2017年11月18日土曜日

四つ溝柿 ~高級フルーツとカラスの餌の話~

「四つ溝柿」は、静岡県東部から神奈川県西部にかけて自生していた渋柿である。地域の固有種と云っても、柿の品種は、およそ1000種類もあるそうだから、特に自慢できる話では無い。


 四つ溝柿の名前の由来は、実の四方に溝のような窪みがあるところからきている。特徴は、細長くて小ぶりで種が無いこと、渋抜きをした後も実がしっかりしていて歯ごたえが良いことである。
 このあたりは、ちょっとした空き地や庭先に柿の木が植えてあって、ちょうど今の時期、一本の木に何百と実がなっている。特に今年は生り年のようで、鈴なりとはこういう状態のことを云うのだろう。
 僕の実家にも柿の木があって、世話など全然していないのに、毎年バケツ何杯分もの実を付けていた。甘柿だったら、ちゃんと世話をしなければ、美味しい柿には成らないだろうが、四つ溝柿は渋柿だから、渋抜きをすれば必ず甘くなるし、商品にしないのなら実を大きく育てる必要も無いから、これで十分である。

 渋抜きの方法は主に3つ。1つは、炭酸ガスを使う方法で、設備が必要だが一度に大量の渋抜きができるので、農家が出荷するときに使っている。もう1つは、密閉した容器に入れてお風呂の残り湯に漬けておく方法。そして、アルコールを使う方法である。お風呂の残り湯を使った方法は、温度管理が意外と難しいので、我が家ではアルコールを使って渋抜きをしていた。
 一般的には、焼酎を使うのだろうが、最近の焼酎は高アルコールの物が手に入り難いので、ウイスキーを使って抜いていた。一番安いトリスの一番小さい小瓶を買ってきて、ウイスキーをヘタのところにチョンって着けて、二重にしたビニール袋に入れて窓際に置いておくと、1週間ほどで食べ頃になる。食べ頃かどうかは、試食をして決めるのだが、ちゃんと抜けてるかどうか分からないので、ちょっとしたスリルである。
 一度、残り物のブランデーを使って、渋抜きをしたことがあって、この時は、袋を開けた途端、フワーッて良い香りが漂ってきて、高級感があった。

 渋抜きは、たいした手間では無いが、それでも、面倒だと思っている家などは、実がなっていても、ほったらかしにしていることも多くって、実が真っ赤に熟すと鳥がやってきていた。渋柿だから盗む奴もいなくって、まあ、カラスの餌を育てているようなものである。

 そんな柿の木であったが、家を改築するときに切ってしまった。

 山の手の方に行くと柿園があって、何軒かの農家が四つ溝柿を栽培している。農家の庭先には、無人スタンドがあって、小ぶりな物なら3個で100円とか、ちょっと良いやつならば4個で200円とかで売っていたから、よく買いに行った。ところが、金を払わずに持ってく奴とか、金を盗んでいく奴などが出てきた。やがて、四つ溝柿も少しずつ知られるようになり、県外の市場に出荷したり、農家がネットで販売するようになったこともあって、無人スタンドはどんどん無くなっていった。
 
 今では、スーパーマーケットの果物売り場で、地元特産品とか云って売られている。今日なんて4個で498円なんて値札がついていた。1個100円以上だ。普通の甘柿より高いではないか。もう買えない。
 で、そのスーパーの前には、空き地があって、隅の方に柿の木が植えてある。鈴なりに実がなっているが、誰も収穫する気配がないから、いずれカラスの餌になるであろう。まあ、柿の実はただ同然でも、収穫して、渋抜きして、市場に出して、仕入れて、パートのおばさんが店頭に並べる手間を考えれば、0円が100円になるのも致し方ないことなのかもしれない。

 首都圏にも出荷しているとのことだから、「紀ノ国屋」とか「成城石井」なんてところにも並べてもらっているのだろうか。「千疋屋」でパフェになって2000円とか云われたら、もう笑うしかない。
 でも、美味しいことは事実である。渋抜きをするとかなりの高糖度になって、それでいて、これだけ実がしっかりしている品種は珍しいみたいだし。
 
 身近すぎて見えない価値・・・まあ、よくある話であるが、なにぶんカラスが食べてるところを毎年見ていれば、これも致し方ないことかと。

 最後に一言。カラスが食べているのは、庭先の四つ溝柿であって、商品化されているのは、ちゃんとした果実園で栽培されているものですから、誤解の無いようw

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