2016年1月6日水曜日

「クイーン」 ~そして伝説へ、ライヴ・エイド編~

 ライヴ・エイドは「アフリカ難民救済」を目的として、1985年に行われた、20世紀最大のチャリティー・コンサートです。イギリスのウェンブリー・スタジアムとアメリカのJFKスタジアムをメイン会場に、エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、レッド・ツェッペリン、ローリング・ストーンズなど、挙げればキリが無いほどの有名ミュージシャンたちが多数参加し、全世界に中継されました。

 ただ、僕にとって1985年頃は、とても音楽を聴く余裕など無い時期でしたし、このチャリティー・イベントについて、僕は語れるほどの見識などありませんから、その実態や評価については、別のサイトを参照していただくこととして、ここでは、ロック史上最高峰のライブパフォーマンスといわれた、クイーンのステージについて想いを語らせていただきます。

 何はともあれ、ライブ動画を貼り付けさせていただきます。挨拶代わりに演奏した「Bohemian Rhapsody 」の前半部分と、それに続く2曲目「Radio Ga Ga」を続けてどうぞ。


 「Radio Ga Ga」での手拍子が凄いんですけど、このライブは、クイーンのライブではなくって、何十組ものアーティストが出演するチャリティーライブだってことを忘れてはいけませんね。7万5千人の観衆の中にクイーンのステージを目当てに来ていた人なんて、決して多くは無かったはずです。それがいきなりの大合唱と手拍子ですから。
 クイーンの最大の強みは、ライブで盛り上がれて、誰もが知っている曲を数多く持っているというところにあると思います。
 
 ライヴ・エイドは、多くのバンドが、入れ替わり立ち替わり出てくる顔見せライブ、紅白歌合戦みたいなもんですから、演奏そのものより、出てくることに意義があると考えていたアーティストも多かったのではないでしょうか。その中で、このクイーンの気合いの入れ方は、ある意味異常です。クイーンに与えられた時間は20分間、彼らは、そこにMCもほとんど挟まず6曲も詰め込んだんです。しかも、入念なリハーサルを重ねて。 
 クイーンがそこまで、このステージにかけていたのには、当時の彼らが直面していた深刻な事情があったからに他なりません。

 1985年当時のクイーンは、解散は時間の問題と云われていました。スーパースターの宿命とも云える、捏造されるゴシック、メディアからのバッシング、レコードの売り上げは落ち、フレディの私生活は乱れ、メンバーの人間関係も悪化していたようです。前年に、アパルトヘイトが批判されていた南アフリカで、白人向けのライブを開催したことが問題になり、本国イギリスだけでなく世界中から非難を受けていました。
 ロックファンの多くが、クイーンの時代は終わった、クイーンは既に過去のバンドだと考えていました。

 しかし、クイーンは、他のどのアーティストよりもこのステージにかけていました。フレディ・マーキュリーは次のように語っています。

 「僕たちはロックスターとしてまだ脚光を浴びたいと思っているし、これは絶好のチャンスだった。それは正直に言おう。確かにライヴエイドはいいことをしているわけだが、見方を変えれば全世界という観客を相手に中継されるわけだ。それも僕たちの狙いであることは忘れてはいけない。」

 クイーンが見せたパフォーマンスは、決して顔見世興行などで無い、本気の、そして、これこそクイーンというライブパフォーマンスでした。

 続いて、ブライアン・メイの楽曲「Hammer to Fall」。ボーカルといい、コーラスといい、ギターソロといい、とにかく格好いいです。ロックファンからは、亜流のゲテモノ扱いされていたクイーンですが、彼らが超一流のロックバンドであることを証明しているテイクだと思いますよ。


 フレディは、観衆に対しても、ただ格好つけて煽るだけでなく、自らおちゃらけたりして、サービス精神もありますから、皆がついてくるんだと思います。ブライアン・メイは、マーキュリーについて、「スタジアムの最も離れた後ろの人まで、彼と繋がっているようだ」と語っています。
 で、哲学者のようなギタリスト、ブライアン。叫ぶようなコーラスとパワフルなドラムのロジャー。そして、地味なジョン・ディーコンw。地味だから良いんですよ。だから、バンドとしてまとまって、より一層、フレディが引き立つ。

 午後6時とはいえ、夏のまだ明るい時間帯での野外ライブ。照明や火薬を使った演出などのない、シンプルなステージ。誤魔化しの効かない、まさにバンドの実力が試されるステージに、クイーンは全身全霊を傾けます。そして、ラストソング「We Are the Champions」。大合唱に揺れるウェンブリースタジアムの7万5千の観衆は、鳥肌モノです。


 クイーンは、このライブで見事復活を果たします。メディアは、手のひらを返したかのようにクイーンを絶賛。翌年には、再び大規模なライブを開催、CDも売れました。そしたらまた、メディアに「クイーンはライヴエイドを金儲けに利用した」なんて、叩かれるんですけど、以前にも書いたように、音楽なんて、偉そうなことを言ったって、聴いてもらってなんぼ、買ってもらってんなんぼ、そして何より、感動させてなんぼのモノなんですから。

 お終いに「Is This The World We Created...?(悲しい世界)」。ライヴ・エイドの終盤に、改めて2人で出てきて歌った曲です。まあ、アンコール曲ってことですよね。


 「食べ物を求めている、飢えた人々を見てごらん」で始まるこの訳詞を読んだとき、僕は、てっきりこのライヴのために書き下ろした曲だと思ってしまいました。
 この時、フレディは、39才。程なくして彼はエイズを発症、帰らぬ人となるのは、このステージから6年後のことです。


 クイーンの記事については、これで区切りと致します。
 ロジャー・テイラーさんゴメンナサイww

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