2019年6月23日日曜日

「黒島結菜」と NHK土曜歴史ドラマ「アシガール」の世界観

ここのところ、暇さえあれば「アシガール」を見ていました。何周見たか分かりません。オンデマンド月額972円の元金は、完全に取り戻した気分です。
物語の深読みに関しては本物の「アシ・ラバ」さんに敵うわけもありませんが、まあ、ライトな立場で感じたことを書いていきたいと思います。

まずは、ファンの方が作成した動画です。楽曲は奥華子さんの「ガーネット」。タイムトラベルつながりということもあって、世界観はピッタリ。まるで主題歌のようですね。


コミック第1巻は、ドラマでは1・2話に相当するようで、ここまでがタイムワープ1往復分になっていました。で、本編12回の放送分は、コミックでは8巻までになっています。さらに、本編の1年後に放送されたSP版は、コミックの9巻から12巻の序盤までに相当するようです。

公式の紹介動画は、こちら



SPと云うと、オリジナルストーリーの後日談が多いと思いますが、アシガールに関しては、本編終了後に連載で進んだ話を、SPとしてまとめて制作したようです。原作とドラマがここまでリンクしている作品も珍しいことだと思います。
そして、コミックのネタバレサイトを見て思ったのは、このドラマが、原作に沿って忠実に制作されていることでした。登場人物でいくつか省略されているところはあるものの、あらすじに関しては、ほぼ変更点が無いようです。あるとすれば、速川唯の母親が開業医なことでしょうか。その方が、瀕死の若君が現代に送られたときに、救急車に乗せることなく自宅で治療できますからね。便利な設定であります。あとは、駆け比べをした時期と、若君の母親が幼いときに亡くなっていること、それから・・・あれぇ、意外と多いかもです。

ラブコメディーとはいえ、NHKの時代劇班が本気で制作していますから、見応えはあります。関連記事のリンクは、こちら。


そして、物語の舞台は永禄2年・・・ってことは、大河ドラマ「麒麟が来る」と同時代ですね。関連記事のリンクです。


コミックはファンの要望を受けて、今後も連載を続けるそうですが、最新の12巻をもって一応の結末を迎えています。12巻では、新たに古文書が発見されて、それによると戦国時代に戻った二人は結婚し、若君は母方の実家である御月家を継ぎ、名君として彼の地を治め、生涯側室を持たず、子宝にも恵まれ、小藩ながら家は明治維新まで続くことが紹介されています。映画ならば、エンドロールで流したくなるような内容ですね。SP放送時には、12巻は発売されていませんでしたから、きっと幸せに暮らしているんだろうなぁ、と思わせる場面でドラマは終了しています。
御月家の人々と速川家が会ったら、「お宅のご先祖はウチの娘なんですよ」って会話が成立するわけですから、凄い結末です。
                                   
原作が完結していないのですから、続々編のドラマ化も有り得る話ですけど、速川唯は若君と結婚しましたから、今後は、2人で協力して国を治めていくという、全く別の物語になっていくと思います。まあ、殿様とその奥方を、大人になった「伊藤健太郎」君と「黒島結菜」さんが演じるというのは自然なことですから、とことん続編を作り続けていけば、子役が大人になっていって「北の国から」みたいになるかもしれません。

タイムトラベル物は、「時をかける少女」のように、最終的には元の世界に帰らざるを得なくなり、恋愛は悲しい結末になるのが普通かと思います。それと比べると「アシガール」の終わり方は、異色の超ハッピーエンドです。12巻の後書きによると、原作者の「森本梢子」さんは、連載を始めるに当たって、悲しむ人のいない終わり方を目指そう、と決めていたようですから、その通りの結末と云えましょう。二人揃って現代にタイムワープさせたのも、彼女の実家に二人で挨拶にいったみたいなもので、唯の両親が、納得の上で娘を戦国の世に送り出すためには、必要な伏線だったのだと思います。


さて、アシガールは、物語としては連続していますが、テレビ放送的には、本編からSPまで1年の隔たりがあります。で、この間には、出演者の方々にも変化があったようです。

弟、尊役の「下田翔大」君は、芸能事務所との契約が終了して、既に芸能界から引退していたのですが、この作品限定で復帰したとありました。(現在は、ソニーミュージックに所属)

そして、黒島結菜さんにも、大きな変化がありました。
アシガールの収録期は、彼女にとって、アイドル系若手俳優から、大人の女優への過度期にあたります。彼女にとっての2017年は、だいぶ辛い時期だったようで、東京暮らしと、女優業と、学生生活の両立が困難になり、精神的にも追い詰められていたとありました。10代を無我夢中で走り続けたタレントが、二十歳を迎える頃にアイデンティティー・クライシスに陥るのは、よくある話ですが、彼女もだいぶ追い詰められていて、女優を辞めようかとも考え、心配した両親が沖縄から駆けつける事態になったそうです。

彼女が通っていたのは、日大芸術学部写真学科です。プロフィールで、得意教科は数学と物理と紹介されていますが、女子で物理が好きと言い切るのは、なかなかのことですので、かなりガチなリケジョのようです。
講義を聴いていれば単位が貰えるような文系学科と違って、写真学科のような技能系の学科は実習とかレポートとか忙しいでしょうから、仕事と両立させるのは、かなり大変だったと思います。しかも、通っていた大学では、学生生活に馴染めなくって、いつも独りぼっちだったとありました。最終的には、大学を中退することで心の整理をつけたようですが、休学ではなくって中退であることに事態の深刻さを感じます。

そして、多くのファンが指摘しているように、SPでの黒島さんの容姿は明らかに変化しています。番組掲示板に「人って着飾れば良いのではない。たとえ汚れた姿でも、気持ちが元気なら魅力があるんだと。」という書き込みがありました。
薄汚れた足軽姿、汚しを入れたメイク、そんな唯之助をなぜ可愛く思えるのか。それは、女優「黒島結菜」の気持ちが元気だったからと云うことになります。そして、そういった内面から出てくる魅力には、どんな名演技も敵いません。
SPでの唯之助が、悪いわけではありません。ただ、前編を見てしまったファンからすると、やはり物足りなさを感じてしまうのは、致し方ないことだと思います。
黒島結菜さんにとっての2017年というのは、唯之助を演じることが出来るギリギリの時だったと云えましょう。


物語の終盤では、未来の尊に、二人用の新型タイムマシーンを製作してもらうためのメッセージを送る場面があります。それは或る意味、禁じ手でありまして、それが通用するんなら、何だって出来てしまいます。ちゃんとしたSF小説であれば、こういう手法は使わないと思いますが、アシガールは、ラブ・コメですから、良しとしましょう。

さらに、若君の墓石が発見される場面では、屋根に突き刺さった刀の絵が刻まれているんですよね。それは、戦国の世でのラストシーンなわけです。つまり、最初から、唯がタイムワープすることが前提で歴史ができていたことになります。

実は、物語の冒頭部分でも、羽木家の滅亡について、羽木家が歴史から消えたのは確かだが、その経緯は郷土史の長年の謎になっているとされています。つまり唯がタイムワープする以前から、滅亡に関しては、含みを持たせているんですよね。

そもそも、御月家は、唯がタイムワープする以前から、歴史的に存在していたわけで、その御月家の初代藩主が、唯の産んだ子だというのだから、歴史が完全にループしている。
つまり、尊が未来の自分に製造させた新型のタイムマシーンで、唯がタイムワープして若君を助け、若君は御月家の礎を築くという、一連の行為は、この世界の歴史では折り込み済みの事柄だったことになります。

この世界観は、独特のものです。従来のタイムマシン物というのは、歴史を変えることに関して、もの凄く慎重です。そこには、タイムワープで歴史を変えてしまうと現代が変ってしまう、それは決して行ってはいけないことであるという思想があります。だから、「時をかける少女」みたいに、違う世界の者同士は、一緒に暮らしてはいけないという結論になっていく。

ところが、アシガールの世界観は全く違う。タイムワープで歴史を変えることもまた、歴史的事実として内包されているのです。

唯には、歴史を変えようなんて気持ちは更々なくって、今を全力で生きているだけです。彼女にとっての今は、平成とか永禄とか関係ない、目の前の「今」なわけです。そして、最初から、歴史は、それを受け入れて出来ている。ですから、そこには「歴史を勝手に変えても良いのか」などという批判は成立しません。

この宇宙が、誕生してから消滅するまでの百数十億年は、すでに完成されたモノとして存在し、僕らはそれを時間軸に沿って再生しているに過ぎない。

こういった運命既決定論は、ともすれば無力感を伴ってしまう可能性があります。ただ、僕らは、最終的にどうなるかなんて分からない中で、与えられた一瞬を生きています。これらは、DVDでドラマを見たり、スポーツ番組で録画放送を見ている状況に似ています。既に結果は決まっているのだけれど、ネタバレしてない限り、僕らはハラハラ・ドキドキしながら全力で応援できるわけです。

この独特の世界観が、従来のタイムトラベル物では有り得なかった「スーパー・ハッピーエンド」を支えているといえましょう。

タイムトラベルに関する考察です。長文ですが・・・。



さて、「黒島結菜」さんですが、年末に公開される周防正行監督の新作映画に、ヒロインとして出演するとのことで、大人の女優としての仕事も順調のようです。

そういえば、来年の大河ドラマは「明智光秀」ですよね。僕的には、明智光秀の娘「細川ガラシャ」を彼女に演じて欲しいです。最高のキャスティングだと思いますよ。で、夫となる、名門・細川家嫡男「細川忠興」は「伊藤健太郎」君にお願い致します。話題作りとして、これ以上のネタはありませんでしょ。

戦国時代のNo.1カップルと云われた「細川ガラシャ」と「細川忠興」ですけど、その夫婦関係は、だんだん微妙になっていって、ガラシャが信仰に傾倒していったのも、イマイチな夫婦関係が要因の1つとされています。ただ、物語は明智光秀の生涯までですし、あとは脚本の力でどうにでもなりますからね。きっと素敵な戦国カップルとして描いてくれるのでは無いかと、勝手に期待している次第です。

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