と云うわけで、今回は、天野家について妄想してみた。
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3.唯之助の出世物語
天野家は、黒羽城羽木家の重臣で、武勇で仕えた家柄である。唯之助が天野の屋敷に匿われる場面では、広い屋敷に多くの下女が働いている描写があり、コミックにも、天野勢200という記述があるので、羽木の家臣団の中でもズバ抜けた勢力を持っていたことが分かる。
軍事面でも、赤備えの鎧で統一された天野勢は、先鋒や本軍を勤める羽木軍の中核的存在であった。赤備えは、武田軍の「山縣昌景」隊、徳川軍の「井伊直政」隊、大坂の陣の「真田幸村」隊など最強精鋭部隊の象徴であり、天野の赤備えもそれにあやかっての設定であろう。
梅谷村の百姓足軽だった「唯之助」は、駆け比べでのアピールなどが実って、天野家に召し抱えられた。この時の身分は、天野家の下人である。その後、鹿之原の合戦での働きにより、御馬番足軽に取り立てられた。城内にお役目を頂いたのであるから、城への出入りも許されるわけで、(但し、若君のプライベートエリアは不可)第1話で城を訪ねて門番からつまみ出された時と比較すると、かなりの出世である。この時の身分は、正式な足軽、つまり下級武士であるが、唯之助が羽木家直属の家来(直参)になったのか、天野家の家来(陪臣)のままなのかは、よく分からない。
江戸時代になると、直参と陪臣というのは、同じ武士でも天地の差があったらしい。企業ドラマで云えば、本社本店の正社員と子会社の社員、刑事ドラマで云うと、本庁捜査一課の刑事と所轄警察署の刑事の関係である。
天野の家人のままであれば、天野の屋敷に住んでいて、そこから城に通うであろうし、直参であれば、城下の足軽長屋に住まいをあてがわれるはずである。ドラマでもコミックでもこのあたりの描写は省略されているので、判断のしようがないが、何となく、天野の家人のような気がする。戦国時代中期においては、その差はどの程度であったのだろう。
コミック第5巻、ドラマ第8話では、唯之助は、若君の命を助けた功により、御馬番から若君の警護役に取り立てられる。実は、この出世は、これまでとは比べものにならないほどの大抜擢である。
唯之助は屋敷に上がり、殿様に直接お目通りしている。家人であれば庭先までだから、どエライ出世なのが分かる。コミックによると、この時の装束は、天野小平太のお下がりを使って天野信茂(じい)があつらえてくれたものらしい。唯之助は、梅谷村の百姓出身であったので、天野家が彼(彼女)の後見人となっていたのであろう。コミックでは、この時、忠高から「林 勝馬」の名をもらっている。
ドラマ第8話には、阿湖姫が馬を借りにくる場面があったが、姫の申し出を断る時の御馬番足軽の立ち振る舞いを見れば、両者の間の身分の隔たりが分かる。唯之助が阿湖姫と友達になれたのも、若君警護役という身分があればこそなのである。
4.天野家の人々
物語で、天野家は三代揃って登場するが、三人ともキャラが立っていて傑作である。
先代当主は、イッセー尾形さん演ずる「天野信茂」(じい)。今は隠居の身であるが、先代の殿様の元では四天王の一人として活躍し、若君の守役(養育係)も務めた。ドラマでも、コミックでも個性的なキャラであるが、ドラマから入ったファンからすると、コミックのじいは口喧しいだけの印象があって、(唯之助が云うところの)喰えないクソじじい的なドラマの爺の方が魅力的に思う。まあ、これは、イッセーさん自身のキャラによるものであろう。
天野家の現当主「天野信近」を演ずるのは飯田基祐さんである。時代劇も現代劇も何でもこなすベテランの俳優さんで、飯田さんが出演しているドラマとか映画とか、たくさん見ているはずであるが、思い出せない。神木隆之介君と一緒に宝くじのCMに出ていたそうで、CMは見たことがあったが、上司の役だったのは云われるまで分からなかった。でも、映画もドラマもこういう役者さんの存在無くして作れないんだなぁと、実感した次第である。
天野信近は、堅物で根っからの武人という設定だが、ドラマの信近は、爺や唯之助に振り回されるなどコミカルな面も多い。筆頭家老でありながら、偉ぶったところの無い誠実な人柄は、飯田さん自身のキャラでもあろう。コミック12巻の番外編では、唯之助のお袋様「吉乃」との再婚にまつわるエピソードが紹介されている。
天野家の嫡男「天野小平太」を演じるのは、(はんにゃ)の金田哲さんである。はんにゃの金田なのに、ドラマではボケない。コメディーにお笑い芸人が出演しているのに、一切ボケない。この視聴者への裏切り度はハンパないであろう。剣道経験者だそうで、若君との剣術の稽古での剣さばきは、普通に格好いい。芸人さんっていうのは、ホントに何でも出来るんだなって思う。
金田哲さんは、今年公開の映画「燃えよ剣」に出演するそうだ。主役の土方歳三には岡田准一さん。近藤勇に鈴木亮平さんという豪華な顔ぶれであるが、金田さんは、八番隊隊長「藤堂平助」を演ずるらしい。ちなみに 、藤堂平助は、大河ドラマの「新撰組!」では、中村勘九郎さんが演じた人気の役である。
小平太は、若君と常に行動を共にしている近習で、7才の時から、3才年下の若君に仕えていたことになっている。恐らく、守役であった天野信茂が、若君の御学友というか、遊び相手として、自分の孫を連れてきたのであろう。乳母子の例と同様に、幼君と一緒に育った家臣の子は、互いが厚い信頼関係で結ばれて、幼君が成人した時には最も忠実な家臣となる。天野家は、羽木家の重臣の家柄であるが、小平太の存在により、若君の代になっても、筆頭家老の地位が保証されていることになる。
物語には、もう一人、「赤井源三郎」という近習が出てくる。こちらは重臣千原家の縁者で、設定年齢は小平太と同じだそうだが、立ち振る舞いから小平太より若干身分が低いように思える。小平太は、若君に苦言を呈することもあるが、源三郎は、ひたすら忠義を尽くす近習である。若君にとっては、最も使い勝手の良い家来といえよう。
5.正室への伏線
永禄にタイムスリップした唯を助け、引き取ってくれたのが、梅谷村の百姓「吉乃」である。第8話では、吉乃が足軽大将「きうちやすまさ(木内康正?)」の娘であったことが明かされる。当時の軍団は、総大将→侍大将→足軽大将→足軽小頭→足軽→雑兵と構成されている。足軽大将は100人ほどの足軽を束ねる実戦部隊の指揮官であり、海軍でいうと巡洋艦や駆逐艦の艦長クラスであろうか。中流武家の娘が、なぜ百姓として暮らしていたのかは明らかにされていない。
吉乃は、唯之助が若君拐かしの疑いで、お尋ね者になっていたときに、尋問のために引き立てられて来たことが縁で、天野信近に見初められた。吉乃が信近の後妻になったことで、形式的ではあるが、唯は天野家の養女になった。この意味は大きい。アシガールは、時代考証などで杜撰なところもあるのだが、こういう伏線の張り方は見事である。
戦国時代にも江戸時代にも、身分を越えた恋愛はあった。でも、正式に婚姻関係を結ぶには、やはり身分を整える必要があったわけで、その時に使われたのが、身分の高い家の養女になるという方法である。
真田家と徳川家が同盟を結んだときに、「真田信之」と本田忠勝の娘「小松姫」が結婚することになった。真田家の嫡男と徳川家の重臣の娘であるから、身分的には、まあまあ釣り合っていると思うのだが、家康は小松姫を自分の養女にしてから結婚させている。つまり、家康の娘と結婚したことにしたのだ。信之を見込んだ家康のラブコールである。形式的なことに過ぎないが、関ヶ原の戦いでは、信之は義理の父である家康方に付くわけで、やはり形式は大事なのだ。
面白いのは、唯は、若君と結婚するために天野家の養女になったのではない、というところである。重臣の娘であれば、若君との結婚に問題はない。が、吉乃が再婚したのは、唯が平成に戻っている間である。唯は自分の知らないうちに天野家の養女になっていた、つまり形式の方が勝手に整ったのである。
この婚姻は、天野家にとっても、喜ばしいことである。天野家の娘が羽木家の跡取りを産むことになれば、天野家は、領主の外戚となるからだ。ライバルの千原家が面白くないのは当然のことである。
しかし、正室となると話は別である。正室の座は他国のと同盟関係に使う重要なカードであるから、忠高が難色を示したのも当然のことであろう。
6.唯之助の弟たち
吉乃には、三人の男子がいたことになっている。「弥之助」は小垣の戦で死んでしまい、代わりに転がり込んできたのが唯之助である。
弥之助の弟たちが「三之助」と「孫四郎」である。数字が合わないのは、幼くして死んでしまった兄がいたということであろうか。後妻と連れ子たちである。
「三之助」は、聡明な男の子という設定である。14巻では、平成からやってきた「尊」から数学の手ほどきを受けたりもしている。天野家の三男として、成人したら、知力をもって緑合藩を支えることになるであろう。とすると、天野家の四男の「孫四郎」は、武力で仕える設定であろうか。・・・ん、数字が合ってる?
子役が大きくなるのは早い。続編を制作するとき、弟たちってどうするんだろう。
2 件のコメント:
記事を面白く読ませていただきました。
アシガールは単純なコメディと思って視聴するともったいないですね。
自分は小垣、黒羽と会話に出てきても、違いがわからずそのままにしていました。
SPを見て小垣城は出城なのか、とやっと理解しました。
コメントありがとうございます。
ネットには、物語の深読みや解説をしているブログがたくさんあって、アシラバさんたちの熱意は凄いなぁと思います。
テレビには、一瞬しか映らない書状も、それらしい内容でちゃんと書いてあることも、アシラバさんに教えていただきました。
SPの冒頭に小垣城のCG映像が出ていましたが、スルーしちゃってました。
CGも考えて作っているはずですから、ちゃんと見ないとダメですね。
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