2016年5月26日木曜日

「地球へ・・・」竹宮惠子 ~古典となった、学長先生の代表作~

 2007年ですから、いつの間にか昔の話です。竹宮惠子先生の「地球へ・・・」がテレビアニメ化されるという話を聞きました。驚きました。だって「地球へ・・・」が連載されていたのは、1977年。今から、40年前。当時からしても30年前のことです。30年も前のコミックを今頃アニメ化するなんて、どういうことなんでしょうか。
 でも、期待度は高まります。懐かしくなって、本棚を探したのですが、見当たら無いんですよ。処分してしまったのか、改めて思い出してみても、買った記憶も定かではありませんから、友人から借りて読んでいただけだったのかもしれません。
 結局、本屋さんで買ってきました。ということで、手元にあるのは、アニメ化記念で発売された、新装版の全3巻になります。


 テレビアニメは、最初の数回程、見ていたように記憶していますが、途中で飽きてしまいました。不幸なことに、原作を知っている者としては、期待のアニメも、単なる答え合わせのような感覚でしか見ることができなくって。しかも、一回の放送で話が進むのは、微々たるもので、その続きが、また一週間後では、テンションを維持することができませんでした。

 連載が終了した1980年には、劇場版が発表されました。こちらも見たような記憶がありますが、あやふやなんですよね。映画館には行ってませんから、見たとすればテレビ放送された時ですが、もしかしたら、テレビアニメ版とごちゃ混ぜに記憶しているのかもしれません。

 劇場版の主題歌になります。歌っているのは、「ダ・カーポ」さんですね。懐かしい。やっぱり昔のことなんだなと思います。


 この楽曲は、当時の歌番組等でも、歌われていましたから、映画も、この主題歌も、そこそこヒットしたのではないでしょうか。

 原作者の竹宮惠子先生は、現在66歳。少女漫画家で「花の24年組」と呼ばれた世代になります。同世代には、「トーマの心臓」の萩尾望都さんの他に、以前このブログで紹介させていただいた「エロイカより愛をこめて」の青池保子さんや、「日出ずる処の天子」の山岸凉子さんがいます。
 竹宮先生は、2000年に京都精華大学マンガ学部の教授に就任されています。客員教授じゃありませんよ。専任です。漫画家が大学の専任教員となったのは、先生が最初のようです。さらに、2008年には同学部の学部長、2014年には、大学の学長に就任されました。利発で積極的、学生運動にも参加していたという行動力が、漫画家としてだけでは無く、社会的な出世をも可能にしたのでしょう。

 「地球へ・・・」は、月刊マンガ少年という少年誌に連載されていたこともあって、ファンには男性も多いのが最大の特徴です。女性ファンが「キース」や「ソルジャー・ブルー」などのキャラクターに関心を持っているのに対して、男性ファンは、ストーリー構成に魅了されているようで、この辺りは、青池さんの「エロイカ」とも共通しているところだと思います。

 コンピューターに完全に管理された社会、人類の存在が地球を衰退させていること、ワープ航法を使っての宇宙進出、超能力を持った新人類の出現など1つ1つのネタは、必ずしも斬新とは云えませんが、1970年代後半という当時の社会風潮を良く表していると思います。
 
 ただし、これは、少女漫画家全般に云えることなんですが、戦闘シーンの描き方は、どうしても物足りなさを感じます。描かれているページ数も多くはありません。ミサイルの飛ばし方1つとっても、イマイチです。戦闘艦のどこからミサイルが発射されているのか分かりません。少年漫画家だったら、新人類(ミュー)と現人類の宇宙戦争に多くのページを割くのでしょうが、冥王星基地を巡る攻防戦などは、一大決戦のはずなのに数ページで終了です。

 とは云っても、メカニックデザインは、まずまずですし、コマ割りや作画は、あくまでも少女漫画的ですが、それがかえって、SF漫画として何とも斬新な印象を与えていたように思います。
 さすがに心理描写は、丁寧に描かれています。この心理描写こそが、登場人物への思い入れを喚起し、多くのファンを惹きつけたのだと思います。

 ラストシーンで、キースは、「地球の存続」と「人間の尊厳」のどちらかを選ぶという究極の選択を迫られますが、彼に迷いはありませんでした。まあ、結果として、登場人物は、ほとんど死んでしまうし、地球は再生されないんですよね。宇宙に散らばっていった人類は、それぞれの星で異星人として進化していくわけですし。
 キーズが、コンピューター「テラ」を停止させるシーンを読んだ僕の想いは、「勿体ない」でしたよw

 ストーリーが難解だとか云われますが、大人になって読み返す限りにおいては、そのような印象は受けません。ただ、最後のエピローグの扱いは、どうかと思います。読み手がどう考えるか、ということより、自分が描きたいからという感じでしょうか、まあ、それくらいの自己顕示欲がなければ、学長先生まで上りつめることなどできないでしょうけど。

 余計なお世話かと思いますが念のため。
 「地球」と書いて「テラ」と読みます。ラテン語語源のイタリア語だそうです。

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