2020年2月11日火曜日

「紀平梨花」リカバリーで怒濤の3連続ジャンプ ~四大陸選手権2020女子フリー~

まずは「四大陸フィギュアスケート選手権」のおさらいから。

四大陸とは、ヨーロッパを除いた残り全部という意味です。アメリカは南北2つだとか、南極はどうしたとか、そもそもユーラシア大陸なんだから、アジアとヨーロッパは1つだ、と云う意見もありましょうが、大航海時代の世界観(オリンピックの五輪も同じ)に基づいているのでしかたありません。フィギュア界を二つに分けた場合、「ヨーロッパ選手権」と「その他の国々選手権」となるのは、フィギュアスケートはヨーロッパが本場なのだという、彼らのプライドが感じられる編成であります。

冬季オリンピックを除いた場合、最も大切な大会は世界選手権です。ヨーロッパ選手権や四大陸選手権は1ランク下という扱いですから、ベテランになると世界選手権に集中するために出場しないという選手も多いですし、オリンピック・イヤーだと補欠組の大会みたいになってしまいます。
ですから、今年のように、羽生結弦君が出るなんてのは異例中の異例、おかげでチケット販売は好調だったようですけど、女子の試合では空席も目立ってましたね。

でも、ちゃんとした国際大会ですから、世界ランキングを上げたい若手にとっては大切な試合です。実際、梨花ちゃんも今回の優勝で世界ランキングで1位になりましたし。


今年は、開催国が時差の無い「韓国」ということで、SPはライブ中継だったんですけど、何故かフリーは録画放送。フジテレビさんもゴールデンタイムにこだわらなくてもいいのにって思いました。ネットニュースばかりか、NHKのニュースとかでも結果をバンバン言っちゃうものですから、地上波放送ではドキドキ感ゼロでしたよ。

でも、感動モノの演技でした。


フリーの楽曲にもだいぶ慣らされてきました。

事前に公開されていたジャンプの構成は次の通りです。

    ①4S ②3A-2T ③3Lz ④3A ⑤3F-3T ⑥3Lz-2T-2Lo ⑦3Lo

ルッツの封印が解けたのが一番の収穫ですね。ただ、6番目の「3Lz-2T-2Lo」を見たときに、今日は、4回転は跳ばないんだなって思いました。もし、本気で跳ぼうとしているのなら、ここを「3Lz-1Eu-3S」にしてくるはずです。サルコウを冒頭の1回だけにしてきたのは、ここの4回転が3回転になっても構成を変えずに済むからです。ただ、最初から、3サルコウにしちゃうと、4回転、4回転と騒いでいるマスコミがまた騒ぎ出しますから、とりあえず4サルコウにしておいたのでしょう。

で、梨花ちゃんが、当日演技したかった構成が次だと思います。

      ①3S ②3A-2T ③3Lz ④3A ⑤3F-3T ⑥3F-2T-2Lo ⑦3Lo

ルッツを解禁したとは云え、2回跳ぶつもりは無かったように思います。ルールでは、6種類の3回転ジャップのうち2回跳べるのは2種類までですから、アクセルとフリップを2回ずつ跳ぶ予定だったのではないでしょうか。

ところが、2番目に跳ぶ予定だった3アクセル+2トゥループが1アクセルになってしまうミスが起きてしまいます。基礎点でいうと9.3が1.1になってしまいましたから、単純に計算すると8.2点の損失です。ショートプログラムでの貯金なんて完全に吹き飛んでしまいました。

3番目のルッツを予定どおりに跳んだ後、4番目の単独だった3アクセルに2トゥループを付けて、とりあえず1.3点のリカバリー。ここまでは、今までにもよくあったことです。
で、インタビューによると、この後のステップシークェンスを踏みながら、残りのリカバリーを考えていたそうです。

まあ、とりあえず3アクセルが1本入りましたから、無理にリカバリーせずに、残りのプログラムを予定どおりに演じるという選択肢もあったはずです。以前、宇野昌磨君がインタビューで、「無理にリカバリーすると、演技が崩れて墓穴を掘るから考えない」って話していて、ナルほどって思ったことがあります。

究極のリカバリーとしては、最後の3ループを3アクセルと入れ替える(3.41点アップ)ってのがありますけど、これは現実的ではありません。で、梨花ちゃんの選択は、3連続ジャンプを5番目に前倒しして「3F-3T-2T」にするということでした。このジャンプですね。


テレビを見る前から勝敗は知っていましたけど、演技内容のプロトコルは見ていなかったので、一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。(荒川静香さんは予測していたかのように冷静でしたけど)

ジュニアの大会では「3A-3T-2T」という冗談みたいな3連続ジャンプを跳んでいる動画がありますけど、シニアのガチな試合で「3F-3T-2T」なんて3連続ジャンプを見たのは初めてです。正式なプログラムにだって組み込むのが大変な連続ジャンプを、とっさのリカバリーで跳んでしまうなんて・・・。

これで、どのくらいリカバリーできたかですけど、「3F-2T-2Lo」が8.3点で、「3F-3T-2T」が10.8ですから、2.5点のアップとなりました。僕的には、普段から練習している「3F-1Eu-3S」ってのもアリじゃないのかなって思ったんですけど、基礎点を計算したら10.1でしたから、梨花ちゃんの判断が正しかったってことになります。

演技が終わって直ぐに、濱田コーチに「あれで合ってました?」みたいなことを訪ねていましたけど、完璧なリカバリーだったと思います。

実際に演技した構成は次の通りでした。

    ①3S ②1A ③3Lz ④3A-2T ⑤3F-3T-2T ⑥3F-3T ⑦3Lo

元々、上限いっぱいの構成ですから、どんなにリカバリーしても得点低下は免れませんけど、見応えのあるフリー演技だったと思います。失敗しているのに、3回転6種類の8トリプルですからね。これがあるから、彼女のファンは辞められません。


では、参考までに、捨て身の覚悟で演技してきたとき、つまり今の梨花ちゃんにとって現実的で実現可能な最高難度のジャンプ構成は次の通りです。

        ①4S ②3A-2T ③3Lz ④3A ⑤3Lz-3T ⑥3F-1Eu-3S ⑦3Lo

世界チャンピオンになれるプログラムです。ロシアの最強3人組に勝てる可能性を持っているのは、世界中で梨花ちゃんだけなんですよね。そりゃぁ、完璧に演技して優勝ってのが一番凄いことですけど、梨花ちゃんの魅力って、勝つこと以上に、ワクワクさせてくれるスケートをしてくれるところにあるんです。

次の試合は、2月の22日・23日にオランダで開催される「チャレンジカップ2020」だそうです。昨年も出ていた大会です。B級の国際大会ですから、無理をして出場することも無いと思うんですけど、調整を兼ねての営業というか、国際親善ってことでしょうか。怪我のないように頑張って欲しいです。

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