「時をかける少女」は今から50年以上前に発表された「筒井康隆」氏のミドルティーン向けの正統派SF小説で、ライトノベルの元祖(?)だそうです。この50年の間に、何度も映画や演劇化、テレビドラマ化、さらにはアニメ化されていて、企画に行き詰まったら「時かけ」という感さえあります。
最も有名なのは、1983年の大林宣彦監督、原田知世さん主演の実写映画でしょうか。尾道を物語の舞台にした作品で、主役の「芳山和子」は、知世ちゃんの実年齢(当時15歳)よりも年上の高校二年生という設定になっています。
知世ちゃん・・・イイですねぇ。演技が素人でも、目がちっちゃくても、ぜーーんぜん構いません。今って、小さい頃からレッスンとか受けてるんで、新人でも完成されちゃってるじゃないですか。古き良き時代だったんだなって思います。
僕の「原田知世」さんへの想いは、2016年10月3日投稿の「原田知世:奇跡の40代の奇跡の歌声」で語らせていただいた通りです。
で、僕的には、1972年にNHKで放送された少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」が元祖になります。「タイムトラベラー」で主役の「芳山和子」を演じていたのが「島田淳子」さん。設定は中学三年生となっています。
深町役の男優さんが、どう見ても中学生には見えません。
当時は放送用のビデオテープが貴重だったため、番組を収録したテープが再利用されてしまい、映像がNHKにも現存せず、幻のテレビドラマと云われてましたが、和歌山県で最終回を録画したテープが発見されて、話題になりました。家庭用のビデオデッキが、当時の価格で三十数万円、60分録画用のテープが1本1万円もした時代で、電気屋の息子が売り物のデッキを使って、1本のテープで重ねながら録画していたため、最終回だけが残ったのだと云われています。
彼女に淡い想いを抱いていたのは、2015年7月13日投稿の「時をかける少女~初音ミク&原田知世そして島田淳子~」で告白させていただいた通りです。
そして、今回、取り上げさせていただくのが、2006年に制作されたアニメ映画版「時をかける少女」です。
このアニメ映画は、原作から20年後の世界となっていて、芳山和子の姪っ子で高校二年生の「紺野真琴」を主役として、東京の下町が物語の舞台になっています。
「細田守」監督の出世作であり、この作品を「時をかける少女」の原点とする若い世代の方々も多いようです。
僕は、アニメ版がテレビ放送された時に、せっかく録画していたのにもかかわらず、何を思ったのか消去してしまいました。聞くところによると、主人公の女の子はかなりアクティブに描かれているそうで、女子高生が放課後に男子とキャッチボールしてるなんてのは、理系ヲタクだった僕にとっては、想像もできないようなリア充です。
知世ちゃんは、こんなハシタナイまねはしません。
挿入歌「変らないもの」は、映画のヒットによって、主題歌「ガーネット」とともに世間に知られることとなりました。青春系バラードで歌唱力をアピールできる楽曲として、現在まで歌ウマ少女たちに好まれてカバーされています。
丸山純奈さんも、2017年3月に横浜O-SITEで歌っていて、YouTubeで視聴することができます。
この時のすーちゃんは13歳。中学一年生から二年生への春休みの時期ですね。この頃のテイクは、YouTubeにたくさんアップされていて嬉しい限りです。
ストレートでぶつけるような歌い方をしているのが特徴で、特に、横浜O-SITEで歌った「明日への手紙」と、この「変らないもの」は、すーちゃんのカバーテイクの中でも秀逸です。
元々は主題歌として作歌された「変わらないもの」が挿入歌になったのは、この歌がばっちりハマったシーンがあったからだと云われています。そして丸山純奈さんの歌は、この映画の世界観に見事にハマっています。(見てませんけど)
もし丸山純奈さんがタイム・リープして、細田守監督がこの歌唱に出会っていたならば、オファーを出していたかもしれませんね。
で、今回紹介させていただく、もう1つのテイクは、「闇音レンリ」さんによるカバーです。
その「闇音レンリ」さんのプロフィールですけど、年齢は17歳、身長158cm、体重45kgと紹介されています。まずは、聴いてみてください。
いかがでしたか、オリジナルの「奥華子」さんに、だいぶ寄っている歌唱ではないでしょうか。
お気づきのことと思いますが、「闇音レンリ」は人間ではありません。このテイクは、歌声合成ソフト「UTAU」によるコンピュータの歌唱になります。
「UTAU」は、「飴屋/菖蒲」氏が開発した、歌声合成のためのフリーソフトで、ヤマハのボーカロイドとは異なる理論によって構築されています。このソフトの最大の特徴は、音声ライブラリーを自作できることで、自分の声をライブラリーとして、コンピュータに歌唱させることができます。
もちろん、公開されたライブラリーを使うこともできて、個々に名前が付けられています。闇音レンリは「ゆずり」さんの音声提供によって作成されたライブラリとのことです。
闇音レンリは、息成分の多いウィスパーヴォイスで、癖の或る歌唱が特徴ですが、上手く調教された作品では、人間かと思えるほどの歌唱を披露してくれます。
参考までに、闇音レンリの使い手として有名な「Police Piccadilly」さんのオリジナル作品を貼り付けさせていただきます。折角ですから、踊ってみた動画にしましょうか。
歌もダンスも素晴らしいですね。アップテンポでノリの良いダンスミュージックというのは、コンピュータ歌唱の最も得意とする分野なんですけど、何も言われなければ、人間の女の子が歌っていると思うのではないでしょうか。
「ナーヴ・インパルス」は、ボカロのオリジナルにしておくには勿体ないほどの良曲ですから、人間の歌ってみた動画もたくさん投稿されています。但し、どれも、日本語を少し崩したようなスタイルの歌唱で、まあ、今っぽい歌い方なんでしょうけど、誰が歌っても同じに聞こえてしまいます。まるで、人間の方から、闇音レンリに寄っているみたいです。
人間が個性的であると思っている歌唱スタイルというのは、その癖を捉えられれば、コンピュータでもかなり近いところまで模倣できてしまう。演じた個性などは、機械にだって再現可能な程度のモノに過ぎないんです。
それに対して「すーちゃん」の歌唱は、ストレートなんですけど、力強さがあります。この「力強さ」というのは、コンピュータでは再現が難しい要素の1つです。音の強弱やテンポ、パラメーターの微調整などで簡単に対応できる代物ではないんですよね。
一見、個性的に歌っているかのようなテイクが、実はコンピュータによる作り物の歌唱であり、ストレートに歌っているだけに思えるテイクが、人間の女の子の歌唱だというところに、歌の面白さがあります。
当然のことながら、コンピュータは生きていません。しかし、歌は音波という純粋な物理現象ですから、機械の歌も人間の歌も根本的な差違はありません。人の歌もまた物理現象である限り、人工的な再現は可能なはずです。ただ、そのためには、人が歌うとは如何なるものかという問題を突き詰めていく必要があります。本質を解明できなければ、再現もまた不可能だからです。
力強さの源は生命力です。そして、生命は、無限ともいえる揺らぎを持っています。この揺らぎを解明して、歌に如何に生命力を宿すかが、コンピュータ歌唱の究極の目標と云えます。13歳の丸山純奈の歌唱を再現することは、理系のロマンでもあるわけです。
で、知世ちゃんの歌を聴いていて思ったんですけど、「時をかける少女」って、すーちゃんが歌っても似合うような気がしました。実年齢が近いというのは、最大の強みですし。次のリメイク版では、主題歌「丸山純奈」とか実現してくれると嬉しいです。いっそのこと主演しちゃっても良いかもです。「深町くん・・・これって・・」なんてねw
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