2021年6月16日水曜日

黒島結菜「ごめんね青春!」現地巡礼 その3 ~源兵衛川と、せせらぎ散歩道~

「源兵衛川」は、三島駅前にある「楽寿園」の湧水池「小浜池」を水源にして、市街地を流れる1.5kmの灌漑用水である。

三島は、富士山を起源とする、三島溶岩流の末端に位置する街である。富士山に降った大量の雪と雨は、地下水脈となり、三島の街の至る所で湧水となって地表に出てくる。湧き出てくる場所は様々で、ガサゴソと積み重なった溶岩の下であったり、昔々の地震でできた小さな崖であったり、或いは民家の石垣の隙間であったりする。

源兵衛川の水源である小浜池は、三島で最も大きい湧水池だ。かつては小松宮の別邸があったそうだが、今は「楽寿園」という市立公園になっている。僕が子どもの頃は、楽寿園の中には、そこそこ大きな遊園地や動物園があって、メリーゴーランドとか、お猿の列車とか、ジェットコースター以外のアトラクションは一通り揃っていたし、動物園には、ゾウやキリンやペンギンや、一日中動かないオオサンショウウオなんかがいて、近隣の学校が遠足に訪れるなど、賑やかなところであった。

しかし、それらは、あくまでも付け足しであって、楽寿園は小浜池であり、小浜池こそが楽寿園であった。その小浜池の水位は、昭和の中頃から徐々に低下し始める。原因は、周辺の宅地化や工業用水の汲み上げ。やがて、降水量の少ない時期には、地下水位がマイナスとなって自然湧水が止まり、池が干上がってしまう期間も年々長くなっていった。

小浜池の水位の低下により、源兵衛川も流れの無い日が多くなる。水源を失った源兵衛川は、市の北側にある東レ三島工場から供給される冷却排水によって、かろうじてその流れを維持していた。しかし、その供給量は灌漑用水としての必要最低限のものであり、水の流れの乏しい川は急速に汚染化が進み、源兵衛川は悪臭漂うドブ川へと変っていった。

そんな源兵衛川が再生できたのは、NPO法人「グラウンドワーク三島」の地道な活動と、東レ三島工場の協力によるものだそうだ。

東レは、市や市民団体からの要望を受け入れて、冷却水の源兵衛川への供給量を増やすことになった。東レで使用している工業用水は、やはり富士山からの湧水である柿田川の工業用水だ。東レでは、工場で使用する水を製品の洗浄に使うものと、機械の冷却に使うものとに分けていて、その冷却水の中でもあまり使用していない綺麗で冷たい水を、地下に埋設した導管から源兵衛川に供給しているのだそうだ。設備の維持費や電気代などは、東レが負担しているらしい。

そんな源兵衛川だが、ここ2年ほど、夏から秋にかけての集中豪雨や台風の影響などで、地下水位が上昇し自然湧水が大復活。川の水位が上昇して、遊歩道が水没してしまうという珍事が起きている。年寄りたちが、昔は川で泳いだものだと云ってたが、本当に泳げたのである。まあ、湧水の復活は嬉しいことだが、近年の異常気象が関係しているとすれば、複雑な気持ちになる。

昨年の夏の満水になった小浜池である。これまでも何年に一度かは満水になっていたが、池の縁まで水位が上がったのを見たのは初めて。ドラマで「海老沢」君と「あまりん」が歩いていた遊歩道も水没し、一ヶ月間通行止めになった。


三島市内の湧水量は、直近の降水量と大きく相関しているが、昨日降った雨が湧き出しているわけでは無い。富士山からの水脈は溶岩流の地下でつながっている。上流で降った雨が地下に浸透することで水脈に圧力がかかり、下流の地下水が押し出されて湧き出るのである。


ドラマが放送されていた頃、三島の街に巡礼者(多くはジャニヲタさん)がやってきた。彼女たちは、「いずっぱこ」に乗車し、源兵衛川を歩き、みしまコロッケを食べ歩きしていた。2014年当時は、他県から三島の街を訪れるなんて考えられないころだったから、世の中にはモノ好きな人たちがいるものだと思っていた。ところが、聖地巡礼が一段落した後、今度は、普通に観光客がやってくるようになった。いつの間にか三島市は「富士山とせせらぎの街」として、ガイドブックにも紹介されるようになっていたのだ。そりゃあ、熱海などの代表的な観光地には遠く及ばないが、休日には、カップルや家族連れが、源兵衛川を歩く姿が見られるようになった。

源兵衛川を流れる水が、東レ三島工場から供給されていることを、観光客に対する裏切り行為であるかのような意見を目にすることがある。確かに、川の水に足を入れて「冷たーい!」って云ったり、「透き通っていて綺麗!」とか云っている声を聞くと、なんとも微妙な気持ちにはなる。

ただ、これは内緒にしているわけではなくって、広く公開されていることだし、そもそも源兵衛川は、室町時代に「寺尾源兵衛」さんが開いた灌漑用水(人工の川)であり、市民の「普段使い」の川なわけだから、そこを流れている水が工場からの冷却排水であったところで、どういうものでも無い。元を正せば、富士山起源の湧水だし。

市街地のど真ん中を流れる川に、三島梅花藻が育ち、ホトケドジョウが住み、蛍が飛び交い、カワセミが訪れるのである。そして、それが、住みよい街を作ろうという、多くの人々の無償の努力によって、保全されていることに価値があるのだ。


#黒島結菜                #ごめんね青春            #源兵衛川


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