルな問題でしょうか、フリーでは跳べてるわけですから。

何度も云いますけど、勝つことだけを考えれば、SPでは2アクセルで十分です。最初から、2アクセルであれば、75点くらいは貰えます。普通、どの選手もSPで75点あれば大喜びじゃないですか。
ただ、メンタル的な問題を抱えているとなると、演技構成を落としたとしても、それもまた失敗してしまう可能性があるわけです。

となると、3アクセルにチャレンジし続けるしかない。

とは云っても、今年のSPは完全に失敗癖が付いちゃってますから、来シーズンは、音楽の曲調をテンポのあるものに変えるとか、3アクセルは2番目に跳ぶなどの構成を変えることも必要になるかと思います。

あとは、転んでもいいから跳ぶ。これだけですね。フィギュア選手は、跳んだ瞬間に成功するかどうかが分かるそうで、無理だと思うと本能的に転倒を避けようとするらしいです。
ですけど、1アクセルになることだけは避けなくてはいけません。SPでは1アクセルは0点だからです。
3アクセルは高得点の技です。たとえ転倒して減点されたとしても、3.5点は残ります。これは2アクセルの基礎点とほぼ同じです。だからこそ、3アクセルにチャレンジする価値があるわけです。

まあ、いくら逆転の紀平だからと云って、相手にアドバンテージをあげるのもホドがあるというものです。これで、フリーでは、3アクセルを2本入れる構成で臨むしかなくなりました。大成功して表彰台に上るか、大コケして圏外に沈むか。どちらかしかありません。

でも、紀平梨花という選手は、ジュニア時代からずっとそういう選手であったわけで、今シーズンの国際大会6連勝というのは、たまたま運が良かっただけに過ぎません。

SPで7位なんて選手が、表彰台を狙うなんて、通常では有り得ないこと。完璧な選手を応援するのも、見込みの無い選手を応援するのも、或る意味ツマラナイことで、そこが梨花ちゃんの最大の魅力であるわけです。     

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