まずは、フリーで優勝したトゥクタミシェワ選手。挑発的なクリムキンイーグル、安定度を増してきた3アクセル、選手生命の短いロシアにあって、22才という年齢で、まだまだ進化を続けています。これで4番手なんですから、フィギュア超大国ロシア、恐るべしですね。
そういえば、グランプリファイナル表彰式後の記者会見で、梨花ちゃんとザギトワ選手が通訳を介してインタビューに答えていたのに対して、リーザは一人英語で受け答えをしていて貫禄ありまくり。借りてきた猫みたいに座っていた梨花ちゃんとは対照的だったのを思い出しました。
大人の底力というか、凄さを思い知らされた試合になりました。
今回は、アメリカとの得点差が開いていたので、最終滑走である梨花ちゃんが演技する段階で、すでに金メダルの可能性は消えてました。だから、梨花ちゃんが謝る必要なんてないんですけど、ネットニュースもスポーツ新聞も、梨花ちゃんの「ごめ~ん。」の写真一色でしたね。まあ、可愛いから載せたんでしょう。
でも、5位で留まったから良かったですよ。7位まで落ちていたら、ロシアに逆転されて銅メダルになるところでしたから、準優勝を死守できただけでも、これまた良しとしましょう。
シニアデビュー1年目にも関わらず、出ずっぱりでしたからね。出場した大会のほとんどは、地球の裏側での国際大会でしたし、アイスショーでの営業活動やマスコミ対応、それからコロラドで2回の合宿。新エキシビションプログラムの練習。精神的にも肉体的にもキツかったと思います。
冒頭の3アクセルで転倒するのは、もう見慣れた光景ですから、驚きもしなければ、がっかりもしないんですけど、中盤の3ルッツ+3トゥループでの転倒はショックでした。一つの演技で2回転倒するのは、今シーズン初めてではないでしょうか。フリーの得点138点は今季最低。シーズン最終戦が最高のSPと最低のFSという結果に終わりました。まあ、ジュニア時代から演技に波の或る子でしたから、梨花ちゃんらしいと云えばそうかもしれません。
1年前の今頃、梨花ちゃんは、シニアに上がるか、もう一年ジュニアに留まるかの選択を迫られてました。連盟としては、ポテンシャルは高いものの、あまりにも成績が安定しないので、もう一年様子を見たいというのが正直なところだったようです。結局「梨花ママ」の意向もあって、半ば強引に上がった梨花ちゃんでしたけど、国際大会の出場権も約束されていない状況での出発だったそうです。
ジュニア時代からプレッシャーに弱いと云われ、カメラのシャッター音に動揺したとか、リンクに立ったときに足が震えていたのが観客席から分かったとか、その類いの逸話には事欠かなかった彼女が、開催国枠の選考会を経て3番手の選手として出場したNHK杯で、GPシリーズ初出場での初優勝。そこからの国際大会6連勝という大活躍は、正にシンデレラ・ストーリーでした。
そして、日本のエースとして、高まる期待の中で出場した国別選手権。ショートプログラムでは、奇跡のノーミス演技で世界最高得点を更新します。
できることなれば、このプログラムをエキシビションやアイスショーでやって欲しいですね。彼女の可愛らしさを存分に引き出しているプログラムに思います。ジャンプの構成を若干落とせば可能だと思うんですけど。
演技そのもののデキは、グランプリ・ファイナルの方が上かなって思います。やはり、スピード感やジャンプの高さが少し落ちているような。けど、スピンをすべてレベル4に揃えられたのが良かったのでしょう。(GPFはレベル2が1つあり。)自身の持つ世界最高得点と、ザチトワ選手のもつ旧ルールでの世界最高得点をともに更新するという快挙を成し遂げます。
そして迎えた、翌々日のフリー演技。
ショート・プログラムで失敗することの多かった彼女は、最終滑走者として演技をしたことがあまりありませんでした。さらにフィギュアスケートでは珍しいチーム戦、エースとしての期待と、勝って当然という雰囲気。世界選手権での失敗を挽回したいという想い。その全てが、プレッシャーとしてのしかかっていたのだと思います。
結果は、2回の転倒と今季最低得点。フリーでの梨花ちゃんは、プレッシャーに押しつぶされていたジュニア時代の彼女そのものでした。シンデレラストーリーは終演し、魔法は解けてしまったのです。
フリーの演技は、見てるのも辛くなるような、或る意味、無様な姿だったんでけど、あの「ごめ~ん」のポーズを見たときに、応援する側であるはずの僕らが救われた気分になりました。彼女のスケーティングの最大の魅力って、悲壮感が無いことなんですよね。
今シーズン躍進の最大の要因は、ミスを引きずらなくなったこと。そして、これこそがシンデレラの魔法の正体だったんです。
まもなく始まる新シーズン。もう魔法ではなく、自らのメンタルで切り開かなくてはなりません。真価が問われるというのは、正にこのことでありますし、梨花ちゃんから紀平選手への第一歩だと思います。
でも、彼女の真価って、連戦連勝することにあるとは思えないんですよね。いつまでもSPでの3アクセルに拘ったり、止せば良いのに4サルコウを入れると云ってみたり、まあ、上を目指すのは、トップ・アスリートとして当然の覚悟ですけど、その覚悟に暗さを伴わないのも、これまた梨花ちゃんの良いところ。
きっと、来シーズンも、世界最高の演技の翌日に自己最低記録なんて試合が続くんでしょう。そんなバタバタ感満載、ツッコミどころ満載の演技で、たくさんワクワクさせて欲しいです。
そうそう、シーズンオフに(とは云っても、試合が無い時期というだけですが)何をしたいかってインタビュー。坂本選手は「近場で良いから一人旅がしたい」と答えたそうですけど、梨花ちゃんは「4回転の練習時間が増やせる」と言ったとか。誰か、映画にでも誘ってあげて!!!って、またコロラドに出発しちゃったかな。
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