僕は、好き嫌いは無い方だと思います。ただ、酸っぱいものが苦手です。ですから、蜜柑を食べるときには、いつも皮がブカブカしているのを選びます。「味が濃い」とか、「コクがある」というのは要警戒です。いくら甘くても酸味が伴うのは困ります。だったら、何も味がしない方がマシです。僕にとって「大味」は「安心」の同義語です。
酸味が無く甘いだけの「ノーストレス蜜柑」、それが僕の理想の蜜柑像でした。
「ポンカン」を食べたときは、その酸味の無さに感動しました。
「デコポン」を食べたときは、見た目とのギャップに参りました。
「せとか」を見たときには、その値段の高さに仰天しました。
そして昨年、ついに究極のミカンに出会いました。敬意を込めて「はるみ」ちゃんと呼ばせていただきます。「ポンカン」よりも大ぶりで種子が無く、「デコポン」よりも皮が薄く繊細で、「シラヌヒ」のように当たり外れがなく、「せとか」の4分の1の値段で買える。それが「はるみ」ちゃんです。
「はるみ」ちゃんは、静岡市の果樹研究所で誕生しました。同じく静岡生まれの母親「清見オレンジ」とインド原産の父親「ポンカン」との交配だそうですから、「デコポン」とは姉妹、「せとか」とは、父親違いの姉妹になります。
姉の「デコポン」は、その容姿のあまりの醜さに、味覚検査をされることなくボツにされたものの、味の良さを惜しんだ生産者さんが、密かに育て続け、やがて、見た目と味とのギャップと「デコポン」というネーミングの巧みさで人気を高めていきました。
一方、妹の「はるみ」ちゃんは、姉とは違い、生まれながらの美しい容姿の持ち主でした。香りはオレンジに似ていますが、皮は薄く柔らかく剥きやすく、じょうのう膜は極めて薄く、種子もありません。酸味は全くなく、甘みは抜群。皮を剥いたら、中からみかんの缶詰が出てきたと云えば、お分かりいただけるかと思います。
見た目も味も最高の「はるみ」ちゃんですが、栽培が難しいという弱点をかかえていました。そういえば、芸能界にも、可愛くって、歌も上手いけど、扱いにくいという歌手がいましたね。
「はるみ」ちゃんは、生まれは静岡県ですが、生産の中心は、愛媛県や広島県で、生産量も少なく、流通も限られていたみたいです。静岡県で、広く栽培されるようになったのは、ごく最近のことだそうで、生産の中心は、発祥の地である、清水・興津のあたり、みかんの栽培が盛んな浜名湖の北部、それから、伊豆や、愛知県東部でも作っているみたいです。流通量が増えるに従って、スーパーマーケットでも普通に売られるようになりました。値段も大玉が1個100円くらい、小玉だと5個で300円くらいですから、「せとか」よりもずっと安いと思います。
昨年、近所のスーパーで見つけて、試しに食べてみたところ、一発で虜になってしまいました。それから、スーパーに行くたびに買い求めて、1ヶ月間、毎日1個ずつ食べ続けました。昨年度の静岡県の「はるみ」ちゃんの消費量の何%かは僕です。
で、今年も、食べ続けました。何個食べたか想像もできません。今はもう、旬も過ぎつつあり、売っている店も限られてきました。大きさも小玉なものばかりですが、まだまだ味はしっかり「はるみ」ちゃんです。しかし、あと1週間ほどで、今シーズンも終わりと思うと、さみしい限りです。
最近、「はるみ」ちゃんの他に、「はるか」「せとか」「せとみ」などという品種も並んでいますので、是非とも「デコポン」みたいに、「はるみ」ちゃんの魅力が伝わるインパクトある素敵な名前を付けて、「登録商標」していただきたいと思います。
来年は、生産量もさらに増えて、スーパーの果物売り場に君臨してくれることでしょう。
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