「サンダーバード55/GoGo」(Thunderbirds 55/GoGo)は、2022年公開予定の映画で、2015年にクラウドファンディングによって製作された「サンダーバード1965」(Thunderbirds 1965)を劇場公開用に再編集したものだそうだ。
今回の「サンダーバード55」が期待されているのは、当時の手法(スーパーマリオネーション)を使って忠実に制作されたとされているからだ。しかも、脚本は、ラジオドラマとして制作され、映像化されなかったものとあった。ハリウッドに改作された、2004年の実写版にガッカリさせられた僕らの期待は、高まるばかりだ。
クラウドファンディングによって制作されたのは、30分ドラマが3話。集まった資金は日本円にすると3,300万円ほどで、制作されたドラマは出資者にDVDとして配られたらしい。それを劇場版映画に再編集したのが「サンダーバード55」だそうだ。「55」というのは、公開から55周年という意味だろうが、元になったドラマは50周年の時に制作されているものである。(どうでもいいことですね)
こんな興行が企画されるのは、日本くらいなものだろう。逆に云えば、日本において、サンダーバードの人気は根強いモノがあるってことだ。サンダーバードは、1966年のNHK放送から始まって、2004年まで7回に渡って再放送を繰り返してきたそうだから、幅広い年代に刷り込まれている、憧れの存在なのだ。秘密基地・・・何てワクワクする言葉だろう。
さて、サンダーバードについては、映画の公式サイトにある「サンダーバード入門」を参照されたい。サンダーバード愛に溢れた、良くまとめられている解説である。
YouTubeで見つけた発進シーン集である。新作の映像のように見える。映画公開がますます楽しみになってきた。僕は、2004年の実写版を見るまで、1号は長男、2号は次男と単純な順番になっているのだと思っていた。
何度見ても牧歌的な雰囲気である。地元の消防団だってもっと早く出動できるだろう。ただ、1号のスクランブル発進までの所要時間は2分だそうで、意外と早い。のんびり感じるのは、マリオネットの緩慢な動きのためと云うことか。
ウィキペディアからの引用である。これもまた、サンダーバード愛に溢れた、良くまとめられている解説である。
「人形劇でありながら、その模型のリアルさ、質感の充実、子供でも理解できる単純なストーリー、「人命救助」というスリリングかつ前向きで健全なイメージ、これら全てが明確な世界観を提示して大好評を博した。ロケット噴射の描写などの特撮技術も優れており、その後の特撮作品への多大な影響を及ぼした。登場するメカもデザイン的に極めて斬新かつ洗練されていた。音楽もオーケストラサウンドを基本に、質が高く映像にマッチしたものだった。」
では、サンダーバードに影響された日本の特撮シーンを紹介させていただこう。まずは、1967年の「ウルトラセブン」。地球防衛軍の秘密基地からウルトラホーク1号が発進するシーンである。
「Fourth Gate Open(4番ゲート開け)」って云ってたんだ。スクランブル発進って、命令を受けてから何秒で出発できるかが勝負だと思うのだが、牧歌的雰囲気を確実に継承しているのが分かる。サンダーバードと比べると、ジェット噴射がちょっとショボいように思う。
続いて、1968年の「マイティジャック」。主演は二谷英明さん、音楽は「冨田勲」大先生である。水流をリアルに見せるために、採算を度外視した最新鋭の高速度カメラを導入したらしい。納得できる作品を作るためなら会社が傾いても構わない、という円谷プロの信念が伝わってくる。
以下は、2015年のブログ記事の再編集である。
サンダーバードが制作された1965年は、第二次世界大戦からまだ20年しかたってない頃である。制作者のジェリー・アンダーソンは、自身も従軍経験があり、戦争で兄を亡くしている。そしてロンドンは、ドイツ軍の最新兵器V2ロケットによって無差別爆撃をされたところだ。
サンダーバードは、原子力機関で動いているという設定だ。そして、TB1号のフォルムは、ナチス・ドイツ軍のロケット兵器V2を連想させる。サンダーバードの設定年は2065年。つまり当時からすると100年後の未来だ。そこに描かれているのは、原子力やロケットの平和利用であり、国際紛争の無い世界だ。
第2話「ジェットモグラ号の活躍」は、アメリカ陸軍の新型装甲車が実験中に遭難するというものだった。装甲車が大きな穴に落ちてしまうのだが、それは、昔、陸軍が不要になった兵器を処分して埋めていた穴だという。冷戦を背景に軍拡競争に邁進していた、当時のアメリカに対する皮肉ともいえるストーリーになっている。
つまり、「国際救助隊」は戦争のアンチテーゼなのだ。戦争とは、国家と国家が、科学技術を利用した兵器を使って人を殺し合うことである。でも「国際救助隊」は、イギリス独特な階級社会のテイストはあるものの、国籍関係なく科学技術を駆使した機材で人命を救助する。作品の底流には、科学技術は人を救うために使われるべき、という思想がある。科学技術の粋を結集しているが決して兵器ではない。そして誰も殺さないという理念がある。「国際救助隊」は、原爆やロケット兵器で街を焼かれ、世界平和など夢物語だと承知していながらも、本気でそれを願っていた1960年代という時代が生んだ物語だ。
やがて、その後の特撮作品、SF作品は、正義をかざして悪を撃つものばかりになる。スターウォーズに代表されるように、科学技術は、再び最新兵器となり、敵を殺戮するために使われるようになってしまった。
サンダーバードも、その危うさを予見していたはずだ。良いことをしている彼らが「秘密基地」を作り、極秘に活動しなければならない理由が、子どもの僕には理解できなかったけど、今ならば分かる。リアルな2065年が、設定以上の素敵な世界であることを祈るばかりである。
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