なかなか素敵なテイクでしょ。だいぶ強くエコーがかかっていますけど、口パクではありませんよね。自ら作詞作曲して、このくらい歌えて、ルックスもこのくらいですから、僕がファンになったのもお分かりいただけるかと思います。
ラストの「せえのお。まりぢゃああああん。」のかけ声は、昭和の証です。スタジオに親衛隊を入れていたのか、声だけを被せたのか分かりませんけど、まあ、当時の彼女がこういう扱いだったということが分かります。
でも、飯島真理さんは、ちゃんとしたアーティストですから、楽曲発表は、アルバムが基本になっていました。彼女がマクロスに出演した直後にリリースしたのが、坂本龍一プロデュースによる1stアルバム「Rosé」です。
いいですか、ここ大事ですよ。マクロスで人気が出たからアルバムを出したんじゃなくって、マクロスに出ている時には、既にオリジナルアルバムの制作を開始していたと云うことです。
ファンから最初にして最高と讃えられているこのアルバムは、19才のシンガーソングライター、飯島真理の魅力が遺憾なく発揮された名盤と云われています。
では、アルバム「Rosé」の中から「まりン」、貼りつけさせていただきます。ライブテイクのようです。
これっ、これ聴いてましたよ。まさにアイドル系シンガーソングライターですよね。動画を見ていたら、泣きそうになりました。この頃だと「今井美樹」なんかも聴いてたはずですけど、やっぱり僕は、飯島真理でした。
ちなみに「まりン」と云うのは、ピエロの人形のことだそうです。決して飯島真理さんが連続逆上がりをしているわけではありません。
当時、飯島真理さんは、国立音大のピアノ科に在学中でした。ピアノ科ですよ。音大では、ピアノ科はヒエラルキー最上位ですからね。彼女の作品に、転調するものが多いのも、幼いときから音楽の英才教育を受けてきたことと関係があるように思います。この「私、音楽知ってるんで」って云わんばかりの生意気な態度も、僕にとっては、魅力の1つでした。
続いても、1stアルバムから「きっと言える」を貼りつけさせていただきます。この楽曲は、アルバム発売の直後にシングル盤として発売されています。アイドル歌手のように、シングル盤を出してからアルバムにまとめるのでなく、ちゃんとアーテイストっぽく、アルバムが先行してからシングルカットされています。
ただ、これらがリリースされる半年ほど前に、NHKアニメ「スプーンおばさん」の主題歌「夢色のスプーン」が発売されていて、一般的には、こちらがデビュー作とされています。
このことについて、本人は、ご不満のようで、「そんな曲知らない」ぐらいな態度をとっていたそうです。「夢色のスプーン」は、作詞:松本隆、作曲:筒美京平となっていて、自作曲ではありません。
実は、「愛・おぼえていますか」も作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦で、自作曲では無いんですよね。つまり、彼女のデビュー曲と最大ヒット曲が、共に自作曲で無く、共にアニメの主題歌だったということになります。このことは、アーティストとしての自覚と高いプライドを持つ彼女にとっては、認めたくないことだったようです。
「愛・おぼえていますか」は名曲とされていますが、多分にマクロスの威光の結果もあり、このレベルの楽曲ならば、彼女が自作することも可能だったと思います。もし「愛・おぼえていますか」が、彼女の自作曲であったなら、ライブで、ワザと歌わないなどと云う態度をとることもなかったでしょうし、その後の展開も大きく変わっていったように思います。
ただ、「夢色のスプーン」が、松本隆&筒美京平という、当時のアイドル曲制作の最強コンビによるものであることや、歌手デビューの直前に、リン・ミンメイ役のオーディションを受けさせていることを考えると、所属していたビクターが、彼女のアイドル的な部分を強調して売ろうとしていたのは明らかです。オーディションにあたって、「度胸試しに受けてみないか」なんていう誘い言葉は、いかにも若い女の子を騙くらかしているみたいに聞こえます。マクロスの楽曲は、ビクターからリリースされることが既に決まっていたと云いますから、オーディションそものもが出来レースだった可能性だってあります。
ザ・ベストテンに出演したときの映像がありました。「愛・おぼえていますか」は、彼女の最大ヒットですが、このことが彼女の後の音楽活動の足枷になったとされています。でも、足枷かどうかなんて、本人の考え次第だと思うのですが。
アニメの主題歌が社会的なヒット曲になるというのは、今は珍しいことではありませんが、当時は、アニメの主題歌と云うのは、どんなにヒットしても、しょせん子ども相手の楽曲として、一段低く見られていたように思います。そんなアニメの主題歌を、映画から独立しても成立できるほどに地位を向上させたのが、飯島真理でした。
声優にしても同じです。今でこそ、声優は、憧れの職業の1つになっていますけど、当時は、女優、歌手などと比べると、一段低く見られていたと思います。声優を憧れの職業に引き上げた最大の功労者も、やはり、飯島真理だったと思います。
でも、そんなことは、彼女にとって、何の魅力も価値もないことだったようです。
彼女は、その後、レコード会社を移籍して、数多くのアルバムを発表しました。マクロスの封印に成功した彼女は、彼女が望んでいた形での、つまり普通のシンガーソングライターとしての活動を続けていきます。
でも、それは、僕にとっては、彼女が唯一無二の存在から、大勢の中の一人になってしまったと云うことでもありました。
別に、アニソン歌手になってくれとか、声優をやってくれなんて思っていたわけでは無いんです。歳を重ねるにつれて、彼女の音楽性が変わっていくのは仕方のないことだし、それによって、ファンが付いたり離れたりするのも当然のことだと思います。
ただ、彼女が確かに輝いていたあの時代を、彼女が黒歴史扱いしてしまったことが悲しかったんです。
お終いは、もう1回この曲で、
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