村には演芸館があって、映画も上映してました。1軒だけの映画館ですから、子ども向けの怪獣映画を上映していたかと思うと、次の週には成人映画を上映するようなところでした。
村にゴジラの映画が来たときには、村中の子供たちが映画館に集まりました。
第1作目のゴジラが作られた頃は、僕は生まれてませんでしたけど、演芸館では「ゴジラの息子」とかを見たと思います。「大魔神」も来ていましたが、怖そうなので見にいきませんでした。田舎の映画館でしたから、古い怪獣映画も同時上映していたみたいで、さらにテレビで見たのとごちゃ混ぜになっていて、映画の制作時期と見た記憶が一致しない部分も多いんです。
で、僕が幼い日に、その演芸館で見た、とても印象深い映画がありました。たしか「小さな逃亡者」というタイトルだったと思います。「母を訪ねて三千里」みたいに少年が親を探して旅をする映画でした。言葉も分からない異国を放浪していました。それから、少年は、サーカスでバイオリンを弾いていました。拾われたさきで、自分がどんな旅をしてきたのかを砂浜に絵を描いて説明する場面が印象的でした。「言葉が分からないから、絵で教えているんだよ」って隣で母が説明してくれたのを覚えていますから、演芸館へは、母に連れていってもらったのだと思います。
時々、その映画のことが気になって、その度に調べてみたのですが、全く手掛かりがありませんでした。アメリカ映画に「小さな逃亡者」っていうのがあるのですが、どうも違う映画のようです。そんなこんなで、ずっと分からないままでした。
で、先日、「シン・ゴジラ」の記事を書くにあたって、昔の怪獣映画について調べていたんですけど、大映が1967年に制作した「ガメラ対ギャオス」の同時上映作品に「小さい逃亡者」というのがあったことを見つけたんです。
「小さな」でなくって「小さい」だったんですよ。「小さい逃亡者」。日本と旧ソビエト連邦との合作映画だそうです。あらすじを調べてみましたけど、間違いありません。
さすがYouTubeですね。ロシア語版ですけど、ほぼ全編の動画がアップされていました。砂に絵を描くシーンが、ちゃんと58分30秒にありましたよ。
当然のことですけど、コメント欄はロシア語だらけです。たぶん僕が演芸館で見たのは、吹き替え版だったのでしょうね。改めて、あらすじを読んでみると、ナルホドそういうストーリーだったのかと思ったりしてw
DVDにもなっていないようですが、今でも、たまーにBSやCSで放送されたり、有志の方たちが鑑賞会を開いたりしているようです。
しかし、「ガメラ対ギャオス」の同時上映作品であったとは驚きました。「ガメラ対ギャオス」は、もちろん知っていますが、不思議なことに、この時に一緒に見たという記憶がありません。「小さい逃亡者」は、単独で見たとばかり思っていたんです。
怪獣映画の大傑作といわれる「ガメラ対ギャオス」が吹き飛んでしまうくらい、「小さい逃亡者」の印象が強かったのでしょうか。
まあ、日本側の俳優陣も豪華ですし、旧ソビエト連邦で撮影された映像も評価が高くって、知る人ぞ知る名画であることは確かなようです。
1966年という冷戦真っ只中の時代に制作されたこと、登場するロシア人が皆さん親切で良い人ばかりであること、政治絡みの裏の事情などなど、今となっては、ツッコミどころも満載のようです。
確かにストーリーは、わざとらしいほどに、できすぎているんですが、かといって、単なる子ども向け、子どもだましの作品とも思えません。「こんなのあり得ねーだろー」なんていうツッコミを入れることなく、純粋に物語を楽しむことができた、昭和という時代ならではの作品なんでしょう。
もしかしたら、あの時、ギャオスは、見なかったのかも知れません。そんな気がしてきました。母は、僕に「小さい逃亡者」を見せるために、演芸館へ連れて行ったのではないかと・・・。
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