2020年8月18日火曜日

紀平梨花 ~2つの連続ジャンプから2020年を妄想する~

東京オリンピックの開催が2021年の夏に延期された。2022年には、北京で冬季オリンピックが開催される。冬季オリンピックが開かれるのは二月、つまり、東京オリンピックと北京オリンピックは同じ年度内に開催されることになる。あと一年半後には、北京オリンピックが開催されるのだ。フィギュアスケートにとって今シーズンは、世界選手権の結果でオリンピックの出場枠が決まるという大切なシーズンなのである。
NHK杯とか、全日本選手権とかは、開催することにはなっているが、どうなるのか予想もつかない。羽生君がNHK杯でなく、スケートカナダに出場する可能性もある。フィギュアスケートの観客の99%は、羽生君のファンと云ってよい。大規模なアリーナで特設リンクを設営したって、羽生君が出場しなければ、ガラガラってことも考えられるのだ。
今シーズンの会場が、大阪のラクタブドームと長野のビックハットという半常設リンクに決まったのも、中止や、無観客や、羽生君が出場しないかも、というリスクを考えてのことだろう。

異例続きのシーズンオフだったせいか、今年は外野も騒がしかったように思う。ISUアワードを巡るゴタゴタとか、ジャンプのルール改正の白紙撤回騒動とか、ロシアの女の子たちの移籍もあった。
ザギトワ選手は、スポーツジャーナリストを目指して大学に進学するそうだし(でも、スケートをやめるとは云ってない)、サーシャ(トゥルソワ)とアリョーナ(コストルナヤ)は、プルシェンコ氏のチームに入った。(でも、一緒には練習したくないらしい)

先日、紀平梨花選手について失礼極まりない見出しの記事が投稿されていた。書かれている内容はよくある週刊誌ネタだけど、あのタイトルは酷い。梨花ちゃんはアスリートだけれど、18才になったばかりの女の子だ。
紀平ママと濱田コーチのネタは「だろうねぇ」とは思うけど「だから何?」って感じだし、所属チームの「N高」だって前例がないわけではない。暫定的って云うけど、そりゃ卒業すれば変わるだろう。「先が思いやられる」なんて大きなお世話ですら無い。

唯一の心配と云えば、オーサー氏に師事する話が消えてしまったことだ。まあ、(代わりに参加した?)ランビエール氏の夏季合宿での練習動画や、密になって楽しそうにオフしている写真がSNSにアップされているから良しなのだろう。それにしても、ステファン・ランビエールってホントに良い奴だと思う。


さて、練習動画が投稿されたので、さっそく貼り付けさせていただこう。練習で出来たからと云って、試合で使えるわけではないが、練習で出来なければ何も始まらない。

まずは、3連続ジャンプの動画である。


何と、3A + 1Eu + 3Sという基礎点12.8のジャンプである。梨花ちゃんは、ジュニア時代に 3A+3T+2T(基礎点13.5)というジャンプをノリで跳んでいるが、それに次ぐ高得点のジャンプである。得点が1.1倍になる演技後半に組み込めば凄い破壊力だ。
とは云っても、リスクも大きいから、通常の構成で組み込むことはないだろう。使うとすれば、「降りればメダル、コケれば圏外」みたいな、一か八かの大勝負の時だろうか。まあ、梨花ちゃんの場合、そういう時って大抵失敗するような・・・。
今までの3アクセルからの連続ジャンプは、 3A+3T (基礎点12.2)とか3A+2T(9.3)だった。でも、3A + 1Eu + 3Sは、多少着地が乱れても、真ん中のオイラーで立て直せるし、サルコウは梨花ちゃんが一番得意なジャンプだから、 3A+3Tよりも安定して跳べるように思う。だとすると実戦投入も有りかもしれない。

もう1つの動画は連続ジャンプ。


これは 3F+3Lo 。いわゆる、セカンド・ループってやつだ。フィギュアスケートのジャンプは、全て右足で着地するから、続けて跳ぶセカンド・ジャンプは、右足踏み切りのジャンプに限定される。つまり、トゥループかループの2択である。、左足のつま先で氷を突くトゥループの方が、右足1本でジャンプするループより簡単であるが、基礎点は低い。
梨花ちゃんは、ジュニア時代からずっとセカンドジャンプにトゥループを付けてきた。実は、何でも跳べる梨花ちゃんだが、どちらかと云うと、左足踏み切りの方が安定していて、ループは単独ジャンプでも失敗する確率が高かった。

セカンド・ループを避ける理由は他にもある。

3トゥループの基礎点は4.2、3ループの基礎点は4.9で、差は0.7点しかないが、セカンドで跳ぶ場合の難易度は全然違うそうだ。セカンドにループを付けるためには、最初のジャンプの着地が完璧でなくてはならないし、加速を付けられないためセカンドが回転不足になってしまうことも多い。だったら、セカンドジャンプはリスクの少ないトゥループにして、GOE(出来映え点)を稼いだ方が良い結果を得られる、と云うことになる。

かつて、この難易度の高いセカンド・ループを得意技にしていた選手がいる。ミキティや浅田真央ちゃんだ。特に真央ちゃんは、この動画と同じ「3フリップ+3ループ」をプログラムに入れていた時期があった。
でも、セカンドループの回転不足を厳しく取る傾向が強くなって(真央ちゃんファンは、それをキムヨナ選手に金メダルを取らせるための陰謀と考えている)セカンドループに挑戦する選手は、次第にいなっくなってしまった。

その雰囲気は、今も続いているのだが、それを打ち破ったのが、ロシアの女の子たちである。彼女たちは、リスクをモノともせず、セカンドループを組み入れて、貪欲に得点を積み上げていった。
まあ、これは、ロシア国内で代表権を勝ち取るためでもある。ロシア代表になるのはメダルを取るよりも難しい。フィギュアスケートのジャンプ構成は飽和状態にあるから、ロシアの子たちは、0コンマの得点に拘らなくては勝ち残れないのだ。

僅差の戦いになると0.7は大きい。特にショート・プログラムでセカンドループを組み込むことができれば、6種類のジャンプの内で、難しい方から順に4種類跳んだことになるからだ。(現行ルールの最大値は、①3A  ②3F  ③3Lz+3Loの構成である)

練習中の2つのコンビネーションジャンプは、リスクも大きく、実戦で組み込むかどうかは分からない。

梨花ちゃんの魅力は、そのリカバリー力にある。技の引き出しが多いということは、リカバリーのオプションが豊富だということだし、何が飛び出してくるか分からないエキサイティングな試合が期待できるということだ。
まあ、演技系の競技というのは、決められた構成を完璧に実施できることがベストであって、リカバリーが必要になるのは、本来好ましいことでは無いんだけど・・・。

2019年の梨花ちゃんは、チャレンジして失敗することを嫌がり、構成を落としてでも確実に勝ちを拾おうとしていた。グランプリ・ファイナルでは、4サルコウに挑戦して4位に終わった。普通だったら、チャレンジしたことを良しとするのに、彼女はチャレンジしたことを後悔していた。構成を落としていれば3位に入れたかもしれないと。面白い。本当の負けず嫌いというのは、こういうことなのだろう。

妄想ばかりでつまらない。早く2020年の梨花ちゃんを見たい。

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