2020年7月25日土曜日

「アシガール」に登場する家族とその魅力 ① ~主役の二人と速川家~

昔と比べると、コミックを実写化したドラマってホントに多くなったと思う。まあ、それだけ日本のコミックのレベルが高いってことなんだろうけど、画がそのまま使えるアニメ化と違い、人間が演じる実写化は、人物に違和感が出ちゃったり、世界観を表現しきれなかったりと、いろいろと難しいこともあるようだ。そんな中で、実写化の成功例とされているのが、NHKドラマ「アシガール」だ。

いきなりですけど、SPドラマのラストシーンです。


で、こちらがコミック12巻のラストシーン。アシラバさんによると、このコマはコミックの方がドラマに合わせて挿入したらしい。


というわけで、今回は、コミックとドラマを見比べながら、アシガールの登場人物とその家族について妄想してみた次第である。


1.まずは主役の二人から


アシガールがドラマ化されるにあたって、主役の「速川唯」については原作者さんからの指名(内田Pのオファーとも)で黒島結菜さんに決まっていたそうだが、若君はオーディションをしたらしい。
当時、コミックは7巻までが刊行されていて、すでに多くのファンが付いていた。ファンの若君に対する思い入れは熱く、伊藤健太郎君(当時の芸名は健太郎)に決まったときも、イメージに全然合ってないとか云われちゃったそうだ。今では、想像もできない話である。


アシガールのカップルは、どこまでも格好いい若君と、ちんちくりんな女子高生という、典型的な凸凹カップルだ。コミックの速川唯は、計算高いところもあって意外と性格も悪い。オマエみたいな男がホントにこんな彼女で良いのか、ってツッコミを入れたくなるようなカップルだ。まあ、ドジな女の子に王子様キャラの彼氏っていうのは、少女漫画によくある設定だ。多分、読者が感情移入しやすいんだろう。

若君は、少女漫画では盛り放題だが、生身の人間はそうはいかない。どんな好青年だって完璧なんて有り得ない。で、唯之助を演じる黒島結菜さんは、女優だからそれなりに可愛い。だから、コミックでは凸凹カップルだった二人が、ドラマでは程よく釣り合って、お似合いカップルになっちゃってる。


こんなドラマみたいなカップルを街中で見かけたら、ガン見しちゃうだろう。(ドラマでした。)

アシラバさんたちの中には、二人がリアルでもお付き合いしてくれれば良いのになんて思っていた人もいたようだ。特に、健太郎君の中年オバさんファンからは、結菜ちゃんならOKみたいな書き込みがあった。まるで、息子のお嫁さん選びである。

でも、共演をきっかけに交際ってことにはならなかったようだ。番宣などでの二人を見ているとなんとなくのよそよそしさを感じる。どちらかと云うと、伊藤君が遠慮気味な感じがする。二人は同じ1997年生まれだけど、黒島さんの方が学年が1こ上ってこともあるかもしれないし、収録が始まった頃は、役者としての実績は黒島さんの方がちょっと上だったってこともあるかもしれない。

黒島さんのインタビュー記事には、同世代の共演者よりも、スタッフさんとかベテランの俳優さんとかと話をすることが多いと書いてあった。もしかしたら、同世代の男からすると、取っ付き難い雰囲気を持っているのかもしれない。アシガールの現場でも、この二人って、ほとんど話などして無いんじゃないかって思う。

今年になって、二人には、それぞれ熱愛報道があった。伊藤君には活発な女の子の彼女ができたようだし、黒島さんは落ち着いた大人の彼氏とお付き合いをしているようだ。これをきっかけに、二人とも素敵な大人の役者へと成長していくんだろう。まあ、続編制作のことを考えると、リアルで付き合っていない方が、仕事がしやすいってこともあるわけで。


2.速川家の人々


コミックの速川家は、ごく普通のサラリーマン家庭という設定だ。母親は専業主婦で、弟の「尊」は有名進学校に通っている発明の天才だが、不登校ではない。

それと比べて、ドラマの速川家は、キャラが立ちまくっている。母親は内科と外科の開業医で、父親は家事が好きすぎて会社を辞めた専業主夫。弟はいじめられっ子の引き籠もりである。

母親が開業医というのは便利な設定である。若君が瀕死の重傷を負って平成に送り込まれた時も、救急車を呼ぶときにどうやって説明するかとか、入院したときの医療保険はどうするんだろうかとか悩まなくって済む。まあ、これはコミックだって同じ事なんだけど・・・。

コミックの速川家の両親は、常に受け身だし、常識的に悩んだりもするので、お隣に住んでいる向坂名誉教授の助けを必要とするのだが、ドラマの速川家は、とにかく明るくて前向きだ。引き籠もりの尊に対する態度もそうだけど、新型タイムマシンの起動スイッチの仕様書を提案するのも両親だし、戦国の皆さんに手土産を持たせようなんて発想も最高である。


僕は、最初にSPドラマを見たとき、若君は、このまま平成で暮らすのかと思った。若君は永禄では死んだことになっている(お墓もちゃんとある)し、唯の幸せを第一に考えたとき、若君が現代で生きるという選択をすることもアリだと思ったからだ。だから、この結末は、ちょっとした衝撃でもあった。

コミックの速川家は、常識的な家族であるから、唯たちが戦国時代で暮らすことを認めた場面では、無理をして納得しているっていうか、重苦しい雰囲気を感じてしまう。一方、ドラマにそれが無いのは、この家族だったら、若い二人の想いを認めちゃうんだろうなっていう大らかさがあるからだ。

コミックでは、御月家の家系図が発見され、そこには、戦国に戻った唯たちが、明治維新まで続いた緑合藩御月家の藩祖になっていたことが書かれていた。これで時空は完全にループし、唯は歴史を変えたのでは無く、唯の行動そのものが歴史だったことになった。

この場面を挿入することで、コミックの速川家と読者は安心することができた。だが、ドラマには家系図は出てこない。収録時にはコミックがそこまで進んでいなかったってこともあるのだろうけど、あったとしても、この家族には不必要だろう。


若君の、唯を伴って永禄に帰りたいというのは、彼のエゴだと思う。だけど、現代で暮らすのが幸せで、永禄で生きることが不幸だなんてのも、現代人のエゴでしかない。

誰も不幸にしない、ハッピーエンド・・・タイムトラベルもので、この結末ってアリなのだろうか。そんな懸念を抱かせない不思議な魅力が、この家族にはある。


実は、静岡県人は、唯の父親「速川覚」を演じている「古舘寛治」氏には特別の思いがある。静岡県限定の、パチンコ・コンコルドのCMにレギュラー出演しているからだ。コンコルドのCMは、炭焼きレストラン「さわやか」と並ぶ静岡県の名物で、インパクトのみのくだらないCMである。いや、インパクトすら無いと云っていいだろう。それでも「娯楽惑星コンコルド」とか「娯楽仮面コンケルド」とかやってた頃は、くだらない中にもストーリー性があって、ブラックなユーモアとか、人間にとって娯楽とは何かみたいな深遠なテーマがあった(と思う)のだが、2012年に古館氏が登場して「コンコルド人間、略してコンコルゲン」とかやりだしたら、本当にくだらないだけのCMになってしまった。       
だから「古舘寛治」氏は、静岡県では早くから有名だったけれど、しょうもない三流の喜劇役者だと思われていた。彼が大河ドラマ「直虎」に出演したときは、何かの間違いだろうってみんな思ったくらいだ。

もちろん、今では、彼が立派な俳優さんであることは、静岡県民だって知っているんだけど、コミックの速川唯の父親のイメージから、どういう思考回路を経れば古館氏のキャスティングになるのか、全く理解できない・・・・けど、それが最大のヒットなのかな。

と、思いの外、長くなってしまったので、今日はここまで。続きは近いうちに。

高山家の二人については、こちらの記事で。

0 件のコメント: