おじさんになって4回目の渋谷である。1回目は、冨田勲先生の追悼公演「ドクター・コッペリウス」。2回目はライブハウス「eggman」での「POLU」ファースト・ワンマンライブ。3回目はNHKホールでの「鼓童」と「初音ミク」のコラボコンサート。そして今回のSHIBUYA PARK MUSIC Silent Live だ。
人混みをかき分けて北に向かう。目指すは北谷公園。「eggman」のすぐ隣にある小さな公園だ。以前は駐輪場と喫煙者の溜まり場だったそうだが、二年前に渋谷区がきれいに整備したらしい。ネットで見つけた昔の写真・・・この感じ、思い出した。
こちらが、現在。
ブルーボトルコーヒーが開店し、フリーマーケットも集っていた。ブルーボトルの存在感が大きいので、公園と云うよりはカフェ前の共有スペースみたい・・・と思っていたら、渋谷区初のPark-PFIだそうで納得。付加価値のある立地でカフェは繁盛し、売上金の一部で公園は整備され、素敵なスペースでイベントが開催されるという、騒がしい渋谷のオアシスみたいなところ。
今回は「サイレント・ライブ」とのこと。これは、観客がヘッドフォンを着けて音楽を聴くライブで、会場は直接音のみの静かな環境。大きな音で周囲に迷惑をかけることも無く、限られたエリアで複数のライブイベントも可能と云う新しい試みだそうだ。ワイヤレスで飛ばして、FMラジオで受ける、というのは、奈良の巻向遺跡の見学会がそうだった。大きな音を出さなくても確実に伝えられるし、思い思いの場所で聞くこともできる。
で、主旨は、よく分かったんだけど、これを日本有数の喧噪の地「渋谷」で開催する意味って何だろう。会場が静かな分、大通りのシュプレヒコールが良く聞こえてくる。
会場に着いてラジオをつけたが、なかなか電波が見つからない。ステレオ受信にしていたのが悪かったみたいだ。ダイヤル式の安物だから、ちょっとズレただけで別の放送が入るのは致し方ないが、ガチに見られるのが恥ずかしいと、ヘッドフォンを持ってこなかったことを後悔。
通常のライブだって、僕らが聴いているのはスピーカーの音だ。それがイヤフォンに変わっただけなのに、歌っている本人が目の前にいるから違和感はある。道行く人たちが、完全に無視して通り過ぎていくのも不思議。素晴らしい歌声に思わず足を止めてってことも無い。聴きたい人だけが参加している、完全に内向きなイベント。無関心な他人を巻き込むことを迷惑と云うのなら、渋谷の街はとっくに終わっているはずだけど。
丸山純奈さん(すーちゃん)の出番がやってきた頃は、完全に日も暮れていた。すーちゃんは、SNSのフォロアーが10,000人を越えたようだが、ここに集まっているのは100人もいないだろう。FMラジオ持参が壁になっているとは云え、人を集めるというのは大変なことだと、つくづく思う。
小柄なことは分かっていたけれど、思わず「ちっちゃ。」と呟いてしまう。ぶかぶかの黒いジャンパーに帽子を深く被って、出で立ちは闇夜のカラス。椅子に腰掛け、セットリストも渋めな歌が多かったから、横須賀の時とは真反対の印象。あの時は昼のロックフェスティバル、今日は夜のサイレント・ライブと云うことで雰囲気を変えてきたのだろう。
スタート前の緊張感。ちょっと芸能人オーラが出ていて頼もしい。
暗くて分からなかったけど、毎回、帽子が違っていたんだ。
「はじめま~す。」から2曲歌って、簡単な挨拶。「聞こえてる~。」から「30分たった?」まで、ひたすら歌うだけ。自己紹介もなければ、近況報告も観客に話しかけることもない。拍手をするのさえ躊躇いがちになる静けさの中、不思議な時間が過ぎていく。夜の大通り裏の公園に、彼女は歌うためだけに来て、僕らは聴くためだけに集っている。・・・でも、曲名は云って欲しい。
「はま」さんの動画が、音質的にベストに思ったので、リンクを貼らせて頂きます。
セットリストは、
① 「僕が一番欲しかったもの・槇原敬之」
② 「Oz.・ Yama」
③ 「TOKYO・YUI」
④ 「紡ぐ・とた」
⑤ 「Gold~また逢う日まで~・宇多田ヒカル」
⑥ 「悪魔の子・ヒグチアイ」
とあった。曲目は入れ替わっているけど、歌舞伎町ライブと同じような印象。
今回は、全曲カバーで、2番目と最後の曲が初めて歌った曲だろうか。「TOKYO」と「紡ぐ」は、よく歌ってくれる曲だ。全体的に今回はチャレンジングな歌唱が多かったように思う。僕のとこまでは届かなかったけど、最前列では生声を直接聴くことができたらしい。これはサイレント・ライブの副産物。
大きなヘッドフォンに生音声。録音スタジオで聴いているみたい。
すーちゃんは、同じ曲の同じ音域でも、地声の時と裏声を使う時がある。考えて使い分けているなと思わせるときと、行き当たりばったりに思えるときがあって面白い。地声の比率が高いと調子が良いのかなって勝手に思っている。
いずれの声でも、すーちゃんの歌には「圧」がある。声量(声の大きさ)とは違う、声圧(声の重さ)みたいなものだ。圧の中に情があり、艶がある。よく「天使の歌声」と云われるけど、その形容に違和感を感じているファンも多いんじゃないか。少なくとも、僕には天使の声には聴こえない。
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