アイドルにとっての絶頂期というのは、ひたすら追いまくられるだけの日々に過ぎず、
仕事が面白くなったのは、人気が落ち着いた後からだったそうです。
つまり、「最近あまりテレビで見ないねえ」なんて云われ始めた頃が、
歌手として一番楽しい頃だったと云うのです。
松浦亜弥さんにとっての2006年というのは、正にそう云った時期だったのではないでしょうか。
この年に開催された2つのコンサートツアー。
ストリングスとピアノを取り入れた春のライブツアーと、
ギター、キーボードそして、ブラスを取り入れた秋のツアー。
いったい、松浦亜弥は何をやりたいのか、という気もしますが、
ファンを振り回しながら、やりたいことを思いつくままにやっていた、2006年という年は、
シンガー松浦亜弥にとって、案外、充実していた時期だったのかもしれません。
しかし、この年にリリースされたシングルは、「砂を噛むように・・・NAMIDA」の1枚だけ。
カップリング曲は、「ハピネス」となっています。
淋しい限りですが、致し方ありません。
どんなアーティストだって、晩年(?)になれば、何年かに一度しか、新曲は出しませんからね。
この曲で、完全につんく♂氏を離れ、バラードシンガーの道へ進むことになった、とされています。
松浦さんにしてみれば、これで煩いアイドルオタクたちと決別できる、と考えたのかもしれませんが、
実際、離れていくのは、ライトなファンばかりで、
残ったのは、コアで熱心なアイドルオタクのみ、と云う結果になってしまったようです。
鳴り物入りの新曲「砂を噛むように・・・NAMIDA」は、
初のベスト10落ちという、セールス的にも淋しい結果となります。
ただ、そんなことは、織り込み済みのことだったと思います。
こんな感じの曲を1年に1曲ずつでも出していけば、それなりの音楽活動は継続できたはずですし、
そういうことをしていれば、そのうちに、新たな・・・、
つまり、現在いるような、ネット動画をきっかけに松浦亜弥の虜になったような者たちが、
遅ればせながらファンになって、もっと直接に彼女を支えられたはずです。
夜の部で演奏された「ハピネス」です。
これぞ隠れた名曲、素晴らしいデキのベストテイクと絶賛させていただきます。
忘れては、いけないことがありました。
2006年の11月には、アルバム「Naked Songs」が発表されていましたね。
このアルバムの特徴は、生バンド演奏によるセルフカバー曲が中心になっていることです。
収録されているのは、洋楽カバーと初期のアイドル曲と少しばかりの新曲。
セルフカバーは6曲で、「オシャレ!」「I know」「初めて唇を重ねた夜」
「LOVE涙色」「ドッキドキ!LOVEメール」「トロピカ〜ル恋して〜る」となっています。
ほとんどが、ファーストアルバムからですね。
脱アイドルでは無かった、ってことでしょうか。
アルバム名は、「あるがままの歌」ってことですよね。
ファーストアルバムの楽曲群をアイドルソングでなく、
1つの楽曲として聴いて欲しいってことなのでしょうか。
ただ、その想いが、当時のファンに届いていたかは分かりません。
このアルバムに新曲として収録された楽曲が、
成海カズト氏:作詞作曲の「dearest.」と、中野雄太氏:作詞作曲の「ひとり」でした。
松浦亜弥さんの代表曲となっていく、この2曲が発表されたのも2006年だったんですね。
ただ、この2曲は、このライブではスルーされています。
まあ、いろんな場で歌ってきましたから、今回は見送ったのでしょう。
今思えば、この2曲を中心に完全オリジナルアルバムを発表するか、シングルにして勝負に出るか、
なんてできれば、違う展開になっていったように思えるのですが、何故そうしなかったんでしょう。
この時期ならば、実現できないほど、ファン離れが起きていたとも思えません。
いずれにしても、2006年は、松浦亜弥さんにとって、始まりの年であったことは確かなようです。
しかし、マニアックライブVol.4における
「砂を噛むように」や「ハピネス」を聴いて思うことは、その完成度の高さです。
僕は、このライブが開催された2012年こそ、これらの曲を歌うに相応しい時だったと思うんです。
松浦亜弥は、才能有るシンガーでしたから、20歳だとしても、これらの楽曲を歌いこなせました。
でも、それは正しかったのでしょうか。
松田聖子さんが、「あなたに逢いたくて~Missing You~」を発表したのは、30代半ばの時です。
この楽曲が聖子さん20歳の時にリリースされてたら、これほどまでの評価が得られたかどうか。
思えば「dearest.」だって、2013年に歌うべき楽曲だったように思えてなりません。
つまり、6年、早かったのではないかと。
6年というギャップは、松浦亜弥の才能を持ってしても、あまりにも大きかったのではないかと。
そして、僕らは遅すぎて、
彼女は、待ちきれなかったのではないかと。
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