2020年8月21日金曜日

黒島結菜&小関裕太 W主演映画「あしたになれば。」(ネタバレほぼ無し)

あなたが「黒島結菜」さんや「小関裕太」君のファンであったり、ファンでなくとも興味を持っているのであれば、僕はこの映画を強力に薦めよう。「GYAO!」なら9月13日まで無料で視聴できる。


ただ、映画館にチケットを買ってまで見に行くかと言われると考えてしまう。何かのイベントの無料上映会って感じだろうか。配信という便利なものがなければ、とっくに埋もれていた作品に思う。
封切りは2015年。全国ロードショーといっても上映館は10館ほどだったらしい。大阪南河内の2市1町の全面協力で制作された(時々見かける)ご当地映画ってやつだけど、映画の主題歌が「奥 華子」さんの書き下ろしだったりして、結構力が入っている。YouTube動画では、映画の予告編の再生数が10万回位なのに対して、主題歌の再生数は、100万回を超えていた。

両方を合わせてMVっぽくしたのがこれ。


物語の舞台は大阪南東部の羽曳野市、藤井寺市。この辺りは、10年ほど前に観音巡りで訪れたことがある。観音様の縁日は穏やかな日で、葛井寺、野中寺、道明寺とお参りをした。葛井寺には駐車場が無かったから、車を商店街の駐車場に入れたのを覚えている。映画に、アーケード街でヤンキーに絡まれるシーンがあるけど、同じ所を歩いていたようだ。道明寺粉はお土産で売っていたけど、葡萄やイチジク、蜜柑の産地だってことは、映画を観るまで知らなかった。

映画は、よくある「ひと夏の青春ストーリー」ってやつだ。ただし、愛と感動の物語ってほどでもない。ヒロインが不治の病に冒されているわけでもないし、タイムトラベルもしない。解決すべき殺人事件も発生しないし、超能力を使って悪と対決するわけでもない。っていうか、そもそも、この映画は悪人が一人も登場しない。地元のヤンキーとかも出てくるけど、笑えるレベルだ。みんな良い人ばかりである。さらに、クライマックスのシーンが、二人の握手という健全さは、文科省推薦モノである。

ところが、平凡すぎる日常を描いているはずなのに、出来すぎた展開に非リアルを感じてしまう。若い人たちからは、こんな青春なんて有り得ないというコメントが寄せられていた。ところが、中年世代からは、こんな青春を送りたかったという憧れのコメントが寄せられている。この熱量の差は何なんだ?


撮影は6年前の夏に行われたらしい。「小関裕太」君と「黒島結菜」さんのW主演で、あと「葉山奨之」君を入れた3人がメインキャスト。「清水美沙」さん「赤間麻里子」さん「赤井英和」さんたちベテラン俳優が脇を固めている。

赤井さんと赤間さんが主人公の両親で、典型的な河内のおっちゃんとおばちゃんを演じている。まあ、赤井英和さんは、存在そのものが河内のおっちゃんだから、ハマリ役なのは当然ではある。


奨之君は、三浦春馬君が出演して話題になったNHKドラマ「太陽の子」に出ていたが、この映画では主人公の親友で恋のライバル。docomoのCMでは、黒島さんの彼氏だったが、今回はちょっと残念な立ち位置。でも、お調子者の高校生を好演していて、10代の若者たちに云うのも変だけど、彼が一番高校生っぽかった。

裕太君と黒島さんは、日曜劇場「ごめんね青春!」の出演後で、(撮影は映画の方が先だったらしい)この作品が、二人の映画初主演だったようだ。二人は、今年、テレビ東京の「行列の女神」で共演したが、この時以来の久し振りだったらしい。
映画を撮影した2014年の夏というと、黒島さんが沖縄の高校を転校して、本格的に東京で芸能活動を始めた頃にあたる。

裕太君は東京出身で、大阪弁の台詞は音楽を聞く感覚で覚えたそうだ。ちょっとシャイな高校球児で、ポジションはピッチャーという設定。黒島さんとキャッチボールをするシーンがあって、黒島さん、キャッチボールがやたらに上手い。グラブさばきがサマになっているし、投球フォームも違和感なし。たぶんバドミントンのラケットを振る感覚とボールを投げる動きが似ているんだろう。

高校球児にとって、可愛い女の子とキャッチボールをするってのは、甲子園出場と同じくらいの憧れだろう。僕的には、ここが一番のお気に入りシーンだった。

あと、出演者の中で印象に残ったのは、「富山えり子」さん演じる「玉ちゃん」だ。転校してきて友達のいない黒島さんにを声をかける優しい子という設定。演じている富山さんは、ぽっちゃりキャラの個性派女優さんである。このタイプの女優さんは、一定の需要があるようで、たくさんの映画やドラマに出演していて、最近では「ハケンの品格」に出演していたらしい。


こういうキャラの子って、ヒロインの引き立て役とか、イジられ役にされちゃうことが多いけれど、映画の玉ちゃんはチームのリーダー格で、明るくって、可愛くって、頼りがいがあって、ホントに良い子である。このチームは、玉ちゃんが居なければ何も出来ない奴らだ。大きくなったら、浪速の肝っ玉母さんって感じだけれど、彼女は福島出身らしい。

で、黒島結菜さんである。役名は「美希」ちゃん。東京から来た女子高生という設定で、17才の彼女が17才の女の子を演じているのだが、華奢で地黒なので地元の中学生にしか見えない。
これが、浜辺美波ちゃんだったら、もっと東京の女子高生っぽいだろうけど、お嬢様すぎて大阪なんかに転校してきそうもないし、橋本環奈ちゃんは、ノーメイクで映画に出るイメージがそもそもない。

黒島さんを、クラスで一番可愛い女の子と評したコメントがあった。実際は、かなりの美人さんなんだろうけど、上手いこと言い表している。普通で可愛いというのが、10代だった彼女の最大の魅力に思う。にしても、中学生にしか見えない。


黒島さんは、今でも特別に演技が上手いとは思わないけれど、この映画を見ると、この6年間で上手くなったんだなって実感する。周りの子たちが、若手俳優とはいえ子役出身だから余計に感じてしまうのかもしれない。兎に角、芝居のテンションが低くて台詞が硬い。主人公の妹を演じている子役の子の方がよっぽど上手い。

でも、不思議と違和感は感じられなかった。と云うのも、内気な17才の女の子が、特別親しくも無い男子と話をする時って、こんなふうに、不器用でぎこちないものに思うからだ。そういう意味では、素晴らしくリアルな演技といえるが、多分、これは演技では無いだろう。こういう辿々しさ、初々しさってのは、子役上がりでない、この時の黒島さんでなければ表現できない。17才には17才の女優としての価値があるんだと思った次第である。何だか、デビュー当時の原田知世ちゃんを見ている気分になった。

で、演技は進化している黒島さんだけど、ちょっとした仕草とか、リアクションの取り方とかは、23才の今と全く同じだ。こういう素の部分ってのは幾つになっても変わらないんだなぁって思う。


映画のラストシーン。再び転校して行った美希ちゃんから、写真を同封した手紙が送られてくる。
・・・手紙?・・・いつの時代の話だ?

作品解説には、設定年代が書かれていなかったから、てっきりリアルな(2014年)物語だとばかり思っていた。
監督・脚本の「三原光尋」氏は、1964年の生まれとある。だとすると、氏が青春時代を過ごしたのは昭和の最後の10年間だ。この物語の時代設定は、三原氏が青春時代を過ごした1980年代ってことだろうか。南河内が昭和の雰囲気を残した街だというのは確かだけど、いくらなんでも、高校生が手紙を書いたりはしないだろう。だから、昭和の青春像を押しつけられた若者たちからは有り得ないとツッコまれ、ヒロインと巡り会えなかった中年世代は憧れるのだ。黒島結菜が原田知世と被って見えたのも納得出来る。

もし、あなたが小関裕太君や黒島結菜さんのことを知らなくとも、青春時代を過ごした80年代を懐かしく思うのならば、この映画を薦めよう。まあ、100分は長く感じるだろうから、摘まみ食いされたらよろしいかと。

お終いに、主題歌のフルバージョンをMVっぽくしたやつを貼り付けさせていただこう。黒島さんに奥華子さんの歌って、何故かよく似合う。


0 件のコメント: